◆はじめに
当連載記事では、管理組合を対象とする「コンサルティング」や「顧問業務」などを生業にしている "マンション管理士としての経験とノウハウ" をもとに、昨今の業界の動向などをテーマに取り上げ、『マンション管理に携わる皆様に役立つ情報』を提供していきたいと思います。
近年、既存マンションにおいて、管理組合の役員の成り手不足や居住者の高齢化等を背景に、マンション管理会社が区分所有法上の「管理者」(理事長)として選任される「第三者管理方式」の事例が増えています。
一方、「第三者管理方式」は、その運営方法によっては、区分所有者の意思から離れた不適切な管理、管理業者に支払うコストの増加などの利益相反等が生じるおそれがあります。そのため、管理者の選任や業務の監督等を適正に行うことのできる体制の整備が必要です。
そのため、国交省は、「管理会社による第三者管理方式」に関する留意事項を示したガイドラインを整備すべく、昨年10月に「外部専門家等の活用のあり方に関するワーキンググループ」を設置し、検討を開始しました。
このガイドラインの内容が概ね確定したため、重要なポイントを中心にご紹介します。
◆「理事会方式」と「第三者管理方式」の違い
分譲マンションなどの区分所有建物において、区分所有者全員の代表者として、建物および敷地等の管理を行う権限を有する者を「管理者」と言います。
区分所有法上では、管理者に関する資格要件は特に定めがなく、区分所有者以外の外部からの選任も可能です。
しかしながら、国交省が公表している「マンション標準管理規約」では、管理組合自治主義の考えにもとづき、区分所有者から役員を選出のうえ理事会を設置し、組合の運営業務を担うことを想定しており、その理事長が管理組合の代表として管理者の役割を担うものと定めています。
これを「理事会方式」と呼びます。
その一方で、管理組合の運営には一定の専門知識が求められること、また昨今の高齢化等に伴う役員の成り手不足の深刻化を背景に、マンション管理会社が「管理者」を兼ねる運営方式のマンションが増えています。
このように区分所有者以外の人間が管理者に就任するスキームを「第三者管理方式」と呼びます。
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