本連載では、住まいの新築やリフォームを検討されるお客様に対する事前の情報提供不足や、お客様の期待値とのズレによって、信頼を損ねてしまわれることを防ぐために、YKK APお客様相談室が、お客様や家づくりに関わる皆様から寄せられた問い合せ内容をもとに、ぜひお伝えしておきたいポイントをご紹介します。
第2回は、ガラス関連において、結露などのお客様が誤解されやすい点や、トラブル事例などについて、取り上げます。
◆ガラスの誤解ケーススタディ
お客様からご相談いただく質問のなかには、誤解されやすいものや注意していただきたいことも含まれます。特に結露においては、「複層ガラスなら結露しない」など、お客様の間違った思い込みにより、なかなかご理解いただけないケースも多いです。結露を放置すると、カビやダニの発生につながり健康面への影響も気になります。ガラスの特性と扱い方を知り、正しい知識をもって窓(ガラス)の仕様設定や、お客様へご説明いただければと思います。
プロでも説明が難しい「結露」の話
結露は、湿気や室温などの生活条件により冬場や梅雨時などに発生する自然現象で、完全になくすことはできません。それでも、結露の起こりやすい環境や場所、起こるメカニズムを知ることで、発生を抑制することは可能です。
結露した窓
そもそも「結露」とは、暖かく湿った空気が冷やされ、空気中の水蒸気が水滴になってしまうことで、外気温が低いのに、暖房によって室内だけが暖かく湿度が高いと、冷たい外気に影響されやすい窓(ガラス)の内側に水滴がびっしり付いてしまいます。「複層ガラスなら結露しない」などと誤解されているケースもありますが、湿度と温度の条件次第では、結露が発生する可能性はあります。
なお、後述の「脱・結露のすすめ」カタログに掲載している「湿り空気線図」により、湿度と室温から結露する温度(露点温度)を知ることもできますので、結露に悩んでいる現場では参考になります。
脱・結露には、換気・除湿・発生源を減らす!
水蒸気が多いことが結露する大きな原因です。お部屋の湿度を40~60%と最適な湿度に保つことが、脱・結露のカギになります。
結露を防ぐために効果的な対策は、次のようなものがあります。
・こまめな換気が重要で、湿気が発生しやすい活動(調理・入浴など)を行う時またはその後に、換気扇をまわす、窓を開ける
・雨などで換気できない場合、エアコンのドライ運転や除湿器などを利用
・過度な加湿器の使用は控える、ガスファンヒーターをエアコンに変える、洗濯物の部屋干しを控えるなど水蒸気の発生源を減らす
・断熱性の高いガラス(及びフレーム)を使用した窓を採用
梅雨の時期の洗濯は除湿器を活用
結露のメカニズムなどをさらに詳しく、お客様へご説明しやすい資料はこちらです。
・脱・結露のすすめ
https://webcatalog.ykkap.co.jp/iportal/cv.do?c=11304280000&pg=1&v=YKKAPDC1&d=pro
・「HEALTHCARE MADO」
(結露の健康面への影響や、結露を抑制する窓の仕様など)
https://www.ykkap.co.jp/consumer/satellite/sp/healthcare-mado/
意外な結露のパターン
①リフォーム後の結露増加
リフォームによって気密性が向上したことで、それまでは窓のスキマなどから自然に逃げていた水蒸気が室内にたまり湿度が上がり結露しやすくなる場合があります。湿度の変化に注意し、こまめな換気を行うことで結露を防ぐことが可能です。
②カーテンや和障子のある窓や出窓は結露しやすい
カーテンや和障子の中は、室内の熱が伝わりにくく窓の内側が温まらない一方で、水蒸気は通り抜けてしまうので、結露しやすくなります。また、出窓部は、窓が冷やされやすい一方、空気のよどみがおきやすいので、結露しやすくなります。
③二重窓の外窓の結露
新たに内窓を設置し、二重窓にすることで、内と外を遮断し、内窓の結露を抑えることはできますが、既設の外窓は冷やされたままですので、温湿度の状況によっては、外窓の結露は内窓設置前よりも多くなる場合があります。
④複層ガラスに「内部結露」が発生
「ガラスの曇りが拭いてもとれない…」「ガラスとガラスの間に水滴がある…」そんな症状は、複層ガラスの空気層内部に結露が発生する「内部結露」の初期段階にあたります。症状が進行すると、水槽のように水が溜まってしまうこともあります。この現象は、引き渡しから10年間の商品保証の対象になっています。
・(FAQ)複層ガラスの中が結露している(曇っている)のですがどうすればよいですか?https://faq.ykkap.co.jp/faq_detail.html?id=22
・複層ガラスの商品保証について
https://webcatalog.ykkap.co.jp/iportal/CatalogViewInterfaceStartUpAction.do
その他のガラスの誤解
ガラス選びの際に気を付けておきたいことや「見た目」で誤解しやすいこと、中には大きな間違いもあります。ぜひこの機会にご確認いただければと思います。
①網入りガラスは防犯性を高める?
