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2018/06/29 09:59 - No.226


第2回 松尾和也先生に聞く。「太陽に素直な設計とは?」


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教えて!松尾先生。「エコハウスの基本」
ともこ @住宅ライター

2018/06/29 09:59 - No.226

 
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ともこ@住宅ライターです。本連載は、パッシブハウスジャパン理事であり建築家の松尾和也さんに、エコハウスの基本的なことについて解説いただくシリーズです。

第2回は、「太陽に素直な設計とは?」をテーマにお聞きしました。


松尾和也(Kazuya Matsuo)さんプロフィール

有限会社松尾設計室 代表取締役(平成18年4月1日~)。1975年 兵庫県出身。1998年九州大学工学部建築学科卒業(熱環境工学専攻)。JIA(日本建築家協会)登録建築家。一級建築士。APECアーキテクト。2005年サスティナブルTOKYO世界大会で「サスティナブル住宅賞」受賞。「健康で快適な省エネ住宅を経済的に実現する」がモットー。設計活動の他、「日経アーキテクチュア」「日経ホームビルダー」「建築知識」「新建ハウジング」等の専門誌への執筆活動や「断熱」「省エネ」に関する講演も行なっており、受講した設計事務所、工務店等は延べ5000社を超える。2009年パッシブハウスジャパンを立ち上げ、理事としてドイツの最先端省エネ建築の考え方を、日本の気候条件に合わせる形で普及促進活動を行う。日本エコハウス大賞の審査員も務める。著書には「ホントは安いエコハウス」「あたらしい家づくりの教科書」がある。

松尾さんの講演活動についてもっと知りたい人は前回をご覧ください。



箕岡智子(以下智子)「松尾さん、第2話もよろしくお願いします。」


松尾和也さん(以下敬称略)「はい!よろしくお願いします。」



OB見学会を終えて…


智子「先日、この記事でご紹介いただいている家のOB見学会があったんですよね!!2014年完成なので、築3年ですね。見学に来られた方の感想はいかがでしたか? 」


松尾「見学会は11月26日で外は結構寒い日でした。見学会当日は暖房オフでしたが室温20℃をキープしており、皆さんまずはそこに驚かれていました。」


智子「それはビックリされますよ!暖房をつけていないのに、20℃ってスゴイです。これが設計の力なんですね。」


松尾「2階に上がった時に気がついたんですが、小学5年生の娘さんが小窓を一箇所開けられていたんです!これによる熱損失は結構絶大で、それがあっても20℃をキープしているということには、私が1番驚かされたくらいでした。」


智子「設計された松尾さん自身が驚くって、どゆことですか笑」


松尾「それでも、いつもより若干涼しいな?? とは感じていたので、その理由が分かって腹落ちした次第です。」


智子「それは暖かい家を設計されている松尾さんだから気がついたんだと思います、きっと!暖かい家が当たり前だから。寒いアパート住まいの私なら、気がつかなかっただろうなと思います。それに、もし窓が開いていなかったら、20℃よりもっと暖かかったということですよね。」


松尾「そうですね。あとは、庭とのつながり、生活の仕方まで含めて、来場者の皆さんは実際に住まれている生のお客様の感想を、しっかりと聞かれていました。」


智子「そういった生の声が1番参考になりますよね。良くも悪くも、誰も生活していないモデルハウスに行くよりリアルです。」



北風と太陽!? 


暖かくて、庭とのつながりが魅力的なM様邸の間取り図はこちらです。


■ 1Fの間取り図。1Fは家族や来客の共有スペース。リビング上部が吹き抜けとなっている。



2F3Fの間取り図。2Fは家族の個室と、造作本棚を設けた書斎スペースがある。3Fは収納として活用。



智子「お庭がとっても素敵だなと思っていたのですが、こんなに奥行きがあるのですね!何メートルくらいですか?」

松尾「道路から建物まで10メートルくらいかな。庭が好きな方なので、好きな庭師さんに依頼されていましたよ。」


■神戸市M様邸。家族構成は、ご夫婦とお子さま1人。敷地面積63坪、延床面積40坪。201410月完成。



智子「それだけ距離があれば、車や人の通りも気にならないですね。木がちょうどいい感じの目隠しにもなっていますし、リビングからもこんなにきれいなお庭が眺められていいですね。」


