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2023/01/31 08:00 - No.1278


第5回 逆説の構造計算⑤


暗算でできる構造計算~売れる工務店・デザイナーのための逆説の構造計算概論
石川 新治

2023/01/31 08:00 - No.1278

 


構造計算って専門的でとっつきにくいと思っていませんか。

物理・数学が苦手な人でも、逆転の発想でルールと結果を見れば、構造計算の中身はわからなくても、暗算で耐震等級3を標準化できるようになります。その上、地域工務店が売れるためのデザイン性を向上し、お客さまの要望も受け入れ、さらにコストダウンも見えてきます。

2025年に四号建築物が無くなれば、いよいよ構造計算に取り組む必要もあります。
難しいと思っていた構造計算が算数レベルでできる逆説の構造概論を連載します。


◆自転車の乗り方

計画している住宅の面積が分かれば、あっという間に必要な耐力壁の設置数がわかりバランスよく配置するだけ。それだけで、後は構造計算書がついてくるということ。前回までに話してきたことは、そんな簡単な話でした。

重ねた説明ですが、許容応力度計算はすべての部材にかかる力と、その部材に許容される応力の確認をしている計算ですから、いざとなればより強い材料に変えるか、径や背を大きくすれば解決できるものです。

それ以外の計算は、耐力壁の量とバランスなどを確認しています。この2つの概要をつかんでしまえば難しいことではないはずです。

「10で割って、交互に配置していけば良いってことでしょう。話は簡単だからできそうな気もするけど、現実の間取りではどうなのですかねぇ。」

そうですね。「10で割る」みたいな数式的なことは、誰でもすぐにできるようになるものですが、バランスを取るということは簡単でもあり、また難しいことなのかもしれません。

たとえば普通に歩いていることも微妙なバランスを取りながらしていることですが、難しいと意識している人はほとんどいないと思います。
同じように、自転車に乗るコツを言葉で教えるとしたらどのように説明しますか?

「いや、別に……身体が覚えているだけで、自転車の乗り方を言葉で教えるのは……」

じつは簡単なことで、「倒れそうな方向にハンドルを切れ!」です。
でも、倒れそうになると反射的に倒れないように反対側に行こうとしてしまいます。その体感が身についた時に、何も考えなくても自転車に乗れるようになります。



ホンダが開発した初めての二足歩行ロボットも、倒れないようにするのではなく、進もうとする方向に倒れ込むというアルゴリズムによってプログラムが完成したのも有名な話です。

「そうか、倒れ込むから倒れないっていうのも、なんか逆説的ですね。」

その大事な耐力壁のバランスを取りながら配置することができるようになれば、その後の工程を一気に進めることができるようになります。


◆耐力壁が配置できると……

耐力壁の配置はそのまま耐力壁線となりますので、当然、外周壁は耐力壁線になります。住宅程度の小規模建築物では外周壁以外の耐力壁線は、できれば1~2本程度に収めたいところではないでしょうか。

前にもお話しした耐力壁のヒエラルキーを考えれば、それもできますが、耐力壁を増やせば増やすほど耐力壁線も複雑になります。複雑になった耐力壁線では、直感的なバランスの取り方も簡単ではありません。そしてバランスは崩れてゆきます。

「確かに壁線が単純なら、対称になっていることと数をチェックすればバランスもわかりそうですね。」

こうして耐力壁線が整理できると、じつはそれがおおよその基礎伏図になります。単純に考えれば、耐力壁にもなっていないようなところに基礎を作る必要はありませんよね。耐力壁以外は、大引で十分ではないですか?

「そうですね。でも、うちの基礎は、なんか結構複雑ですよ。」

基礎を見ただけで、なんとなく1階の間取りがわかるような現場ってよく見かけますよね。脱炭素やSDGsへの取組みがこれからさらに進めば、このような罪作りな基礎は恥ずかしくなる時代が来るのではないでしょうか。このことはまた後で詳しくお話しすることにします。

でも残念ながら、正確には基礎伏図は耐力壁線を整理しただけではできません。耐力壁線は最大8m、あるいは12mの壁線間距離が可能ですが、

 
石川 新治
一社)住まい文化研究会

明治大学工学部建築学科卒業。1981年ミサワホーム株式会社に入社。技術部設計から販社営業を経て、宣伝部マネージャーとして企画広報活動全般を経験。2007年、MISAWAinternational株式会社にて200年住宅「HABITA」を展開する。住宅の工法、技術、営業、マーケティング、商品化、デザイン、広報、住まい文化など、全般に精通。現在、一般社団法人住まい文化研究会代表理事として、機関紙「おうちのはなし」を発行し、全国の地域工務店の活動を支援している。主な著作に、「おうちのはなし」(経済界)、「地震に強い家づくりの教科書」(ダイアプレス)がある。

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