◆はじめに
当連載記事では、筆者である私自身の "自宅マンションでの経験" はもちろん、管理組合を対象とする「コンサルティング」や「顧問業務」などを生業にしている "マンション管理士としての経験とノウハウ" をもとに、昨今の業界の動向などをテーマに取り上げ、『マンション管理に携わる皆様に役立つ情報』を提供していきたいと思います。
顧問先のマンション管理組合(神奈川県・55戸)では、管理費会計が構造的な収支赤字に陥っていることから、理事会から相談を受けた筆者がコンサルティングすることになり、管理委託費など維持管理コストの適正化に取り組むことになりました。その後、管理会社等との委託先との契約条件の交渉のほか、管理仕様や委託先の一部変更によって現状比で3割近いコストダウンを実現することができました。
◆年間100万円近い経費が簿外処理!?
このコンサルティングの際、一つの費目が年額16,500円とあまりにも小さいので驚きました。それは「機械警備業務費」です。
マンションの設備や専有住戸内で発生した不具合や事故等については、管理室内に設置された監視盤で異常信号を常時受信しています。機械警備を導入している場合、その異常信号が即時警備会社のコントロールセンターに移報され、受信から25分以内に警備員が現場に駆けつけて対応することになります。(下図参照)
【機械警備業務の基本的なしくみ】
住戸数にもよりますが、一般的な機械警備費用としては少なくとも年間20万円以上かかるため、なぜそんなに安いのか不思議に思い、組合の決算書を確認したところ、管理室を除く各世帯(55戸分)の費用はすべて簿外(組合の会計収支の対象外)で処理されていることがわかりました。
さらに警備会社との業務委託契約書を確認したところ、機械警備業務費は、戸あたり月額1,250円で設定されていることがわかりました。そのため管理室を含む56戸分の費用は以下の通りになります。
@1,250円/月 × 56戸 × 12ヶ月×1.1(消費税率)= 924,000円
ところが、この管理組合の決算書では、組合の支出として管理室分のみの費用(16,500円)しか計上されていませんでした。
残りの費用については、各住戸から管理費などとともに毎月定額で徴収しているにもかかわらず、管理組合の収入として計上せずに「預かり金(907,500円」)という負債科目で計上していたわけです。
こうした会計処理は極めて珍しいので、あやうく見過ごしてしまうところでした。
◆機械警備費の適正化の進め方
さて、現状の機械警備の委託金額(年額924,000円)を他のマンションの事例と比較すると
建築関係プロユーザー対象の会員制サイトです。