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2022/01/06 07:30 - No.1128


第5回 脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策|あり方検討会とは(後編)


竹内昌義が語る「これからの断熱」
竹内 昌義

2022/01/06 07:30 - No.1128

 

当コンテンツは、みかんぐみ共同代表/エネルギーまちづくり社 代表取締役である竹内昌義氏の連載記事です。

断熱改修することで "冬の寒さ・夏の暑さが軽減される" ことを通じ、「どのように暮らしの質の向上が図られるのか」、さらには「現在、世界的に目指している脱炭素社会への転換についてはどうなのか」という点に重点を置き、各回でテーマを決め、可能な限りわかりやすくご説明します。


「2050年カーボンニュートラル」に向けて必須である、新築のゼロエネルギー化。

今回は住宅に焦点を当て、実現可能な具体案をお見せしていきます。そのうえで、前回(第4回)に続き、あり方検討会そのものについてもご紹介していきます。

◎当記事の目次
1. ゼロエネルギー住宅を実現させるには

2. 断熱性能の高い家は健康にも付与
3. エコハウスは本当に高い?
4. これからの太陽光発電提案

◆ゼロエネルギー住宅を実現させるには

ご存じのとおり "ゼロエネルギー住宅" とは、使う電気の量と作る電気の量がプラスマイナスでゼロになるということ。多くの方が「そんなこと不可能では?」と思われるかもしれませんが、以前紹介したエコハウスやオガールタウンのほか、「脱炭素に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」でも全国に実例があることが示されています。鳥取県ではZEH(ネットゼロエネルギーハウス)の基準を超える「とっとり健康省エネ住宅」制度もスタートしています。

2050年に向けて、"すべての住宅" とは言わないまでも、可能な限り太陽光パネルをのせて電気を作り、エネルギー使用量は現在の半分程度とするのが理想だと考えています。前回も少し触れましたが、1つの指針が断熱性能をHEAT20のG2レベルにして、太陽光を5~6kwのせるというものです。

ZEH(ゼッチ)とは?・・・ZEH(ゼッチ)(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とは、「外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅」です。 参考)経済産業省 資源エネルギー庁|ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)に関する情報公開について - 省エネ住宅


"電気の使用量を減らす" となるとこまめに電気を消したり、エアコンを使い過ぎないようにしたり……どれだけの我慢が必要なのか?と思いますが、これからのエコハウスに我慢は必要ありません。建物の性能をよくするだけで、エネルギーの使用量を減らすことができます。建物の断熱性能を上げて、熱の出入りをなくすという単純なことです。HEAT2のG2レベルの断熱性能に適切な換気と気密を組み合わせれば、無理な節電をしなくてもエネルギー使用量を半分にすることができることがわかっています。

こうした高断熱の家づくりが可能になった要因の1つに、サッシの性能アップが挙げられます。日本で最も普及しているアルミサッシは、熱伝導率が高く(断熱性が低い)熱の出入りが激しい窓です。そこに熱伝導率の低い(断熱性が高い)樹脂サッシを用いることで、住宅内で一番の熱の出入口である窓の断熱性能を上げることができるようになりました。複層ガラスは今や当たり前になっていますが、近年は断熱性能や遮熱性能のあるさらに性能のよいガラスやトリプルガラスを用いたサッシを選ぶ人が増えています。ユーザーの意識も高まってきているのです。

いま必要なのはG2レベルの義務化です。もし義務化が無理だとしても、このレベルの基準を加えるべきだと考えます。

断熱性能の高い家は健康にも付与

断熱性の高さが大切なのは、エネルギーだけの問題ではありません。住宅において何より大切なのは快適で安全・健康に暮らせることでしょう。断熱性能の高い家は、健康な暮らしができると同時にエネルギーも減らすことができます。

室内環境に関してWHOは「健康を守るために、寒い時期でも室内温度18℃以上をキープすべき」と強く勧告しています。冬の室内の寒さは高血圧、循環器や呼吸器系疾患のリスクが高まります。また、家の中での温度差によるヒートショックでは毎年多くの人が亡くなっています。夏の暑さでは室内でも熱中症の危険があります。寒い日でも18℃を下回らない健康的な家を作るためには現行基準ではもの足りません。
以下は、現行基準(断熱等級4 / Ua値0.87)とG2レベル(Ua値0.46)の家の冬の室温分布を示した図です。暖房期は11月8日~4月21日と設定。東京の平均気温を元に試算したものです。


図のタイトルにもあるように、これは連続空調を行った場合の試算です。連続空調では、暖房22℃(就寝時20℃)、冷房時27℃(就寝時28℃ / 湿度60%)で居室のみの連続運転を想定(トイレや廊下などはエアコンなし)。なお、人が居室にいる時だけエアコンを運転する間欠空調(暖房22℃[就寝時オフ]、冷房時27℃[就寝時28℃/湿度60%])だと、G2レベルの家でも18℃を下回る時間が45%あり、断熱等級4の家では60%もの時間、18℃を下回る結果となりました。
健康な家を作るためには、家の断熱性能を高めるとともに、エアコンの使い方にも工夫が必要なことがわかりました。
下記は冬の最も寒い日の家中の温度を見たもので、間取り図が示しいてるのは外気温が-0.5℃、エアコン稼働時の室温です。居室の室温は、どちらも18℃以上の健康範囲ですが、ホールや浴室、トイレなどに1~2℃の差が見られます。家の中での温度差はヒートショックの要因となるため注意が必要です。
 
竹内 昌義
株式会社 エネルギーまちづくり社

株式会社 エネルギーまちづくり社 代表取締役。東北芸術工科大学 教授。株式会社 みかんぐみ 共同代表。一般社団法人 パッシブハウス・ジャパン 理事。1962年生まれ、神奈川県出身。東京工業大学工学部建築学科卒、同大学院建築学専攻修士修了。東北芸術工科大学教授。ワークステーション一級建築士事務所を経て、1995年長野放送会館設計競技当選を機にみかんぐみ共同設立。2001年より東北芸術工科大学にて教鞭をとる。代表作に山形エコハウス、HOUSE-M他。

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