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2023/08/25 13:00 - No.1323


全館空調(番外編)~子供たちのために学校の断熱改修を応援してください


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全館空調で快適・省エネな暖冷房を
前 真之

2023/08/25 13:00 - No.1323

 
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暑さが年を追うごとに厳しくなる中、日本中の学校で子供たちが、エアコンをつけても涼しくならない無断熱の教室で苦しんでいます。

学校で子供たちが健康快適に過ごせるための断熱改修普及のため、文部科学大臣と全国都道府県知事を宛先に、署名運動を行っております。今年8月中の提出を予定しているため、ご賛同いただける方は至急署名にご協力いただけますと幸いです。


竹内昌義 東北芸術工科大学教授
前真之 東京大学准教授



▼YouTube解説動画(前真之が学校の現状と断熱改修の意義を解説)▼




日本の学校のほとんどの教室は無断熱で日射遮蔽もないため、太陽の熱が室内にそのまま侵入してしまいます。そのため天井や窓際の温度が非常な高温となり、エアコンをつけても涼しくなりません。窓を開けることもできず空気質も極端に悪化しています。(図1)。


図1 日本の教室は無断熱なのでエアコンをつけても暑すぎ! 窓開け換気ができず空気も汚れている!


図2は、さいたま市の小学校の教室で、最高気温38.2℃の日に撮影したサーモ画像です。無断熱の天井の温度は42℃に達しており、強烈な放射熱で入った瞬間に頭がクラクラするほどの暑さを感じます。


図2 無断熱教室の天井は超高温 放射熱で頭がクラクラ!


無断熱の教室では、設定温度17℃・風量最大でエアコンをフルパワー運転しても、涼しくなりません。無断熱の天井・窓からの熱侵入が大きすぎるために冷房が効かず、暑さを解消できないのです。窓を開けるとますます冷房が効かなくなるので、換気ができず空気も汚れます。またエアコンは大量の電気を消費しているので、電気代もかさんでしまいます


図3 無断熱の教室はエアコンをフルパワーで冷房しても涼しくならない!


文部科学省は、学校環境衛生基準において、「気温は28℃以下」「二酸化炭素濃度は1500ppm」が望ましいとしています。一方で、無断熱の教室で計測した結果は、その上限を大きく上回っており、学生の健康が脅かされているのは明らかです(図4)。


図4 無断熱で換気もできない教室は、温度や空気質が文科省基準を全く満たしていない!


こうした教室の温度と空気質を改善する方法は、住宅と全く同じです。「天井屋根の断熱」、内窓や付属物による「日射遮蔽」により、室内に侵入する熱を削減します。合わせて、空気質に応じて換気量を制御する「デマンド換気」により、空気質を確保しながら教室を涼しく保つことが可能です(図5)。エアコンの電気代も削減できCO2排出量も減らすことができるので、トータルで非常にお得な対策です。


図5 断熱改修は教室を涼しく空気もキレイにできるだけでなくエアコン電気代やCO2削減にも有効!


実際に断熱改修を行ったさいたま市の教室では、未改修の教室に比べて冷房の効きが大きく改善され、空気質も文科省基準のCO2濃度1500ppm以下に維持されていました。「天井・壁の断熱」「窓の日射遮蔽」「換気」の3点セットの効果は絶大です。


図6 天井・壁の断熱+窓の日射遮蔽+換気の3点セットの効果は絶大!


現在、全国で断熱改修に関する取り組みやワークショップが開かれています。多くは有志の人たちのボランティアに頼っており、活動の広がりに限界があります。国がこうした取り組みを積極的にサポートすることが、全ての教室の改善に不可欠ではないでしょうか。


図7 断熱改修の取り組みが全国に広がる 国も積極的なサポートを!


学校へのエアコンの設置は国の政策として短期間に急ピッチで進んだ経緯があります。エアコン設置に比べれば断熱改修はコストもかからないため、スピーディーに普及させることができるはずです。年々暑くなる夏、子供たちの健康快適を守り、自治体の電気代負担の低減にもつながる断熱改修が、全ての教室に広がることを期待します。

趣旨にご賛同いただける方は、ぜひ署名にご協力願います。


図8 教室へのエアコン設置は国主導で急速に進展 断熱改修もスピーディーに普及できるはず








▼当連載の他の回はこちら▼
全館空調で快適・省エネな暖冷房を


 
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前 真之
東京大学

東京大学大学院 工学系研究科建築学専攻 准教授。1975年生まれ。1998年東京大学工学部建築学科卒業。2004年建築研究所などを経て29歳で東京大学大学院工学系研究科客員助教授に就任。2008年から現職。空調・通風・給湯・自然光利用など幅広く研究テーマとし、真のエコハウスの姿を追い求めている。

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