こちらの連載では、現場監督がすぐに役立てることのできる木造住宅の品質管理ノウハウをご紹介します。全12回の連載では「構造躯体工事」にテーマを絞り、役割と目的、判断基準、現場事例、回避方法、対処方法に分けて解説を行います。
連載第1回目となる今回は、「面材耐力壁の釘の打ち込み深さ」についてです。
役割と目的
▶ 耐力壁の役割は、地震時の横揺れや台風による風の影響を受け、住宅が変形し破損したり倒壊したりする危険を軽減することです。
▶ 面材による耐力壁の釘打ちは、部材の強さと釘のせん断力で耐力を確保するため、留め付け釘の打ち込み深さが重要です。
チェック基準 面材に打ち込まれた釘の打ち込み深さ(参考基準)
▶ 耐力面材を販売しているメーカーによっては具体的に釘の打ち込み深さが決められているものもありますので、施工時には各メーカーの施工要領書に沿った施工が必要です。
▶ 釘頭のめり込みが深くなると必要な耐力が確保できなくなります。釘頭がめり込まないように釘打ち機の打ち込み圧力を調整した施工が必要です。
不備事例
ケース1 | 使用する釘打ち機の圧力調整不足、打ち込み基準の認識不足 |
不備要因
① 使用する釘打ち機の圧力調整がこまめに行われていない。
② 面材耐力壁の釘ピッチを遵守することについては認識していたが、打ち込み深さについては認識していなかった。
ケース2 | 乾燥部位と吸水部位に対して同じ圧力で施工を行った |
不備要因
① 乾燥部位と湿っている部位に施工時に一部分が湿っており同じ圧力で施工を行ったと考えられます。
回避方法 不備を起こさないようにする回避方法(参考例)
①エアーガン及びコンプレッサーの圧力を弱めて打った後、手打ちで仕上げる
②エアーガン及びコンプレッサーの圧力調整をこまめに行う
③釘打ちの邪魔にならないよう足場計画を行う
④面材を濡らさないように養生を行う
⑤釘がめり込みにくい耐力面材を採用する
対処方法 不備が起こってしまった場合の対処方法(参考例)
①めり込み過ぎの釘からずらして釘を増し打ちする
②浮き出ている釘はめり込まないように打ち込む
③めり込み過ぎの釘が多い場合は、新しい面材に交換し打ち直す
作業の難易度とリスクを考慮して、最適な対処方法を選定ください。
以上で「面材耐力壁の釘の打ち込み深さ」についての解説を終了します。今回の内容を参考に、施工品質確保に向けてさらなる向上を目指してください。
建築関係プロユーザー対象の会員制サイトです。
1968年2月生まれ。1990年大阪学院大学経済学部卒業後、小堀住研(株)(現:(株)ヤマダホームズ)、 そして建材商社を経て、2006年に(株)NEXT STAGEを創業。 民間でいち早く第三者検査事業をスタートさせ関西を中心に普及させてきたが、本質的な技術者の人財化や 品質向上への仕組みにギャップを感じ、2013年には、業界初の施工品質監査ナレッジマネジメント体系を業界に提唱し、 「監査」という独自の手法を用いたPDCAサービスを展開する。 現在では全国8拠点、800社を超えるビルダーがサービスを導入し、2020年には建築技術に特化した 学習環境プラットフォーム事業を本格化させ、2021年8月より、これまで蓄積してきたテクニカルビックデータを駆使し、 誰もが参入できなかったデータ&アナリティクス事業を実現させ、これからの住宅価値を変えるエッセンシャルな建設DXを 推進する。