松尾「リビングからの景色も設計をする上で意識しているところですが、一番大切にしているのは太陽に素直な設計です。」


智子「太陽に素直な設計?」


松尾「本にも書いてますが、冬の日射はできるだけ取り入れて、夏の日射はできるだけさえぎる設計のことです。」


智子「ぞくに言う、パッシブデザインですね!? 自然エネルギーを取りれるという。」


松尾「そうですね。ただ、パッシブデザインを風通りのいい家と思っているプロもいますが、それが正しいとは言いきれないんです。」


智子「でも、通風って大切じゃないですか?」


松尾「もちろん、そうです。でも、夏にエアコンなしというのは、実際には軽井沢でもない限り無理なんです。仮に通風だけで我慢できたとしても、カビとダニにとっては最高の湿度をキープした生活をおくることになります。」


智子「うぅ、カビとダニ…想像しただけでイヤです。つまり、日射 >通風。まるでイソップ物語の北風と太陽のようです。太陽には敵いませんね。」


松尾「だから、日射を取り入れることと、さえぎることを重要視してくださいってことなんです。」


智子「わかりました!太陽には素直でいます。太陽に限らずですけど笑」



太陽に素直な設計の家にするには


■ 太陽に素直な設計のM様邸リビング。冬は日射角度が低いので、吹き抜けから陽光を取り入れ、暖かい空間を生み出している。夏は日射角度が高いので、ひさしで陽光をさえぎっている。



智子「松尾さんは、どのように太陽に素直な設計をしていくのですか?」


松尾「まず隣家や敷地の状況を読み解いていくと、設計者として、こういう設計にしたらいいというのが見えてきますよね。」


智子「はい。」


松尾「その上で、要望を取り入れるようにしています。」


智子「なるほど。ヒアリングはどのようにしていますか?」


松尾「たとえば、Mさんの時は、吹き抜けいりますか?いらないですか?どっちでもいいですか?とか、和室とリビングはつながっている方がいいですか?とか、ありきたりな質問をしましたよ。雑誌の切り抜きを持ってきてもらったり、好みのサイトの写真を見せてもらったりしました。」


智子「Mさんは吹き抜けを希望されましたが、たとえば、吹き抜けはどっちでもいい、という選択だったらどうしますか?」


松尾「南に隣家が寄っている場合だったら、日射を取り入れるために、積極的に取り入れましょうと説明します。南が十分空いていたら、その時は状況に応じて考えます。」


智子「ということは、吹き抜けがあったらいい、ってわけではないんですね。」


松尾「そうですね。僕がこれがいいですよと強制しているのは、あまりボコボコさせないこととか、南は窓を大きくして他の面は小さくしましょうといったことです。」


智子「太陽に素直な設計をする上で、そこは優先するべきところなんですね。」


松尾「はい。でもそれ以外のところは、お客様の要望に基づいていますよ。ハウスメーカーチックなデザインが好きな人には飽きが来ないように注意しながら近づける。純和風が好きならば純和風に。たまに斬新なデザインを好む方がいらっしゃいますが、その場合にも飽きが来にくいように、センスが悪くならないようにという範囲内で極力合わせるようにしています。」


智子「なるほど。明確な指標があるから、できる、できないの線引きもわかりやすい(斬新っていうのがすごい気になりますが)。」


松尾「ですね。お客様は拠り所がないと、プランを出してもらう度に、もっといいプランあるんちゃうか?って悩みまくるわけですよ!それで何回もプランを書き直してもらったり。でも、太陽に素直な設計を拠り所としておけば、悩まなくて済みますよね。」


智子「たしかに。もう悩まなくて済みます。すぐ家を建てるわけではないですが、なんだか楽になってきました笑」



まとめ

太陽に素直な設計を優先した上で、ああしたい、こうしたいという施主の要望を取り入れること。

これが、健やかな暮らしをする上で大切だということが分かりました。


次回も引き続き、M様邸を例に設計について解説いただきます。お見逃しなくー!!



松尾設計室WEBサイト:http://www.matsuosekkei.com 

松尾設計室の実例がいっぱいのインスタグラム:mao_matsuosekkei

 

※こちらの記事は「家づくり情報サイトieny」(https://ieny.jp)>寒い家は病気になる?建築家 松尾和也氏に聞く「健やかな暮らしができる家」第2話からの転載です。 


 
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ともこ @住宅ライター
フリーランス住宅ライター

フリーランス住宅ライター編集者。広島県出身。愛媛県在住。タウン誌営業→スノーボードインストラクター→住宅誌営業(現 株式会社KG情報/家づくり学校)→フリーに。住宅誌づくりを通じて住宅の面白さにハマる。現在は主に一般向けの住宅誌や住宅サイトで執筆中。省エネ建築診断士。twitter/ともこ@住宅ライター。有料note/工務店向け!これは真似できる「一条工務店の集客術」(https://note.mu/tomoko_house/n/n253526d8a40f)を発売中。

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