南海トラフ地震や、首都直下型地震の発生が懸念されている昨今 。地震に対する世間の危機感は高まるばかりだ。
そんな中、工務店H社の設計W氏は「施主から家に大きな窓をつくりたいと言われているが、その場合、壁が減るため耐震性が弱くなる。今は耐震等級3が一般的だし、地震保険料も半額になるので耐震等級3は確保したい。どちらも叶えるには一体どうしたらいいだろう……」と悩んでいた。
高耐震と開放感の両立
工務店H社の設計W氏は、夫婦と子ども2人の家族が暮らす新築の設計をしていました。1 階は吹き抜けのあるLDKと水回り、2階に個室といった、ごく一般的な間取りです。

都市型コンパクト住宅(耐震等級3) 平面図
(耐震等級3を実現すると壁が増えて開放性が薄れ、大開口窓も難しい)
施主は明るく開放感のあるリビングを希望しており、南面に光を取り込む大きな窓を計画したいと考えていました。
しかし、大きな窓を作る場合、しっかり耐力壁を入れておかないと構造上のバランスが悪くなり、大地震の発生時には家が損傷する恐れがあります。
大地震の際、建築基準法を守っていれば命は助かります。しかし、崩れかけた家で暮らすことはできません。
大地震が発生しても住み続けることができる耐震等級3の家にするのは設計者として当然です。
日本で頻発する大地震の影響で、地震保険料の値上げが実施されている地域もあります。
仕方のないことですが、地震保険料が国民の家計を圧迫しています。
そんな中、改定された耐震等級による地震保険料の割引率では、耐震等級3の保険料が半額となりました。
例えば、東京、持ち家(ロ構造)、建物評価額3000万円、家財の目安金額500万円、
保険期間30年間(単年度契約)の場合、下記のような差額になります。
耐震等級1:1,995,000円
耐震等級3:1,107,900円
差額:▲887,100円
施主の安心と家計のために、何としてでも耐震等級3を取得しなければなりません……
さらに、高耐震で大開口を実現しようとすると、一般的な木造軸組工法ではない特殊工法が必要となり、コストや手間も増えてしまいます。
W氏は、完全に行き詰まっていました。
- 耐震性能を確保しつつ大開口を設けたい
- 地震保険料が半額になる耐震等級3を確保したい
- 設計コストや施工の手間を抑えたい