住宅デザインを語ろうとするのは、とても難しいものです。その難題の住宅デザインについて、書いてみたいと思いました。できれば住宅の担い手である地域工務店の経営を観点にして住宅デザインを考え、工務店にもできるテクニックとしてまとめてみたいと思います。(前回記事はこちら)
◆政治というロケーション
工務店が売れるためのデザインは、建築家の名を必要とせず、流行り廃りのデザイナー住宅でもないと書いてきました。
そして、ゲニウス・ロキ的な「Classic」デザインの中にこそ答えがあると考えます。
じつはそのゲニウス・ロキ的なデザインには、政治も大きく関わっています。
つまり国の政策によって、住宅のデザインが変わってくるということです。
そのもっとも代表的な事例は、古い京都の街並みです。
建物にかかる税金が、間口の広さによって決められると、間口を狭くして奥行きの長い町家のつくりが一般的になります。軒が連なると、まさに京都の街並みになります。
京都だけではなく、いわゆる宿場町などは、どこでも似たデザインになります。
それは世界中のどの国にも見られます。ヨーロッパの古い木構造の家であるコロンバージュも、1階の面積で税金を決められるので、2階が張りだすように建てられます。
それが家並みとなり、子孫が倣うことによって、その地のロケーションになります。
また、現代の日本でも同じで、近年フィードインタリフが施行されると、太陽光発電住宅が増え、あっという間に片流れの家ばかりが建つようになりました。
さらに省エネ住宅に補助金が出されるようになると、その性能を狙って熱損失の大きい窓を避けることになります。
それを全国の工務店が手掛けるのですから、一気に広がって、私たちが知っている日本的な家のデザインは少なくなりつつあります。
加えて、職人不足をカバーするように工業化された部材が増えていることも住宅のデザインに影響します。
その意味では、経済というロケーションも住宅のデザインに関わります。
はたして経済的ロケーションは、「Classic」デザインになるのでしょうか。
重ね重ね、デザインというテーマは単純ではありません。
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