長期耐用の目
全国の工務店が、国産材を使って木造住宅を建てることは、日本の森林を考えると大きな環境貢献に値すると書いてきました。温室効果ガス排出量を、実質ゼロにするためには森林の吸収量を増やすことも大事です。
さらに、山林に広がった幹や枝が、住宅街の柱や梁となっていると想像すると、あらためて住宅は第2の森と思えます。残念ながら生長することはありませんので、より環境に貢献するためには長期に活用することです。
ですから、住宅は単なる優良であるだけではなく、長期優良であることが求められます。もちろん、それが国の制度としても推進されています。
たとえば省エネルギー住宅も、長い期間で積算するからこそ価値があります。
どんなに高断熱性能の優良な家にしても、冷暖房は季節の中でも一時的なものであり日本が温暖であることも含め、1年中使う照明・動力・給湯などに比べると、消費するエネルギー量は決して多くありません。その上、断熱性能だけによる貢献は、さらに限られています。
それでも、30年〜50年使うことを考えれば、環境貢献できることは間違いないでしょう。このことも、これまで書いてきました。
しかし、長期耐用の目で見ると、今の性能だけで優良度を比べることも無意味のように思えてきます。
たとえば、時が経てば技術革新も進みます。エアコンの性能が向上するのはもちろん、新しい断熱方法が開発されるかも知れません。塗料ひとつで熱が逃げなくなれば、住宅を高断熱にすることも簡単になる可能性があります。
同じように、第2の森としての木造住宅を長期耐用の目で見ると、不合理に思えることはたくさんありそうです。
地震に強い家
住宅の性能で、省エネルギー性能と並べられるのが耐震性能です。
国民の命を守るためにも、ごく稀な地震にも倒壊しない耐震等級1の基準が設定され、その強度の1.5倍を達成すると耐震等級3の住宅となります。
熊本地震のように、連続した強い地震があることや、倒壊から免れても被災後の避難生活を送らなくても良いことを考えれば、耐震等級3を標準的にすることは必然のように思えます。もともと地震列島ともいわれる日本では、耐震性を高めないで長期耐用できる住宅は考えられません。
そこで、木造2階建てにおける四号建築物特例を廃止して、3階建て以上で実施されている許容応力度計算を必須とする意見も取り沙汰されます。
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