◆台風・豪雨の屋根被害が拡大
◆2021年度から新たな補助制度がスタート
国土交通省は、2021年度から新たに屋根の耐風診断、改修等に対して補助を行う「屋根の耐風診断および耐風改修に関する事業」をスタートした。支援制度を設けることで、既存住宅の耐風改修を促すことが目的だ。
近年、巨大化、頻発化する台風や豪雨などにより住宅の屋根の被害が拡大している。例えば、2019年の房総半島台風(台風15号)では、関東地方南部を中心に記録的な暴風、暴雨が襲い住宅被害が拡大した。特に被害が大きかった千葉県では全壊が314棟、半壊が3652棟、一部損壊が6万1104棟に及んだ。
国土技術政策総合研究所と(独)建築研究所が行った現地調査では、飛散・脱落といった被害のあった屋根の8割は瓦屋根であり、また、飛来物の被害が多数発生したことなどが判明した。瓦屋根の飛散・脱落は、現行の告示基準で緊結対象となっていない部分で特に多く発生した。その一方で、すべての瓦を緊結するガイドライン工法の瓦屋根は脱落による被害が 少なかったことが明らかになっている。
ガイドライン工法とは、2001年に(独)建築研究所、全日本瓦工事業連盟、全国陶器瓦工業組合連合会、全国厚型スレート組合連合会が共同で科学的実験・技術データをベースに確立した瓦屋根の施工方法。耐震性・耐風性の高い緊結方法などを示したもの。国土交通省は、2019年房総半島台風による住宅の屋根被害を踏まえて屋根ふき材に対する強風対策を強化し、2022年1月からガイドラ イン工法を建築基準法の告示基準に位置付け、新築時の全ての建築物に義務付けることにした。
既存住宅は義務付けの対象外だが、新たに支援制度を設けることで既存住宅の屋根の耐風改修も促したい考え。耐風性能が十分ではないおそれのある既存住宅・建築物の屋根の耐風性能の診断及び脱落の危険性があると判断された屋根の改修に必要な費用の一部を補助し、安全に生活できる住宅の確保を支援する。
人口集中地区や、地方公共団体が地域防災計画等で指定する区域などに建つ住宅、建築物が対象。屋根の耐風診断については、1棟あたり3万1500円を上限に国と地方で診断費の3分の2を補助。2022年1月施行の建築基準法の告示に適合しているかを、かわらぶき技能士や瓦屋根工事技師などが診断する。
屋根の耐風改修については、告示基準に適合しない屋根から、所要の耐風性能を有する屋根にふき替える工事費用の23%を国と地方が補助。2万4000円に屋根面積(㎡)を乗じた額 (1棟あたり240万円)が上限となる。
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YKK AP 株式会社 発行「メディアレポート 2021.05」
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