▼はじめに
2021年11月2日、富山県黒部市で、各専門分野の有識者が参加して座談会が開催されました。テーマは「パッシブタウン -省エネ・創エネのその先へ カーボンニュートラルなまちづくりへの挑戦- 」です。当記事は、その座談会の内容を一部切り取ってご紹介する記事となっております。
連載1本目となる記事では座談会全体について紹介させていただきました。そして、連載2本目以降の記事では「パネリストVoice」と題して、座談会にパネリストとして登壇いただいた有識者の方々のコメントを記事化してお届けします。今回は、富山県知事政策局長の三牧純一郎さんのコメントです。
※座談会のポイントをまとめた冊子(PDF)はページ最下部にて閲覧いただくことが可能です
▼富山県の特性を活かしたグリーンイノベーションを支援
三牧純一郎さん(富山県知事政策局長)
Q&A
富山県の政策を踏まえパッシブタウンをどう評価されますか。分散型エネルギーの確立や県産木材の利活用についてはどうでしょうか
エネルギー先進県 富山の現状
豊富な水資源に象徴されるように、雄大な自然に囲まれた富山県は、昔から環境に配慮した「エネルギー先進県」であり続けてきました。
事実、明治末期には急流河川を活かした水力発電所がすでに整備されていましたし、現在も再生可能エネルギーが電力発電量のおよそ6割を占めています。
一方で、FIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度 Feed-in Tariff)の導入状況を調査してみると、普及は思ったより進展しておらず、残念ながら都道府県ごとの比較では下から数えた方が早いという現状があります。大きな課題として横たわっているのは、本日多くの識者の皆さまがふれているように、雪の影響で平均日射量も少ない冬季は太陽光パネルの稼働率が低くなるという課題があるからでしょう。加えて、電気代そのものが比較的安価なため、無理に導入しなくてもいいだろうという風潮もあるのではないかと推察しています。
私共は2014年度に「富山県再生可能エネルギービジョン」を策定しましたが、2021年がちょうど最終の目標年度にあたります。まずは節目となるこの時期にできる限り課題を洗い出すことが大切です。その上で、新しいビジョンにおいては、富山県の電力の多様性を広げ、自給率を高める取り組みにつなぐことができればと考えています。
今後のパッシブタウンに大いに期待
「再生可能エネルギーの導入促進によるエネルギーの多様化」「エネルギーの効率的な活用の推進」「エネルギー関連技術の研究開発などグリーンイノベーションの加速化」といったところが、私たちが掲げる重点施策です。
これらの考え方をさらに展開しまして、ぜひ「地域特性を活かした分散型エネルギープロジェクト」を確立する段階までのご支援ができればと考えています。たとえば黒部市の「でんき宇奈月プロジェクト」や、南砺市の「小瀬谷小水力発電所」なども地域に根差した取り組みといえるかと思います。こうした様々な試みに光を当てながら、「地域エネルギー利用向上」のみならず、「再生可能エネルギーを活用した観光」や「産業振興等地域活性化」にも寄与することができればという想いでおります。
パッシブタウンの取り組みは、木材をめぐる地域の産業振興や、水素と太陽光発電を組み合わせた創エネの試みなど、大変画期的かつ多面的な側面を持ったプロジェクトといえると思います。今後もよりいっそう情報を共有させていただき、私も地域のためにできる限りのご支援をさせていただきたいと考えています。
※当記事に添付した冊子PDFより抜粋
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