
現状、戸建て住宅で断熱計画を考える場合は冬をメインに設計していることが多いと思いますが、今後は温暖化がますます進み温度の上昇が見込まれることが分かっています。これを踏まえると、冬だけに目を向けるのではなく、今後の温度上昇も意識した断熱計画が重要になってくると考えられます。本連載では、その将来性を考慮した設計についての検討を行います。
高断熱住宅が着目されるようになった原因
日本の戸建て住宅は、冬において屋内での寒さが厳しく、何とかしたいと言う潜在的な需要があったことで、高断熱化が徐々に進みはじめてきました。とはいえ、2025年の4月になってやっと建築基準法で断熱計画および施工が義務化されるようになったのが現状です。このような背景から、これまでは断熱に対する意識が非常に低かったことは否めないと思います。
恐らくこれは、日本に四季があり、ずっと寒いわけではなく、モノが無い時代になんとか寒さを凌いできたことが、文化として根付いてきたせいではないかと推察しています。例えば、昔の一般的な日本人女性は米俵(1俵 約60kg)を担げるほどに筋力が発達していたと言われています。移動も常に徒歩でした。ここから、現代の日本人よりも基礎的な体温や代謝量が高かったと想像されます。ですので、住居における断熱に頼らずともそれなりに冬を凌いできたのでしょう。
時代が移り変わり、現代ではデスクワークと言ったあまり筋力の必要がない仕事が増え、昔に比べると確実に基礎的な代謝量は落ちていることでしょう。このことが寒さの身体への影響を相対的に大きくしていると言えます。そして、コロナ以降は移動が減り(そうでない人も多いと思いますが)、これから先の未来においてはますますこの傾向が大きくなると思います。
このような背景から、時代的に断熱の重要性が高くなってきたことを受けて、高断熱住宅が普及してきました。これは、ある意味で時代の流れにおいて必須の出来事だったのだと後の教科書では語られることになると思います。
ここまでが、これまでの高断熱住宅が普及してきた大まかな理由と考えられます。ここからは、これから先の未来について考えていきたいと思います。
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