◆省エネ向上・再エネ拡大でロードマップ
◆25年度に省エネ基準義務化、30年度にはZEHレベルへ
国土交通省、経済産業省、環境省の3省が連携して設置した「脱炭素に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」が最終とりまとめを公表、2050年カーボンニュートラルの実現に向けたロードマップが明らかになった。
ロードマップでは、「省エネの徹底」と「再生可能エネルギーの導入拡大」などで、2030年に「新築された住宅・建築物についてZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能が確保されているとともに、新築戸建住宅の6割において太陽光発電設備が導入されていること」、また、2050年に「ストック平均でZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能が確保されているとともに、その導入が合理的な住宅・建築物における太陽光発電設備等の再生可能エネルギーの導入が一般的となること」という目標を掲げた。
「省エネの徹底」では、2025年度に住宅で省エネ基準の適合義務化を図る。そこに向けて、2022年度には住宅関連の補助制度で、2023年度にはフラット35で省エネ基準の適合を要件化する。その一方で、未習熟な事業者の断熱施工の実施訓練を含めた技術力の向上に向けた取り組みにも着手する。
適合が義務化される省エネ基準は現行のものであるが、その引き上げも行う。建築物省エネ法の誘導基準への適合率が8割を超えた段階、遅くとも2030年度までには省エネ基準をZEH基準(強化外皮基準およびBEI=0.8)に引き上げる。こうした対策を通じて、2050年度までにストック平均でZEH水準の省エネ性能の確保を目指す。
一方で、ZEHレベルの住宅の拡大も図る。2022年度に誘導基準、低炭素建築物、長期優良住宅の認定基準をZEH基準へと一段階引き上げる。
さらに2025年度には注文住宅、建売戸建住宅も、賃貸アパートにおいてトップランナー基準を見直し、注文住宅では強化外皮基準およびBEI0.75、それ以外の住宅では強化外皮基準およびBEI=0.8への適合を求める(実施目標は2027年度)。
「再生可能エネルギーの導入拡大」に関しては、2030年度までの新築戸建住宅6割に太陽光発電導入という目標に向け、2022年度から官民をあげて太陽光発電の導入促進に向けた消費者への情報提供を強化し、ZEHやLCCM住宅などの普及拡大に向けた支援などを通じて設置を促していくとした。なお、住宅への太陽光発電の設置義務化についても議論が行われたが、とりまとめでは「選択肢の一つとする」という表現にとどまった。
このロードマップにより、2030年、2050年に向けた行政施策の大きな方向性がまとまった。今後は、その実現に向けて具体的な施策のなかに落とし込まれていくことになる。目前の大きなトピックは「2025年度省エネ基準への適合義務化」であるが、すぐにその基準はZEHレベルへと引き上げられる。また、2022年度にはさまざまな住宅補助制度で省エネ基準への適合が求められることになる。
脱炭素社会の実現に向け、住宅の省エネ性向上は待ったなしとなっており、住宅事業者にはその対応が急務となっている。
※BEIとは、設計一次エネルギー消費量を基準一次エネルギー消費量で除した値。一次エネルギー消費量基準適合はBEI≦1.0 。BEI=0.8とは基準一次エネル ギー消費量より△20%省エネとなる。
[ご紹介]
YKK AP 株式会社 発行「メディアレポート 2021.12」
メディアレポート(2021.12)のPDFを閲覧したい方はコチラから
また、メディアレポートのバックナンバー一覧はコチラから