本連載では、住まいの新築やリフォームを検討されるお客様に対する事前の情報提供不足や、お客様の期待値とのズレによって、信頼を損ねてしまわれることを防ぐために、YKK APお客様相談室が、お客様や家づくりに関わる皆様から寄せられた問い合せ内容をもとに、ぜひお伝えしておきたいポイントをご紹介します。
初回は、やはり「窓を考える会社」だけに、『窓』、その中でも『ガラス』についてのギモンを取り上げさせていただきます!
ガラスの種類と特性を知り、ガラスを通した快適な暮らしのご提案につながれば幸いです。
◆ガラスの種類を知る
お客様からガラスについてよくいただく問い合せのひとつに、「ガラスの種類はどんなものがありますか?」というものがあります。基本のガラスの種類だけでなく、用途に合わせた選択肢まで知っていれば、お客様のご要望により合うものが提案できるかもしれません。ガラスの基礎について、ここでは触れていきます。
ガラスの種類と選び方
ガラスの選び方は「何を重視するか」で決まります。居住性に欠かせない断熱性能はもちろん、目線を遮る効果のあるガラス、見た目にアクセントをもたらすガラス、防音や防犯性を高めた安心感のあるガラスなど、様々な種類から用途に応じた選定ができます。
現在一般住宅に使われるもののほとんどが「フロートガラス」と呼ばれ、透明な板ガラスです。ほかに、ぼかし加工がされた「型ガラス」は水まわりなどによく使われます。視界コントロールの目的を叶える仕様はいくつかあり、型ガラスはガラスメーカーによって意匠(柄)が異なるので注意が必要です。
お客様のライフスタイルや好みに応じて選択肢は様々あります。具体的にどのようなものがあるか、お客様にご説明がしやすい資料はこちらです。
・複層ガラスWEB CATALOG
https://webcatalog.ykkap.co.jp/iportal/CatalogDetail.do
・「かしこいガラス選び」コンテンツ
https://www.ykkap.co.jp/consumer/satellite/products/articles/glass_select/
ガラスの種類を一通りご覧いただいた上で、機能ごとに見ていきましょう。
かゆいところに手が届く!機能ガラス(ブラインド入複層ガラス)
複層ガラスの間にブラインドが入った機能性バツグンのガラス。ブラインドの簡単な角度調整で視線のコントロールができ、ブラインドにほこりがたまらず、掃除も簡単。
ブラインド入複層ガラス
https://www.ykkap.co.jp/consumer/products/window/glass_blind
意匠性を兼ね備えたデザインガラス(格子入複層ガラス)
複層ガラスの間に格子が入っているデザイン性の高いガラス。外観や建物の雰囲気に合わせて取り入れると差別化でき、満足度アップにもつながる。
格子本数などの詳細仕様は、カタログでご確認ください。
防犯・防災の安全性を高めたガラス(安全合わせ複層ガラス)
ガラスとガラスの間に防犯フィルムを挟み、破壊されにくい構造であるのが特長。万が一割れた場合も飛散しにくい。
※台風や突風による破損を防止するためには、窓の外に「シャッター」を併用すると、より効果的です。
・ウインドウシャッター
https://www.ykkap.co.jp/consumer/satellite/products/articles/window_shutter/
◆コロナ禍で増えるテレワーク 今取り入れるべきガラスのこと
コロナ禍でニーズが高まっているのが、「防音性を高めたい」ということ。テレワークに集中する環境を作るためには「外から室内へ」の音をシャットアウトする。また、おうち時間が増えたことで、音楽や映画鑑賞など、趣味時間を充実させるための「室内から外へ」の防音対策。どちらもステイホームに欠かせない要素になっています。
防音で仕事もおうち時間も快適!(異厚複層ガラス/安全合わせ複層ガラス防音タイプ)
異厚複層ガラスは、通常の複層ガラスで起こり得る「共鳴(同種・同厚のガラスを使用した場合に特定の周波数の音で共鳴し音が増幅してしまう現象)」を、異なる厚さのガラスを組み合わせることにより防ぎ、外の騒音をカットして、室内からの音漏れを防止。また、防音特殊フィルム中間膜を挟みこんで高い遮音性を発揮する安全合わせガラスと組み合わせた複層ガラスもあります。
・異厚複層ガラス
https://www.ykkap.co.jp/consumer/products/window/glass_different
二重窓による防音対策(内窓設置)
ガラスそのものではありませんが、室内側に内窓を設置して二重窓にすることで、騒音・音漏れの悩みを解消する方法もあります。内窓にも種類がいろいろあるので、リフォームの場合は、今お住まいの家の窓の設置状況なども確認し、効果的な仕様をご提案することが必要です。
・マドリモ 内窓 プラマードU
