YKK AP株式会社が発行する建築業界情報紙「メディアレポート」では、毎月様々な情報をお届け。「クローズアップ」記事では国や企業・シンクタンク等の最新の調査から見えてくる業界動向や住まい手の嗜好・傾向などをご紹介しています。その中で今回は「平屋市場が拡大、自然災害きっかけに九州で関心高まる」と題した記事をご紹介します。
今回ご紹介するのは「メディアレポート 2023.12」に掲載された記事です。冊子PDFは下記よりご覧ください。
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平屋市場が拡大
自然災害きっかけに九州で関心高まる
リクルートが運営するSUUMOジャーナルが、国土交通省の2022年建築着工統計をもとに平屋率を集計し「都道府県別平屋率ランキング」を発表した。これによると、22年の3階建て以下の新築住宅に占める平屋建ての割合は、全国平均で13.7%となり、14年の7.6%から6.1ポイント増加したことが分かった。
都道府県別のランキングを見ると、1位の宮崎県(55.8%)、2位の鹿児島県(52.4%)がともに5割を超えており、新築戸建の半数以上が平屋という結果であった。以下、沖縄県(41.7%)、香川県(34.9%)、熊本県(34.4%)と続く。また、宮崎県、鹿児島県以外でも九州地方はとりわけ平屋率が高い傾向にあることも分かり、福岡県を除くすべての県でその比率は3割超え。ランキングトップ10のうちの多くを九州地方が占めている。
レポートでは、九州地方で平屋が多い要因の1つとして、熊本地震をきっかけに揺れに強い平屋への関心が高まっていることがあると分析している。地震当時、住民は建物が自らの重みでつぶれている様子を目の当たりにしており、2階の重みがなく、地震の揺れに強い平屋に注目が集まった形だ。地震により家の建て替えが必要になった人だけでなく、これから住宅を購入する人の中でも地震に強い構造が取りやすい平屋を希望する人が増えているという。
また、九州地方は台風の上陸頻度が高く、耐風性の観点から住宅の高さや屋根の勾配を低く設計する傾向があることも平屋人気の理由と分析している。
一方、平屋率が全国で最も低かったのは東京都(1.4%)で、その割合は新築戸建約71件に1件とごくわずか。東京以外でも、46位は神奈川県(2.7%)、45位は大阪府(3.0%)となっており、都市部で十分な広さの土地を確保できない可能性が高い場所ほど平屋率は低い傾向が見られた。だが、これらの都府県も14年比で見ると平屋率は大きく高まっており、東京都は21%増、神奈川県は22%増、大阪府に至っては113%増と増加率が著しい。世帯の少人数化や、家事動線の良さ、冷暖房がワンフロアで完結するため光熱費が低く済むことなど、さまざまなメリットが認知され徐々に割合を伸ばしていると考えられる。
なお、全国で平屋率が低下していたのは沖縄県、岩手県、宮城県の3県のみだった。