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2019/08/06 08:29 - No.526


第1回 「省エネ」は誰のため?


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省エネのキホン
堤 太郎

2019/08/06 08:29 - No.526

 
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■「住まい手ファースト」の重要性

「省エネ住宅」や「エコハウス」など、呼び方はさまざまですが、今の家づくりは省エネルギー性能の確保を抜きにして語れません。

それは住宅に求められる役割が、「地球温暖化を遅らせるためのCO2削減」、「輸入化石燃料の消費量削減」などの大きなものから、「電気料金をはじめ上昇が予想される光熱費への対策」、「増大する医療費を抑えるための予防・未病も可能にする健康性の獲得」などの身近なものまで、年々幅広く、かつ大きくなってきているからです。

省エネルギー性能を上げるための主な「要素」は
1.建物の高気密・高断熱化
2.高効率設備による消費エネルギー削減
3.パッシブ設計による暖冷房負荷削減
の3つが挙げられます。

それらを(どれかが欠けることなく)高めていくことが重要なのですが、よくあるのが省エネを実現するための「方法・手法」についてはいろいろ語られても、「なぜそれをするのか」という点は置き去りにされがちなことです。

ある性能が高くなれば、どういう効果が得られるのか?を知ることで、なぜ高めなければならないか、という理由が明確になります。
言い換えますと「どうするか?(HOW)」の前に「なぜするか?(WHY)」を押さえることが大事だということです。

そしてもう一つ大事なことは、省エネ化は「住まい手ファースト」の視点で進めるべきだと考えます。

たとえば一つの例として「換気システム」を選ぶのに、どういう点を考慮して選んでいますか?
熱交換タイプの温度交換率や、ダクト式ならダクト径など、気になりますね。
確かに、機器本体の性能も重要です。

でも、もし住まい手によるフィルター掃除が適正にされなければ、そのような初期性能はすぐに低下して、「電力の無駄遣い」で「能力不足」の役立たずな機器になってしまいます。
そうならない為の掃除をするのに毎回、「脚立に乗って・天井点検口を開けて・換気扇本体のフィルターを頭上で引っ張り出して」という作業が必要では、定期的にするのもおっくうになってしまいます。なにより転倒の可能性もあり、危険です。

そうではなく、お掃除のついでに普通に床に立ったままで、換気扇本体やフィルターBOXに容易に手が届くような製品を選ぶことで、住まい手の日常的なメンテナンスを促し、結果として継続的な性能発揮が可能となります。

もう一つの例として、「なぜ断熱するの?」という問いに対してワン・フレーズで答えなければならないとしたら、あなたはどのように答えますか?

人体に周りの環境がどう作用するか、を考えるのが「住まい手ファースト」の視点です。
この内容は次回にお伝えしたいと思いますが、ヒントとしての図を載せておきます。


■「自分ごと」として考える

私たち「作り手」側が住宅の性能を考えるとき、性能がもたらす効用を実際に体感しているか、も大きなポイントです。
自分自身で辛いな、という環境を、親や子供、身内や知り合い、そして施主様には勧めたくないと思いませんか?

ここで恥ずかしながら自宅で撮影した写真をご紹介します。
(大阪市内のマンション角部屋、無暖房のリビングからバルコニーに面した掃き出し窓を撮影。2019.2.18 7:08AM。外部温度計5,3℃、室内温湿度計18℃・49%。当日の気象庁データは最低気温1℃、最高気温12℃)

1枚目は内窓(樹脂枠Low-Eペアガラス)を閉めた状態で撮影。


そのままサーモカメラで撮影。ガラス面は13℃近くで表示されています。

次は、内窓を開けて、すぐに撮影したのがこちら。わずかな隙間から入り込んでいた水蒸気が外部サッシ(アルミ枠・単板ガラス)のガラス面でわずかに結露し、曇っていたのがわかります。サッシ枠付近の温度が出ていますが早くも10℃近くに下がりました。

そのまま数秒あけずに撮影したサーモ画像がこちら。

外側のガラス面が3℃近くで表示されています。結露する露点温度は7.1℃ですのでガラスが曇るのも当然ということです。

測定温度自体の精度はともかく、相対変化として、内窓を開けた瞬間に窓面が約10℃も低くなるのが分かります。
もし内窓が無ければ、室温も下がり無暖房ではいられなくなり、ガラス面の結露も増えて水滴が垂れ出すのが容易に想像できます。

内窓施工までは、寒く、結露だらけの状態が続き、とても人前で温熱を語る人間の家としては説得力がありませんでした(笑)。
窓部を断熱強化することで冬場の寒さ、夏場の暑さも和らぎ、結露処理のストレスから解放されたのです。この状態を知ると、もう元には戻れません。

あくまで一例ではありますが、このような温熱体感を自他共に広げていくことも、外皮性能向上の原動力になるのではないでしょうか。


以上、省エネ住宅の実現にはさまざまな項目が関係しますが、その中でも「なぜそれが必要なの?」とか「どういったことに注意すべきか?」などのポイントを、「省エネのキホン」と称してこれからお伝えしていきたいと思います。










 
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堤 太郎
一般社団法人 みんなの住宅研究所

一般社団法人 みんなの住宅研究所 代表理事/株式会社 M's構造設計所属。一級建築士、CASBEE戸建評価員、BISほか。1966年奈良県生まれ。1990年摂南大学工学部建築学科卒業。関西商圏のビルダーに27年勤務し、主に2x4工法(枠組壁工法)の戸建住宅設計に携わる。2013年にドイツのフライブルクをはじめとした各地の研究機関・企業等をツアー視察した後、ATC輸入住宅促進センター(大阪市)主催の省エネ住宅セミナーにて、企画のアドバイスやパネルディスカッションのコーディネーターとして複数参加。2018年にM’s構造設計に参加、「構造塾」講師や「省エネ塾」の主催、個別コンサルタント等を行っている。

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