https://www.ykkap.co.jp/consumer/products/window/madoremo-plamadou
◆Low-Eガラスとは
「Low-E」とは、低放射(Low Emissivity)膜のことで、熱の伝わりを抑える特殊な金属の粉が膜状に吹き付けてあるガラスです。その構造は魔法瓶とそっくりで、家全体の保温・保冷につながります。現在、日本国内の新築一戸建ての8割に導入されています。
(出典:板硝子協会HP、複層ガラス/Low-E複層ガラス普及率の推移 http://www.itakyo.or.jp/upload/ecoglass_penetration_20200928.pdf?20200929-2)
Low-E複層ガラスは「金属膜が室内外のどちらに付いているか」で2パターンあります。断熱と遮熱や日射取得と遮蔽、どちらに重きを置くのか。
また、窓の設置方角によって、それぞれの特性を生かした使い分けができるとよいですね。
室内側ガラスに金属膜がコーティングされたもの(断熱タイプ)
しっかり断熱しながらも太陽光を取り込んで暖かく保てるガラスです。庇や軒と組み合わさった南向きの窓への採用が、太陽高度の低い冬場の日差しを取り込んで逃がさないので、おすすめ。注意したいのは、Low-E膜の種類(色味)により日射遮蔽率が異なるので、目的に応じた選択が必要です。
Low-E複層ガラス(断熱タイプ)
室外側ガラスに金属膜がコーティングされたもの(遮熱タイプ)
断熱性能はもちろんのこと、明るさを取り込みながら日射熱を遮り室内を涼しく保つことができます。冬の熱の流出を抑える効果はもちろん、夏の日差しや西日の気になる窓に採用すると夏の室内の快適度がアップします。
・ガラス選びがカギ! 快適な窓辺のつくりかた。https://www.ykkap.co.jp/consumer/satellite/products/articles/feature/025/
Low-Eガラスの進化版「Low-Eトリプルガラス」
最近は、Low-E複層ガラスよりも更に断熱性能の高いトリプルガラスも登場し、徐々に採用物件も増えてきています。ガラスが3層構造で、空気層が増えることと、室内側・室外側両面のLow-E膜の効果で、複層ガラスよりも熱が伝わりにくいのが特長。高性能住宅にはぜひ取り入れたいガラスです。
・住まいのトリプルお悩みをトリプルガラスが解決!
https://www.ykkap.co.jp/consumer/satellite/products/articles/tripleglass/
◆ガラスの仕様は刻印でわかる
ご紹介してきたとおり、様々な種類のガラスが住宅に使われ、用途に応じて選択するお客様が増えています。ところがメンテナンスが必要になった際、YKK APお客様相談室宛てに「うちの窓がどのガラスなのかが分からない」というご相談を多くいただきます。困ったことになってはじめて、製品が何なのか分からずハッとする。ガラスの仕様は聞いたことがないというお客様が多く、「うちの窓はそもそもLow-Eなのか」ということさえご存知ないケースもあります。お客様へはじめに仕様をお伝えしておくことは大切ですし、問い合せへスムーズに回答ができるようになります。
パッと見てわかりやすい「刻印」をチェック
YKK AP製複層ガラスの場合、室内側から見てガラスの右下にあるYKK APマークの刻印の上にLowE ●と記載があります。お客様が設計図書を見直さなくても、製品そのものを見れば、仕様は一目瞭然。アフター対応の際にもスムーズです。引き渡しの際にでも、現場でお伝えしておきたいですね。
・ガラスがLow-Eかの見分け方
https://faq.ykkap.co.jp/faq_detail.html?id=8521
・ガラスの厚さやサイズの見分け方
https://faq.ykkap.co.jp/faq_detail.html?id=8523
※画像はYKK AP 高性能樹脂窓「APW330」FIX窓(Low-E複層ガラス/断熱タイプ ブロンズ色/型ガラス)の例
サッシとガラスのメーカーが違う場合もあるので要注意
YKK APはサッシメーカーでもあり複層ガラスも製造しているため、窓枠(フレーム)のみYKK AP製で、ガラスは別メーカーのものが組み込まれている場合があります。こちらも「刻印」で見分けられますので、そのガラスメーカーにお問い合せいただく必要があります。ガラス交換が必要な場合や不具合があった際には、ご確認いただく必要があるので、気を付けたいポイントです。
◆まとめ
今回は、ガラスの種類やおすすめの機能、ガラスの仕様や見分け方などをご紹介しました。
次回は、お客様だけでなくプロも見逃しがちな「ガラスの不具合や誤解」を、ケーススタディとともにご紹介します。
▼当連載の他の回はこちら▼
お客様に伝えておきたい! 見逃しがちな家づくりのギモン(窓・ドア関連)
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