フィンランドのヘルシンキ在住の大村裕子です。
フィンランドの建築について住宅を中心に、建築士の視点でレポートしていきます。
ハウジングフェアとは
ハウジングフェアとは毎年フィンランド各地で場所を替えて開催される、大規模な住宅博覧会です。日本の住宅展示場に似ているのですが一般公開は夏の一か月のみで、閉会後すぐに移り住み実際の住宅地となります。つまりほとんどの住宅で、すでに住む家族が決まっています。
住宅の展示だけでなくインテリア、住宅設備、家具、ガーデニングなどのブースもあります。常設の住宅展示場がないフィンランドでは、一度に多くの住宅や新しい試みを見学する絶好のチャンスでもあります。フィンランドでは大人の98%が知っているという人気のイベントの1つです。今年で第47回目となります。
またこのイベントは、ハウジングフェアフィンランドNPO、市町村、ビルダーやディベロッパーの3者が協力して行われています。何もない森に、道路や交通を整備するところから始まります。
http://www.asuntomessut.fi/ 公式HP フィンランド語
2017年は、7月14日から8月13日までヘルシンキから車で約3時間のミッケリにて開催されていて、30戸の戸建住宅が見学できます。2018年はポリ、2019年はコウボラ、2020年はトゥースラで開催されます。今まで3都市見学しましたが、それぞれの立地により趣向が変わります。
たとえば2015年開催地ヴァンターはヘルシンキの隣の市で人口も多い為、戸建だけでなく7階建木造住宅もありました。今回のミッケリはそれと比較すると住宅がゆったりと配置され、自然と調和している印象です。
カタログは2種類販売されていて、1冊は技術的な情報中心、1冊はインテリア写真中心と選べるようになっています。なかなか面白いアイディアです。
水辺を楽しむ
フィンランド人は水辺を好みます。一般的にフィンランドに19万個ある湖、海など水辺に面した住宅の価格が高くなります。今回の30戸のうち6戸が、湖に面して建築されています。
この住宅ではバルコニーからサイマー湖を一望できます。
自宅のテラスではバーベキューができるスペースがあり、湖まで直接つながる階段があります。自分のヨットやボートを係留するのでしょう。
プールとガラス張りテラス
フィンランドの夏は6月~8月。といってもヘルシンキの7月平均温度は最高22度、最低12度でかなり涼しいです。ただ緯度が高いため日照時間はとても長く、例えば夏至には朝4時に日の出23時に日の入りですので、長時間日光浴を楽しめます。冬は反対に日照時間が極端に短いため、日光浴はとても貴重なのです。
今回の住宅では、かなりの割合でプールがありました。通常の住宅に取り入れる割合はそれほど多くないように思いますが、短い夏を楽しみたいフィンランド人の憧れといったところでしょうか。展示場ではなく実際に住む住宅とはいえ、かなり仕様は豪華です。
ガラス張りのテラスは北欧でとても人気があります。断熱外になっていて、外部と内部の中間スペースとして活躍します。夏はガラスを開け放して利用し、春先、秋口の肌寒い時期にはガラスを閉めて楽しめます。戸建住宅でも、マンションでもよく見かけます。スウェーデンでも、ガラステラスを増築したいという相談を受けたことがあります。室内が暖房がしっかり効いているため、冬に果物を保存しているケースもありました。
住宅以外のさまざまな展示
この窓は2重になっていて、2枚のガラスの間にスペースがあります。ここにちょっとした工夫があります。外部からの冷たい空気はこの空間にまず入り下に沈みます。その後温まり上昇した空気が室内に入るようになっています。電気は使われていませんが、温度で感知するそうです。新築では熱交換換気があるので窓から換気をする必要がありませんが、これはリフォーム用に使われます。
こちらはサウナとコタです。コタとは小屋のことで、中でバーベキューや食事ができます。
庭先に置くのもよさそうです。
次回も引き続きハウジングフェアにて、最新ログハウス、パッシブハウスなどを紹介します。お楽しみに。