
焦点距離10㎜の超々広角レンズによる撮影事例
前回は建築写真は住宅会社・工務店にとって最も重要な資産であるとお伝えしました。資産である以上、少しでも価値の高いモノとする為に建築写真は少しでも綺麗に格好良く上手く撮る必要があります。
昨今のデジタルツールの発展は目を見張るものが有ります。特に今ではほとんどの方が所有しているスマートフォンですが付属のカメラ機能による撮影はここ数年で格段に機能や性能も向上しています。我々プロフォトグラファーの存在すら脅かすのではないかと危惧してしまいます。
スマートフォンに限らずですが、建築写真の撮影テクニックはおおまかに8つあります。そんな中、スマートフォンでも上手く撮れるテクニックは4つあるのでそれを当シリーズでお伝えしていきます。
今回はその一つ目として「広めの構図で撮影する。」というテクニックです。
広めの構図で撮影する方法は2通りあります。一つ目は少しでも下がった位置から撮影する事です。二つ目は焦点距離の短い広角のレンズを使う事です。
とりわけスマートフォンの場合は広角レンズとまでいかない標準レンズでの焦点距離が使われる事がほとんどですので一つ目の少しでも下がった位置から撮影する事が最も重要なポイントになります。
そこでiPhoneで撮影した悪い撮影事例をまずはご覧ください。
×× iPhoneで撮影した悪い撮影事例 ××
失礼ではありますが一般的に皆さんが撮影するときには上のような感じで撮影していませんか?中にはとても雰囲気の良い感じであったり素晴らしい写真が撮れる事もあるでしょうが偶然を狙っていては無駄な時間を費やすばかりになります。
建築物を撮影する際は通常の場合、その場で足を止めて撮りたい部屋の全部を撮影しようとカメラ自体を下や上に向けて撮影する事がほとんどです。
そこで広めの構図で撮るを実践するには少しでも撮影する立ち位置を見直して、今よりも後ろに下がって撮影する事がポイントとなります。
リビングを撮りたいときにはリビングに立って撮る必要は全くありません。
隣のダイニングやキッチン越しからリビングを向いて少しでも遠くから撮影する事で必然的にさがった立ち位置で撮影する事となり、構図的にも広めの構図となります。
6畳ほどの和室であっても掃き出しのサッシの外に出てそこからスマフォで室内を撮影するなど、少しでも下がって撮影できる場所をみつけるのです。
外観での撮影も同じことが言えます。
比較的外観の場合は見上げて撮る事がほとんどですが見上げて撮影すると上つぼみの写真となりあまり建築写真としては相応しくありません。
それも建物に近付いて撮影する事でそうなってしまうのです。
ではどうしたらよいか?少しでも後ろにさがって撮る事です。
そして建物は常に垂直となる様に意識して撮影し、後でトリミングをする事でより建築写真らしく仕上げるのポイントです。
次の写真がそれらを意識してiPhoneで撮影した良い事例となりますのでご覧下さい。
◎◎ iPhoneで撮影した良い撮影事例 ◎◎
如何でしょうか?同じスマートフォンのカメラで撮影してもかなり良く見えるのではないでしょうか?
また、現在のスマートフォンでの撮影解像度は1000万画素を超えるのが当たり前になってきています。例えばiPhoneは約1200万画素の解像度の撮影が可能です。
1200万画素とはどの位の解像度かと言えば普段見ているハイビジョンテレビの約6画面分の解像度になります。故にiPhoneで撮影した写真を4分の1の大きさにトリミングをしたとしても決してモニター上で見る分には問題の無い解像度であると言えます。
実際、iPhoneで撮影した次の画像を赤枠内でトリミングしても、ご覧のようにWEBサイト上で見る上では全く問題が無く見る事が出来ます。

⇩赤枠内でトリミングした画像


⇩6分の1にトリミングしても約200万画素
以上がiPhoneで撮影する時に少しでも下がった位置から撮る時の方法になります。
参考までに広い構図で撮る為の2つ目の方法である、焦点距離の短いレンズについてお話しします。
主なスマートフォンに使われているカメラの焦点距離は35㎜版換算で約28㎜から24㎜前後のカメラが主流です。建築写真を撮るには少しでもこの焦点距離の小さいレンズを選ぶことをお勧めします。
建築写真を撮影するフォトグラファーは焦点距離10㎜から17㎜前後のレンズを主に使用します。焦点距離が短くなればなるほど広範囲に広く撮影はできますが、写真の周辺の歪やレンズ自体の歪曲収差も大きくなり扱いも難しくなるのが現状です。
しかし、スマートフォンでも最近では広角レンズ付きの機種も発売されたりと益々スマートフォンの進化を感じるこの頃です。次回は2つ目のテクニックである「建築写真に適した8つの構図」のお話をします。
▼ 建築写真家 田岡信樹氏のホームページはこちらから
https://www.kenchiku.photo
第4回 建築写真撮影テクニック!「❸ 正方形のトリミングを活用する」
第5回 建築写真撮影テクニック!「❹撮影時間やその場所の環境等を考慮する」