ともこ@住宅ライターです。今回は「APWフォーラム2019大阪会場」で行われた、松尾和也さんによる講演を前編・後編でレポートします。
松尾さんは今回、高性能住宅が前提となりつつある今と、その必要性を説明するツールの進化について語られています。
松尾さんは「今までの講演とは、ほとんど違う話をしてみようと思いますので、最後までどうぞお付き合いください」ということで、講演レポート前編のスタートです!
一般社団法人 パッシブハウス・ジャパン
理事 松尾 和也 氏
1975年 兵庫県出身1998年 九州大学工学部建築学科卒業(熱環境工学専攻)
現在、株式会社 松尾設計室 代表取締役、JIA登録一級建築士 設計活動の他、「日経アーキテクチュア」「建築知識」「新建ハウジング」等の専門誌の執筆活動や「断熱」「省エネ」に関する講演を行っており、受講した設計事務所、工務店は延べ5,000社を超える。著書に「ホントは安いエコハウス」、「あたらしい家づくりの教科書」がある。
適切な判断をするためのデータ
関西人らしく「一番チャラいやつからいきます」と松尾さんは笑いを取ります。
この画像を見て、松尾さんは「この人の寒さを改善する方法に、マフラーを巻く、ズボンを履く、どちらがいいと思いますか?」と問いかけます。
それに対して会場のほとんどの人は、ズボンを履くという改善方法を選びました。次は「工務店で建てた家を、200万円の予算で断熱改修しましょうとなったら、どう予算を割り振りますか?」と松尾さん。ほとんどの人は、「んーどういう割り振りをしようかな」となりそうです。
1つ目の質問は、さほど考えなくてもすぐ分かりますよね。それは、人間の皮膚には、温点・冷点という温度センサーが皮膚全体に埋め込まれており、生きてきた分だけの温度データが脳に入っているからのようです。なので、ズボンを履くという答えを導き出すのは簡単な話でした。
ところが、断熱改修の予算の割り振りとなると、フリーズしてしまう…なぜでしょうか。
「実際に、Q値やUA値の計算をしたり、C値の測定をしたり、温度計を設置してデータを取った経験がある人。ほとんどいないのではないでしょうか」と松尾さん。
いくらプロであっても、そもそも温度データを持っていない場合、「断熱改修の予算はどこから割り振ったらいいのだろう」となるわけですね。
松尾さんは、これまで全国各地の工務店へ出向き、多くの現場を見学されてこられたそうですが、ここでいう、「ズボンを履かずにマフラーを巻いてしまっている」ような断熱改修の例をたくさん見てきたそうです。
「つまり、計算や実測をして頭にデータを入れないことには、適切な判断ができないんです」と松尾さん。いかにデータを収集するのが重要であるかを説明されています。
なぜこういったデータがここまで重要なのでしょうか。続けていきましょう。
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