住宅デザインを語ろうとするのは、とても難しいものです。その難題の住宅デザインについて、書いてみたいと思いました。できれば住宅の担い手である地域工務店の経営を観点にして住宅デザインを考え、工務店にもできるテクニックとしてまとめてみたいと思います。
連載7回目となる今回は、「住宅デザインを決める要素」というテーマ(後編)をお送りします。
※前回記事はこちら(前回テーマ:住宅デザインを決める要素(前編))
◆4つの基本要素
住宅デザインを決める10の構成要素、点・線・面・寸・色・柄・材・質・形・様の最初の4つを前編でまとめました。点・線・面・寸は、最も基本のデザイン要素です。
それだけに、基本となるデザインの法則が成り立ちます。
デザイン・テクニック⑤でも書いてきた、「Less is more」の手法です。
点はうまく並べれば、1本の線になり。線も同寸ピッチで並べれば1つの面になります。
寸法や対比を揃えれば、整理されているように見えます。
できる限り、点・線・面の数を減らし、バリエーションを少なくすることで、デザインの質は明白に向上することになるでしょう。
とにかく、点・線・面・寸のデザインで迷ったら、「Less is more」が基本です。
逆に最も基本のデザイン要素は、他のデザイン要素から続々と生まれる可能性があります。図面で引いている限りは単純であっても、現実の建物ではさまざまな部材をアッセンブルすることになるので単純ではありません。
◆デザインとしての色
色の基本が色相・彩度・明度であることは、どのデザインでも一緒です。
色も「Less is more」といいたいところですが、住宅ではそうもいきません。
住宅デザインの色の組合せとして、見ておきたい関係は、次の3つでしょうか。
たとえば、色面の変わり目には、必ず目地としての線が生まれてしまいます。同系色であれば目地の線は目立ちにくく、補色であれば強調されます。
また、バランスを見る上では、色のボリューム感や重量感も影響します。
さらに、特に色については、経年色や退色も計算に入れておかなければなりません。特に木材は、紫外線の影響を受けて灰褐色になります。それが侘色や寂色になって、趣を増すように見えれば秀作となり得ます。
◆デザインとしての柄
色に続いて柄は、多くの場合、色の差によって生まれます。
外観デザインよりも内装デザインの方がイメージしやすいのかもしれません。特にクロスやカーテンのテキスタイルなどには、色だけではなく柄としての多くのバリエーションが考えられています。ストライプ・チェック・ドット・花・抽象など・・・
また、冬目と春目がつくり出す、木目もひとつの柄であるといえます。
柾目、板目を始めとして、筍目、笹目、鱗目、玉杢などの他、樹種によっても違いがあります。希少性もあって、決して柾目が最上のものではありません。
時には節も木目に個性を与え、桂離宮では天皇を迎えるための部屋の長押に使われている最上級の木材に、わざわざ節ありが選ばれています。
まさに好みの世界ではありますが、柄を選ぶ気持ちの裏には、シンプルな無地がベストではないという決意があるように思えます。
◆デザインとしての材
どの様な材料を使うかというのも、デザインには大きく関わります。木材、金属、石、タイル、ガラス、土、紙などなど、住宅には多くの材料が使われています。
そもそも、鉄とガラスとコンクリートが無ければ、モダンデザインは生まれなかったといえます。こうした材料の組合せは、さらに新しいデザインを生み出すこともありえます。
色・柄を視覚的にみて、最初に材を判断しますが、さらに嗅覚や触覚、時には聴覚を使って、私たちは材料の違いを感じています。ですから、有機と無機、柔らさや硬さ、温かさや冷たさ、自然感と機械感といった感覚も材料から生まれることがあります。
一方で、現代によく使われているサイディングでは、天然素材の他に窯業系や金属系の建材など幅広くあります。さらにその表面加工で、木材や石などの他の材を模したものもあり、材料を選ぶデザインの範囲はとても広くなっています。
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