こちらの連載では、現場監督がすぐに役立てることのできる木造住宅の品質管理ノウハウをご紹介します。全12回の連載では「構造躯体工事」にテーマ絞り、役割と目的、判断基準、現場事例、回避方法、対処方法に分けて解説を行います。
連載第3回目となる今回は、土台据付施工後、床下地材施工前の「アンカーボルトが土台側面から基準以上離れている」について解説します。
役割と目的
アンカーボルト
▶ 土台と緊結することで、木構造の力を基礎に正しく伝えます。
アンカーボルトの位置が土台に対して正しい位置にないと、土台が破断したり土台が浮き上がることで基礎と土台がずれ、建物荷重や構造体からの力を基礎に伝達することが出来なくなります。
チェック基準
< アンカーボルトの寄り(平面図)>
土台側面からの距離とは、図のように土台見付面の端からの離隔距離のことを言います。 この離隔距離が基準以上確保されていないと、地震などの横揺れが起きた場合に土台が破断してしまう危険性があります。
< アンカーボルトの寄り(断面図)>
断面で見ると隔離距離は、この位置になります。
建築基準法では、「土台と基礎が緊結されている」という規定はありますが、それ以外のアンカーボルトの設置基準はありません。従って今回の項目は「自社基準」となります。法律での規定ではないので違法になるわけではありませんが、メンテナンスや維持管理で不具合の発生原因になる可能性が高いので注意が必要な項目です。
不備事例
ケース1 | アンカーボルトの型枠への固定が不十分 |
不備要因
● アンカーボルトの固定が不十分であり、コンクリート打設時に動いた。
● アンカーボルトが立上り鉄筋に干渉し適切な位置に設置できない。
ケース2 | 基礎伏図とプレカット図の不整合 |
不備要因
● 基礎伏図とプレカット図の整合性が取れておらず、土台と基礎の位置がずれた。
● 基礎立上りの位置が正確ではなかった。
回避方法 不備を起こさないようにする回避方法(参考例)
①プレカット図とアンカー位置の照合を行う。
②コンクリート打設時に移動しないよう専用金物にてアンカーボルトを型枠に固定する。
③偏心アンカーボルトを使用し、基礎立上り中心にアンカーを設置する。
④アンカーボルトが基礎立上り中心になるように立上り鉄筋の位置を設計で考慮しておく。
対処方法 不備が起こってしまった場合の対処方法(参考例)
①土台側面に添木・金物等を設置して補強する。
②一部の基礎を解体・再施工し、正しい位置にアンカーボルトを設置する。
③工事監理者に確認を行い、土台と基礎を緊結金物や後施工アンカーを用いて固定する。
作業の難易度とリスクを考慮して、最適な対処方法を選定ください。
建築関係プロユーザー対象の会員制サイトです。
1968年2月生まれ。1990年大阪学院大学経済学部卒業後、小堀住研(株)(現:(株)ヤマダホームズ)、 そして建材商社を経て、2006年に(株)NEXT STAGEを創業。 民間でいち早く第三者検査事業をスタートさせ関西を中心に普及させてきたが、本質的な技術者の人財化や 品質向上への仕組みにギャップを感じ、2013年には、業界初の施工品質監査ナレッジマネジメント体系を業界に提唱し、 「監査」という独自の手法を用いたPDCAサービスを展開する。 現在では全国8拠点、800社を超えるビルダーがサービスを導入し、2020年には建築技術に特化した 学習環境プラットフォーム事業を本格化させ、2021年8月より、これまで蓄積してきたテクニカルビックデータを駆使し、 誰もが参入できなかったデータ&アナリティクス事業を実現させ、これからの住宅価値を変えるエッセンシャルな建設DXを 推進する。