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2022/03/03 07:30 - No.958


第5回 大らかな暮らしを提案する再販住宅


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戸建性能向上リノベーション ~事例から学ぶ設計ノウハウ
A-PLUG 事務局

2022/03/03 07:30 - No.958

 
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◆はじめに

当連載は「戸建性能向上リノベーション ~事例から学ぶ設計ノウハウ」と題し、実際の施工事例をもとに、専門知識・技術の習得を図ることを目的とした記事となります。

今回は熊本市中心部の住宅地に建つ、築42年の木造住宅のリノベーション事例をご紹介します。


◆施工事例(本文)

築40年を超える木造2階建て住宅を性能向上リノベーション。開放的な間取りをもつ、再販住宅に生まれ変わった。

事業主=銀杏開発株式会社
設計施工=銀杏開発株式会社



熊本市の中心部の住宅地に建つ、築42年の木造住宅のリノベーション事例。買取再販の新しい試みとして、性能向上リノベーションに取り組んだ。

買取再販の場合、顧客の主な関心は間取りやインテリアであり、外部に対する意識は薄い。

そこで、外部には無理に手を入れることはせず、耐震上は不利になる瓦屋根などもそのまま残すことにした。

プランに関しては、ターゲットである30代の2~3人家族を前提として計画した。

ワンルームのLDKを1階に配置し、リビングの南面に大きな開口部を設けた。さらに開口部の先に土間を新設し、外部を積極的に取り込んだ。2階はあえてワンルームにまとめ、子供が巣立った後の使いやすさを意識した。

仕上げ材や設備は汎用的なものを採用した。床材は突板フローリングで、壁と天井は壁紙。キッチンと浴室は汎用的なシステムキッチンとユニットバスだ。

リノベーションに際して、内外ともに仕上げ材を撤去してスケルトン状態にした。その上で既存の状態を調査したところ、基礎は鉄筋コンクリートだったが、一部にひび割れが生じていた。軸組には腐れや蟻害はなかったが、バルコニーに一部腐食が見られた。

既存の外壁は木摺り下地のモルタル外壁であったが、部分的な雨漏りなどを除くと、状態は非常によかった。これらの劣化箇所は補修や交換を行った。


既存の居室の様子。和室が半分以上を占める(左)
既存の外観。古くからの住宅地に建つ(右)


既存の浴室。在来工法でつくられていた(左)
既存のキッチンの様子。LDとは区画されている(右)

解体後の2階の様子。開口部の面積が大きい(左)
解体後の1階の様子。木材の腐食や蟻害は軽微だった(右)


熊本は2016年に熊本地震に見舞われた。

短期間に震度7の地震が2度発生し、多くの建物が倒壊した。例外的に被害が軽微だったのが耐震等級3の住宅であった。この実績をふまえ、この事例でも耐震等級3を目標に耐震改修を行った。

耐力壁に関しては、外周壁に構造用MDFを張り、一部に筋かいを併用した。その上で柱頭柱脚金物を追加して耐震性能を高めた。

耐震上の弱点は開口部の多い1階の南西面。それらの面には耐震フレーム「フレームⅡ」を用いて壁量を満たし、偏心率を是正した。「フレームⅡ」は当初、間口の広い門型を想定していたが、設置箇所の基礎に換気口があり、基礎の耐力が不足するため、ボックス型を用いた。


南面には断熱性の高いAPW430を採用し、大開口を確保

リビングの開放性を高めるためにフレームⅡを用いてコーナーの開口を確保(左)
コーナーの開口部を外部から見たところ(右)


これらの措置により、上部構造評点は1.53に向上した。これは耐震等級3に相当する。


現場発泡ウレタンで断熱気密を確保

断熱改修に際しては、窓に樹脂窓APW430を採用した。ガラスは南面に日射取得型を用い、積極的な日射取得を試みた。南面以外は日射遮蔽型を採用した。

足元の断熱は床断熱とした。基礎断熱材は押出法ポリスチレンフォーム65㎜厚を立ち上がりの内側に張った。床断熱は現場発泡ウレタンを100㎜厚吹き付けた。壁も現場発泡ウレタン100㎜厚を施工した。同じく天井も現場発泡ウレタン200㎜厚を吹き付けた。床の捨て張りと壁の取り合い、柱と捨て張りの周囲など細部の気密化にもこだわった。

天井の断熱も現場発泡ウレタンを用いた(左)
壁の断熱には現場発泡ウレタンを採用。夏の日射の影響を配慮して窓の大きさを絞った(右)

エアコンは天井埋め込み型のアメニティタイプを採用した(左)
枠まわりや既存の木材の欠損部なども現場発泡ウレタンを充填して気密化する(中)
土間部分の気流止めとして現場発泡ウレタンを施工(右)


これらの断熱改修により、既存のUA値1.84W/㎡・Kから0.45W/㎡・Kに向上した。HEAT20のG2に相当する数値だ。

従来の中古住宅の購買層ではなく、新築に代わる選択肢として、新しい市場の開拓を狙った意欲的な事例だ。



施工後(内観写真)


平面図


◆改修後の矩計



【建物概要】
建設地:熊本県熊本市
既存竣工:昭和53年
構造:木造2階建て
延べ床面積:97.371㎡


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