網入りガラスは見た目のせいか防犯性が高いように思われがちですが、叩き割りに対する強度は、一般ガラスとあまり変わりません。網入りであるのは、火災によるガラスの飛散を防ぐためで、防火性を高めることが目的です。
防犯性を高めたい場合は、「安全合わせ複層ガラス」がおすすめです。
・安全空合せ複層ガラス
https://www.ykkap.co.jp/consumer/products/window/glass_security
②窓ガラスに養生テープの台風対策は効果がある?
近年の大型台風の増加で、『窓ガラスに×印、または「米」の字のように養生テープを貼ることで、強風により窓ガラスが割れてしまうのを防いでくれる』という情報がSNSを中心に話題になりました。しかし、その対策による効果は確認できておりません。
台風の備えを強化するなら、「安全合わせ複層ガラス」の使用や、飛来物がガラスに当たらないようシャッターや雨戸を閉める、また万が一ガラスが割れてしまった場合に備えて、割れたガラスの飛散を防ぐため、室内のブラインドやカーテンを閉めることをおすすめします。
③ガラスにフィルムを自分で貼ってもよい?
市販されている防犯・防災フィルムは手軽にお客様自身で貼れる便利なアイテムですが、フィルムやシール、ポスターなどをお客様が貼ったガラスに不具合が起きた場合、商品保証の対象外になりますので、注意が必要です。
◆ガラスのトラブルケーススタディ
YKK APお客様相談室にいただくお声で、お客様には思いもよらないトラブルが発生し、商品選定時にそんな話は聞いていなかったとお客様がおっしゃるケースがあります。万が一のことを考えると、起こりえることについて予めお伝えしていただくことも大事になると思います。
知らないとびっくりの「熱割れ」
「熱割れ」とは、1枚のガラス内で、直射日光が当たっている部分と、サッシ内部に隠れている部分との温度の違いにより、熱膨張の差が生じ、ガラスにひびが入ったり、割れてしまう現象です。商品の構造上やむを得ない自然現象で、一部を除き、商品保証の免責事項となりますので、事前にご案内しておきたい現象です。
特に、金網が封入されている「網入りガラス」や、室内側に紙やシールが貼りつけられたガラスなどは、熱膨張の差が生じやすく、熱割れのリスクも高いので、注意が必要です。
・(FAQ)ガラスの「熱割れ」現象について教えてください。(予防のポイント)
https://faq.ykkap.co.jp/faq_detail.html?id=695
ガラスの枚数や厚みが増すと開閉が重たい
ダブル・トリプルのようにガラスの枚数が増えたり、ガラスの厚みが増したりすることで性能が高まるメリットはあるものの、「住んでみたら窓が重く開閉が難しい…」というお声をいただくことがあります。そのような場合は、標準の引手ではなく、持ちやすい大型引手や初動を補助するサポートハンドルなどのご利用を検討いただきたいです。しかし、後から付け替えることができないケースもあるので、お客様の将来の家族構成や窓の利用状況なども踏まえて、メリットとデメリットどちらも考慮して予めご案内いただくことも必要です。
・機能部品(後付大型引手、後付サポートハンドル 等)
https://www.ykkap.co.jp/consumer/products/window/reform_parts
型ガラスはメーカーごとにデザインが異なる
意外と知られていないのが「型ガラスのデザインはメーカーによって異なる」ということです。古い住宅で窓のリフォームをする段階になり、同じデザインの型ガラスが手に入らないというケースが増えています。近年、大手ガラスメーカーが型ガラスの生産を止めてしまうケースもあり、リフォーム案件では特にご注意いただいた方が良いポイントです。
Low-E複層ガラスにすると電波の受信に影響がある?
Low-E複層ガラスの特殊金属膜により、携帯電話やラジオなどの電波機器を使う際、電波の受信に障害が出る場合があります。また、建物の構造や電波を通しにくい断熱材や壁材などによっても影響を受けるようですので、予め確認しておきたいポイントです。
◆これからのガラスとの付き合い方
二回にわたって「ガラス」についてお伝えしてきました。新築でもリフォームでも、窓を考えることは、暮らしの快適性を上げるのにダイレクトに効果を発揮します。
また、ガラスの性能や仕様を知っておけばトラブルが起きても慌てることなく対処できます。
これから新築する方には、おうち時間の聞き取りからご家族の在宅時間、ご夫婦のテレワークの有無や割合に応じて、求める窓が変化していきそうです。この記事がガラスの仕様やそのメリットとデメリットについてのお客様へのご説明、よりよいご提案の一助となると幸いです。
◆まとめ
今回は、ガラスの誤解されやすい面やガラスの特性によっておこり得るトラブルなどを紹介しました。
次回は、かしこく選べば、夏でもより快適にお過ごしいただける、「網戸」のギモンについてご紹介します。
▼当連載の他の回はこちら▼
https://aplug.ykkap.co.jp/communities/130
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