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2020/07/21 08:37 - No.835


第3回 接合部の重要性(その1)


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動画でわかる!木造住宅の耐震性能
中川 貴文

2020/07/21 08:37 - No.835

 


(前回記事はこちら


木造住宅の耐震補強の際に柱の上下端の接合部(柱脚柱頭接合部)を金物で基礎や土台に接合することが重要であると言われています。

新築の木造住宅でも部位によってホールダウン金物などによる接合が法令(いわゆるN値計算)で義務付けられています。接合部は木造住宅の耐震性能にどれほど影響を与えるのでしょうか?

今回は接合部について解説します。


【接合部設計の基本】

地震による力は水平方向に作用しますが、地震で家が倒れないように所定量の耐力壁を設置するのが木造の耐震設計の基本です。

耐力壁が強ければ壁倍率が高くなり壁の量を減らすことができます。しかし、あまり強すぎると周辺の部材、特に接合部に影響を及ぼします。

下の図のように壁が弱いと壁がひし形に変形(せん断変形)して行きますが、壁が強いと壁を回転しようとする力が強くなります(豆腐を横から押したときとブロックを横から押したときを想像してみて下さい)。

壁が強ければ強いほど回転する力が大きくなり接合部が弱いと破壊してしまいます。回転して転倒することも地震被害拡大に繋がります。

回転を抑えるためには柱の端部の接合部を強くする必要があります。

これが接合部の耐震設計の基本です。


【地震被害と接合部仕様】

接合部を設計する方法としてN値計算が広く普及していますが、N値計算が考案されたのは2000年の建築基準法改正のタイミングです。

それまでは接合部に対して明確な基準はありませんでした。

次のグラフは前回紹介した熊本地震での益城町中心部の木造住宅の被害状況とその要因を調査したものです。


2016年熊本地震における益城町中心部の木造住宅の被害(※1)


1981年以降に建てられた建物は新耐震基準と呼ばれ、現行の必要壁量は満たしているのですが、左のグラフによると2000年以前の新耐震(真ん中の棒)では9%が倒壊していることが分かります。

右のグラフは倒壊した新耐震の木造住宅の倒壊原因を調査したものです。倒壊した建物の70%が筋かい端部や柱脚柱頭接合部の仕様が釘打ちのみで現在の耐震基準を満たしていなかったことが分かります。

接合部の設計が木造住宅の耐震性能に大きく影響をあたえること被害調査結果によって明らかになっています。


【動画でわかる接合部の重要性】

耐震シミュレーションソフト「wallstat」で接合部の重要性を検証してみます。

次に示す動画は旧耐震の壁量が足りない木造住宅をモデル化して、1995年兵庫県南部地震で記録された地震動で揺らしたものです。


壁量が足りていないため1階がつぶれ、倒壊してしまうことが分かります。

それでは壁を増やしたらどうなるでしょう。

壁量を新耐震基準まで耐震補強した解析モデルの動画です(接合部は補強していません)。


壁は増えたはずですが倒壊してしまいます。

1階の柱脚部分に注目していただくと、壁よりも先に接合部が破壊して柱が引き抜けて、倒壊に至っていることが分かります。

壁の色は黄色(小破)→オレンジ(大破)→赤(破壊)とダメージの大きさを示していますが、壁は黄色(小破)のまま倒壊しているので、壁が本来の性能を発揮できないまま倒壊したことも分かります。

では接合部も補強して2000年の耐震基準に適合させた解析モデルではどうでしょうか?


接合部が有効に働いて柱が抜けることがなく、壁が本来の性能を発揮してダメージを受けて赤くなっていますが、建物全体は倒壊しないことが分かります。

同じ壁量でも接合部の仕様の違いが耐震性に大きな影響を与えることがシミュレーションを通して理解いただけたかと思います。

新築の設計ではもちろん、既存建物の耐震改修でも接合部の設計は非常に重要です。

次回は接合部の設計についてもう少し掘り下げて解説します。


(参考)新耐震の壁量を満足していて接合部仕様が現行基準に満たない木造住宅(1981年以降2000年以前に建設された木造住宅)に対して耐震性能を検証する方法が公開されています(※2)。

【参考文献】
※1「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会報告書」を元に作成
※2 日本建築防災協会 新耐震木造住宅検証法 WEBサイト(2020年7月1日参照)
  http://www.kenchiku-bosai.or.jp/seismic-2



 
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中川 貴文さん
京都大学生存圏研究所

2003年東京大学大学院修了後、民間企業を経て、2005年より国土交通省国土技術政策総合研究所及び建築研究所にて木造の耐震の研究に従事。2010年に「wallstat」の無償公開を開始。2018年より現職。2019年文部科学大臣表彰。博士(工学・農学)。

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