当連載は、断熱改修することで冬の寒さ・夏の暑さが軽減されることを通じて、「どのように暮らしの質の向上が図られるのか」、さらには「現在、世界的に目指している脱炭素社会への転換についてはどうなのか」という点に重点を置き、各回でテーマを決め、その内容に沿って前述のポイントを掘り下げていく、みかんぐみ共同代表/エネルギーまちづくり社 代表取締役である竹内昌義氏の連載記事です。
前回の記事では、断熱改修は住宅だけではなく、営業施設や公共施設にも必要だという話をして、その例として「学校への断熱改修」についてお伝えしました。
そして、今回は、岩手県紫波町にある日本初の本格的エコタウン「オガールタウン」にまつわる話をご紹介します。
エコハウスやエコタウンの建設には理想と現実のギャップのようなものがあり、意図は理解できるし理想的かもしれないけれど、手間やお金がかかるし、本当にそこまでの性能が必要なのか? 建てても高価格では売れるとは思えない、といった懸念のほうが大きく、やっぱり現実的じゃないよね、となりがちです。
その点、ここオガールタウンは、その「ありがち」を見事にひっくり返した実例の1つです。ぜひご覧ください。
◎当記事の目次
1、 オガールタウンとは
2、 オガールタウンに似合う家
3、 オガールタウン、エコハウスの実際
4、 なぜエコハウス建築が難しいのか
5、 エコハウスの未来のために
◆オガールタウンとは
日本初の本格的エコタウンとして2013年から分譲がスタートしたオガールタウンは、紫波中央駅近くにある複合商業施設である「オガール」の一角にある住宅地です。町有地だった土地を開発、役場や体育館、図書館、クリニック、飲食店に宿泊施設、エネルギーステーションなどがあり、駅も近い好環境にある「オガール」は、環境や景観への配慮、財政負担を抑えながらの公民連携による町づくりの成功例として注目されています。
57区画の住宅街、オガールタウンは2013年に分譲が開始しましたが、プロジェクト開始当初は、全国に数ある分譲住宅地と同じくハウスメーカーに建築を依頼する計画もありました。
しかし、オガールのコンセプトでもある「都市と農村の暮らしを楽しむ」「環境や景観に配慮した町(家)づくり」を考えたとき、「この町に家づくりに使える木があって、家を建てる技術を持った工務店もあるのに、なぜ縁もゆかりもないハウスメーカーに建築を依頼するのか?」「それって全然、循環型社会じゃないよね、」「違うアプローチがあるのでは?」という意見が挙がったことから、紫波町から声がかかり計画に参加することになりました。
ミッションは、地域の材を使って地域の工務店に建ててもらって「地域にお金が落ちる仕組みを作ること」であり、当然の使命として「魅力ある家、住宅地づくりをすること」となります。
では、魅力的な家とはどんなものだろう?……まずは、そんなことから話し合いが始まりました。
◆オガールタウンに似合う家
岩手県の中部に位置する紫波町は内陸性の寒暖差の激しい気候で、冬の平均気温はマイナス2℃ほどです。十分な断熱性能を確保したエコハウスが最適の土地で、以前に紹介した山形エコハウスくらいのレベルの家を作れたら理想的だと考えました。
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