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今回はメディアレポート 2024年5月号に掲載された「区分所有法が改正 マンションの建替え要件が緩和へ」をお届けします。
区分所有法が改正
マンションの建替え要件が緩和へ
法務大臣の諮問機関である法制審議会の区分所有法制部会が、マンションの建替え要件を緩和する内容などを盛り込んだ「建物の区分所有等に関する法律」(区分所有法)の改正要綱案を決定した。
近年、マンションでは建物そのものの高齢化に加え、居住者の高齢化が大きな問題となっている。国土交通省によると、築40年を超えるマンションは2022年時点で126万戸存在している。これが、32年には261万戸、42年には445万戸に急増していくと見込まれている。また、築40年のマンションのうち、世帯主が70歳以上の住戸の割合は48%と約半数にのぼる。こうした実態から、マンションにおいては適切な管理や修繕に加え、円滑な建替えの実施が求められている。
マンションの建替えを実施するには、管理組合の集会において決議を行う必要があり、そのための手続きを規定しているのが区分所有法だ。同法が制定された1962年当時はマンションの建替え決議に規定はなく、民法の規定から居住者全員の同意が必要とされていた。これが83年の改正により「区分所有者の5分の4以上」に緩和、現在まで適用されている。ただ、この”5分の4以上“や所在不明者の増加が建替え決議を難しくしている。
今回の改正要綱案は、①区分所有建物の管理の円滑化を図る方策、②区分所有建物の再生の円滑化を図る方策、③団地の管理・再生の円滑化を図る方策、④被災区分所有建物の再生の円滑化を図る方策、の4点で構成している。このうち、②において決議要件の見直しを図った。マンションなどの区分所有建物に客観的な緩和事由が認められる場合、多数決割合を現行要件である「区分所有者の5分の4以上」から、「区分所有者の4分の3以上」に緩和する。客観的な緩和事由とは、地震や火災に対する安全性、外壁・外装材の剥離、給排水設備などの劣化、バリアフリー基準への適合などに問題があることを指す。
また、裁判所に請求することで所在不明の区分所有者を決議の母数から除外できる仕組みも設ける。現行要件では所在不明者は反対票に数えていたため、合意形成が難しかったことを踏まえたものだ。
そのほか、④において被災したマンションの建替えや取り壊し要件についても緩和し、多数決割合「3分の2以上」でそれぞれを実施できるようにする。
メディアレポート 2024年5月号
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