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2022/06/14 07:30 - No.1178


第5回 全館空調による暖房のポイント


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全館空調で快適・省エネな暖冷房を
前 真之

2022/06/14 07:30 - No.1178

 


アフターコロナの今日では、在宅勤務が増え、家で過ごす時間が長くなっている中、住まいの快適性や省エネに関心が高まっています。

建物の断熱性能は、窓の高断熱化を中心に、近年急激に向上してきました。そして、さらなる健康・快適な住環境を実現するため、現在注目されているのが全館空調です。日本ではあまりポピュラーでなかった全館空調ですが、最近になって様々な方式が続々登場しています。

本連載では6回にわけて、全館空調の良さを上手に生かした、健康・快適で省エネな暖冷房計画を考えてみます。
連載5回目となる今回は、「全館空調による暖房のポイント」についてです。


建物の高性能化に伴い、冬でも家中をどこでもいつでも暖められる全館空調による暖房が注目されています。今回は、全館空調で暖房する場合のポイントについて、「外皮性能とエアコンの容量」そして「暖気の分配方式」の2つに絞って、考えてみたいと思います。


◆23年ぶりの断熱上位等級新設

日本では1999年に定められた断熱等級4が、長らく最上位のままでした。さすがに水準の低さが問題となり、今年になって急に断熱等級5・6・7が新設される運びとなります。国が定める断熱等級が強化されたことで、高断熱住宅の普及が期待されます。

建物外皮の断熱を強化することで、冬も健康・快適に過ごせる温熱環境の改善とともに、暖房にかかる電気代も安くなることが期待されるのは当然です。図1に、東京などの比較的温暖な6地域における、断熱等級ごとの外皮平均熱貫流率(UA値)の基準値、そして温度差あたりの熱損失量の目安と暖房に必要な熱量(暖房熱負荷)を示しました。

(図1) 23年ぶりに断熱の上位等級新設


断熱が等級4→5→6→7と強化されるに従い、暖房熱負荷がそれぞれ28%・58%・88%と大きく減少することが分かります。次に、エアコンをどれくらいの容量にすれば1台で家中を暖房できるのか、そして肝心の暖房にかかる電気代はどうなるのか、について見ていきましょう。


◆エアコンの能力と効率

エアコンは、ヒートポンプという仕組みにより、外気から熱を回収し暖房に利用します。外気温度が下がると熱の回収が難しくなるので、暖房能力が低下しエネルギー効率も低くなります。

一方、暖房熱負荷は外気温度が下がるほど増加してしまうので、容量選定においては、寒冷時においてパワーダウンしてしまうエアコンで、増大する熱負荷をちゃんと賄えるのか、がカギになります。

図2の棒グラフは、東京に2021年10月から2022年04月の外気温度の頻度分布を示しています。温暖地でも寒い時間はそれなりにあり、寒冷な時こそ暖房が必要なので、注意が必要です。

(図2) エアコンの暖房能力・効率は外気温度が下がると低下する

併せて、断熱等級4の家に能力(冷房)4.0kWのエアコンを1台導入した場合の、熱負荷・エアコン暖房能力・効率を線グラフで示しました。断熱性能が低いため、外気温度が低下すると急激に熱負荷(赤線)が増大し、エアコンの能力(橙線)で賄えない時間帯が発生することが分かります。特に、外気の湿度が高い場合にはエアコン屋外機が除霜(デフロスト)運転に入り能力(灰線)がさらにダウンしてしまいます。断熱等級4の家を容量4.0kWのエアコン1台でカバーするのは困難、ということが分かります。


◆断熱等級6以上なら1台エアコンで十分に暖房できる

断熱等級を5・6・7と上げていくと、低温でも暖房熱負荷が低く抑えられるので、能力不足が起きにくくなります(図3)。断熱等級6以上では、デフロスト時でもエアコン能力が暖房熱負荷を上回り、安心です。エアコン1台で全館暖房を行うには、まずは外皮性能を断熱等級6以上とするのが一つの目安になりそうです。

(図3) 断熱が強化されるとエアコンの消費電力量が減少する

断熱強化に合わせて、熱負荷およびエアコンの消費電力量も大きく減少しています。一方、等級6→7になると、熱負荷は71%も減っているのに対し、電力量の削減は42%と減りにくく
 
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前 真之さん
東京大学

東京大学大学院 工学系研究科建築学専攻 准教授。1975年生まれ。1998年東京大学工学部建築学科卒業。2004年建築研究所などを経て29歳で東京大学大学院工学系研究科客員助教授に就任。2008年から現職。空調・通風・給湯・自然光利用など幅広く研究テーマとし、真のエコハウスの姿を追い求めている。

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