YKK AP株式会社が発行する建築業界情報紙「メディアレポート」では、毎月様々な情報をお届け。「クローズアップ」記事では国や企業・シンクタンク等の最新の調査から見えてくる業界動向や住まい手の嗜好・傾向などをご紹介しています。その中で今回は「既存住宅流通量が過去最多の61万戸」と題した記事をご紹介します。
今回ご紹介するのは「メディアレポート 2023.6」に掲載された記事です。冊子PDFは下記よりご覧ください。
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既存住宅流通量が過去最多の61万戸
流通比率も41.6%と過去最高値に
(一社)不動産流通経営協会が毎年公表している「FRK既存住宅流通量の地域別推計」によると、全国ベースの推計値による2021年の既存住宅流通量は61万485件(前年比7.5%増)となり、調査開始以来過去最多を記録した。19年比で1.0%の増加となっており、21年はコロナ禍前と同等の水準にまで回復したことがうかがえる。既存住宅流通比率についても既存住宅流通量の増加と併せて新設住宅着工戸数が増加したため、41.6%(前年比0.6ポイント増)と微増ではあったものの、過去10年で最高値となった。
都道府県別の推計値で見ると、既存住宅流通量が最も多かったのは、昨年と変わらず東京都で13万5,000件(同8.0%増)、次いで神奈川県が6万1,000件(同5.1%増)、大阪府が5万9,000件(同5.3%増)と続いた。既存住宅流通比率では、兵庫県が52.2%(同3.8ポイント増)で最多となり、調査開始以来初のトップとなった。そのほか、前年4位だった東京都が50.1%(同1.5ポイント増)と次点で多く、そのあとに49.7%で京都府、49.3%で奈良県、49.0%で神奈川県と続き、10都道府県が全国ベースの41 .6%を超える結果となった。
ただ、東京都は流通数で全国1位、流通比率でも2位と高い値を示したものの、都全体の流通量の約84%を占める23区に絞って見ると、流通量は11万4,000件となっており、前年比では7.6%増加しているものの19年比では3.3%減とコロナ前の水準までは回復していないことがわかる。一方、23区の流通比率は前年比1.5ポイント増の51.7%を記録しており、東京都全体の流通率( 50.1%)よりも高かった。
さらに、首都圏( 23区を除く東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の1都3県)では、エリアを16分割して推計。すべてのエリアで既存住宅流通量が前年よりも増加したことが判明した。なかでも20%を超える顕著な増加率を示したエリアが、千葉県柏市、我孫子市、野田市の「柏エリア」(26.6%増)、東京都立川市、昭島市、武蔵村山市、東大和市、国分寺市、国立市、日野市の「立川エリア」(24.9%増)、埼玉県さいたま市、戸田市、蕨市の「さいたまエリア」(20.9%増)。ほかにも、東京都町田市の「町田エリア」、千葉県千葉市、習志野市の「千葉エリア」、千葉県船橋市、八千代市の「船橋エリア」、神奈川県川崎市の「川崎エリア」、埼玉県志木市、朝霞市、和光市、新座市、富士見市の「志木エリア」で10%を超える増加率を見せており、コロナ禍で減少した都心需要が近郊へ波及したと考えられる。