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2023/01/24 08:00 - No.1276


第27回 設備について(1)


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省エネのキホン
堤 太郎

2023/01/24 08:00 - No.1276

 
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今回より「設備」をテーマとして「省エネのキホン」的考察を進めます。
2023年の初回は、今、直面するエネルギー事情から、まず目指すべき点をお伝えします。

■楽観視できないこれからの時代

2022年のロシアのウクライナ侵攻からまだ1年も経っていませんが(2023.1.12現在)、世界のエネルギー事情は激変しました。

それまでにも、地球温暖化による気候変動の影響までも含んだ複合的な要因でエネルギー供給は安定していませんでしたが、ダメ押しのような、いや更に悪い方向への決定打とも言えるまさかの戦争勃発という形で、世界的に石油・石炭・天然ガス(LNG)など化石燃料の高騰が加速しました。

https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2022/html/1-3-2.html
(経済産業省 資源エネルギー庁「エネルギー白書2022」の「世界的なエネルギー価格の高騰とロシアのウクライナ侵略」より)

では、私たちが暮らしている日本のエネルギー事情はどのようなものでしょうか。

2019年度の日本の一次エネルギー自給率は12.1%という、OECD諸国36カ国中の35位にあたる、極端に低い水準です。
そしてエネルギー調達の実態としては、海外から輸入される石油・石炭・天然ガス(LNG)など化石燃料に大きく依存しており、2019年度は84.8%を占めます。

https://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/energy2021/001/
(経済産業省 資源エネルギー庁「日本のエネルギー 2021年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」サイトより)

そして輸入燃料の高騰に伴い、実際に身の回りの光熱費も今までに無い値上がりをしているのは、一生活者である私たちも痛感していますよね?

個人的にも自宅の光熱費を毎月記録していますが、使用量は増えていないのに請求金額だけが増加しているのが目に見えて分かります(電気、ガス共にkWhあたりに割り戻すと見かけの単価が1.4倍前後になっています)。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220330/k10013559171000.html
(参考:NHK NEWS WEB 2022年3月30日記事より)

このような状況は収まるどころか、当面、いや、いつまで続くのかも分かりません。
たとえロシア侵攻からの戦争が収束したからと言って、エネルギー事情が以前のように戻るとは考えづらいからです。

その変動要因の中でもこれから加速して問題になってくると思われるのが、世界の人口増加です。

ご覧になった方も多いかと存じますが、2022年に世界の人口が従来の予測よりも早く80億人を超えたという報道がありました。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221115/k10013891361000.html
(NHK NEWS WEB 2022年11月15日記事より)

2080年代におよそ104億人のピークを迎えた後、減少に転じるとの予想がされていますが、それまでは2037年には90億人、2058年には100億人に達するという予想があり、現在の日本の総人口の1億2484万人(2022年12月1日現在の概算値)と比較しても、増加率はすさまじいものがあります。

人口が増えるということは、その分だけエネルギー消費量が増えるということです。加えて人口増加によるものだけでなく、今まで文化的な生活ができていなかった国々もどんどん先進的な生活を求めるのは当然ですから、地球温暖化の進行を抑えるためにCO2排出を規制しながらも化石燃料の需要が増えているという、車に例えるとアクセルとブレーキを同時に踏みながらノロノロ進んでいるのが、今の、そしてこれからの世界です。

その世界の中で、日本は少子化と超高齢化を伴う人口減少が著しいとはいえ、数量的なインパクトは圧倒的に諸外国が大きく、自国の人口が少なくなるからと言ってその分エネルギーが消費できるようになるなどと考えるのはナンセンスです。仮に既存量が確保できるとしても費用面で入手不可な可能性も十分あるわけです。

乱暴な言い方をすれば、これからの時代は「エネルギー」の取り合いになる、と考える方が妥当でしょう。
この点、同じく自給率の低い「食料」や「真水(まみず)」についても、より深刻な構図が迫っていますが
……ここでは割愛します。


■「省エネ・創エネ」は「第二のインフラ」

お話を住宅に戻します。

これからの時代、過去の日本で当たり前とされていた「我慢の節エネ」のように生活の質を落としてではなく、健康を損ねることなく安全な生活を続けながらも無駄なエネルギー消費量を少なくするためには、まさに本質的な「省エネ」に取り組む必要があるのは言うまでもありません。

住宅でのエネルギー対策の優先順位を示すのに、
「穴の開いたバケツに水を注ぐ」
という概念図がよく用いられますが(画像は筆者作成)、前半にお伝えしましたように、もはや今まで使ってきた蛇口を目いっぱい開くことも難しくなりそうな状況ですから、今まで以上に穴をしっかりと閉じる必要があります。


「穴をしっかりと閉じる=省エネを徹底する」ために、まず一般的な家庭で使用するエネルギーの内訳を把握してみましょう。

「エネルギー白書2022」の「国内動向」では、2020年度の世帯当たりの用途別エネルギー消費の割合は
・暖冷房:27.5%
・給湯:27.8%
・ちゅう房:10.7%
・動力・照明他:34.0%
となっており、

 
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堤 太郎
一般社団法人 みんなの住宅研究所

一般社団法人 みんなの住宅研究所 代表理事/株式会社 M's構造設計所属。一級建築士、CASBEE戸建評価員、BISほか。1966年奈良県生まれ。1990年摂南大学工学部建築学科卒業。関西商圏のビルダーに27年勤務し、主に2x4工法(枠組壁工法)の戸建住宅設計に携わる。2013年にドイツのフライブルクをはじめとした各地の研究機関・企業等をツアー視察した後、ATC輸入住宅促進センター(大阪市)主催の省エネ住宅セミナーにて、企画のアドバイスやパネルディスカッションのコーディネーターとして複数参加。2018年にM’s構造設計に参加、「構造塾」講師や「省エネ塾」の主催、個別コンサルタント等を行っている。

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