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2017/11/01 12:18 - No.155


第5回 フィンランド リノベーション事例


北欧住宅事情(フィンランドから)
大村 裕子

2017/11/01 12:18 - No.155

 

フィンランドのヘルシンキ在住の大村裕子です。

フィンランドの建築について住宅を中心に、建築士の視点でレポートしていきます。


新築が人気なのは常識? リノベーションをして高く売る

スウェーデンやフィンランドでは、リノベーションをした中古マンションが、購入した価格とリノベーション費用の合計より高く売れる可能性があります。

 

これは私がスウェーデンの設計事務所に在籍時、リノベーションのプランニングを担当したマンションです。(2012年 ヨーテボリ)

 お客さまは30代後半のスウェーデン人男性で、ここに41 ㎡の部屋を所有して一人暮らしをしていました。予算を聞いたところ売却の可能性もあるので、将来その分高く売れるなら出したいのでふさわしい費用とリノベーションプランを提案してほしいと言われました。 

最終的にはシャワールーム(シャワー、洗面台、トイレ、床壁タイル変更、タオルドライヤー設置、寝室(スライディングドア設置)等を提案しました。 

私は日本では新築マンションが価値が高く、年数を経ると価値が下がっていくのが普通だと思っていたので、この実情にショックを受けました。 

逆にその設計事務所のスウェーデン人建築家は、「市場価格は需要と供給で決まるのでは?魅力的にリノベーションをすれば、欲しい人が増えて価格があがる。なぜ日本では、高く売れないのか?」と不思議そうでした。 

日本で新築が人気があるのはなぜでしょうか?地震が多いので、耐震性が高い新築が人気というのは理由の1つだと思います。外観をそのまま残したいような住宅が少ないのか、または修復が困難で解体せざるのを得ないのか、、。日本人が一般的に家だけでなく、機能的で新しいものが好きという国民性もある気がします。北欧では新築だけでなく、歴史のある素敵な外観デザインのマンションが多く、そのようなデザインのマンションは人気が高いです。日本だと京都の町屋はいい例だと思います。


マンションの窓交換、配管交換  

一般的に外観は変更できないことが多いです。外観はそのままで内部をリノベーションします。 

フィンランドでは日本と比較して、中古マンション或いは一戸建てをリノベーションして、家族構成が変わると売却する人が多いです。そしてその資金でまた家族構成に合った中古マンションを購入します。ケースバイケースですが、あまり価値が下がらなく、または価値が上がる場合もあります。廻りの友人、同僚を見ていると比較的早く、スムーズに行えるようです。



 これは窓の交換をしています。外観のデザインは変更せず、似たデザインの高性能な窓に変更しています。

このエリアはヘルシンキ市中心から南へ車で15分ほどです。191030年代のマンションが多く、新築マンションが見当たりません。常にどこかしらでリノベーションをやっています。

また水道配管交換の話は、日常会話でもよく出ます。配管交換は大掛かりなため、一時期引っ越しが必要となってしまいます。近年に予定がある場合、賃貸広告等では必ず記載されています。


 100年前のログハウスが並ぶ街並み


 こちらはヘルシンキ中心部から車で30分ほどのキャプラ地区です。約100年前のログハウスが約160戸立ち並びます。1920年代、イギリスの田園都市計画をお手本にして計画されました。時代背景としては、労働者の為に大量にコストをできるだけ抑えた住宅が急速に必要でした。そこで規格型の角ログを使用した住宅が設計され、一斉に建設されました。 

基本は4戸1棟で、それぞれ各自の庭があり、家庭菜園や植栽などを自由に楽しめます。

当時は畑が主で食料を確保することが目的でした。 

ヘルシンキ市が所有者で、実は50年代にすべて解体してコンクリート住宅を新築する案がありました。しかしながら、多くの人々が反対し最終的には保存へ方針転換しました。 

1970年代に第一次の大規模リノベーションが行われ、現在第二次リノベーションの時期になります。先日ちょうどタイミングよく、地下工事現場を見学できたので紹介します。


根太など腐った部材は交換します。ここは地下の高さが1.5mほどありますが、1m以下の住宅もあります。




これは地下と1階部分です。外観から見るとログハウスであることはわかりませんが、内部側から見ると構造がよくわかります。

できるだけ当時のまま残す


これはほぼリノベーションが終了した住宅です。

まず外観は全く変更できません。外壁の色は当時と同じ色に塗られます。


これは当時から残る、タイル張りの薪ストーブです。70年代のリノベーション時に各部屋にパネルヒーターを導入したので暖房としては必要ありませんが、各戸につき1つは残しています。煙突がありきちんと補修しているので実際に使用できます。 

また電気配線はすべて新規交換しましたが、スイッチプレートは昔とできるだけ近いデザインを使用します。換気も機械換気ではありません。 

工事に関わる方達の、できるだけ100年前の状態を保存しているという熱意が伝わってきました。今回のエリア全体の設計を含めたリノベーション総費用は約14,000,000ユーロ(約18億円)だそうです。

 

次回はフィンランドの夏には欠かせない、別荘サマーコテージライフを紹介します。お楽しみに。


【写真】アアルトアトリエ photo:Sami Heikinheimo


 
大村 裕子
Leppänen Architects

フィンランド、ヘルシンキ在住。一級建築士。 1996年北海道大学工学部建築工学科卒業。スウェーデンハウス株式会社で16年設計に携わる。主に北海道、千葉、東京にて202邸の注文住宅、別荘、店舗等を設計。 その後スウェーデン、フィンランドにて設計事務所にて住宅を設計。フィンランドの北欧建築視察専門の旅行会社を経て、現在はフィンランドの設計事務所Leppänen Architectsに在籍。

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