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2022/07/07 07:30 - No.1197


第4回 RoomClipの検索行動をクラスタリングして分かった、5つのユーザーペルソナ


RoomClipで読み解く暮らしのトレンド
水上 淳史

2022/07/07 07:30 - No.1197

 


月間600万人が利用する住生活領域に特化したソーシャルプラットフォーム「RoomClip(ルームクリップ)」のビックデータをもとに、リアルな住まいと暮らしのトレンドをご紹介していきます。

暮らしや住まいにこだわりを持つユーザー層が集まるRoomClipでは、様々なキーワードで検索がされています。どのような人々が、どのような検索をしているのでしょうか?分析の結果、大きく5つのユーザーグループに分類できることがわかりました。連載4回目となる今回は、各ユーザーグループの特徴を、検索キーワードや保存をしている投稿などの情報を紹介します。



◆クラスタリングとは

本題に入るまえに今回の分析に用いたクラスタリングについて簡単にふれておきます。ある集合を「クラスタ」という部分集合に分けることを、「クラスタリング」と呼びます。この時、クラスタは以下の性質を持ちます。

1. 同じクラスタ内の対象は互いに似ている
2. 違うクラスタにある対象は似ていない

クラスタリングについて理解するにあたって重要となるのが、各クラスタの意味や中身は事前に定義されておらず、後から解釈する必要があるということです。 というのも、クラスタリングは探索的なデータ解析手法であって、分割は必ず分析者による何らかの主観や視点に基づいているからです。

例えば「北欧好き」のクラスタがあったとして、このクラスタは「ホワイト好き」のクラスタとも解釈できるかもしれません。どちらの解釈も正当化される可能性があり、これは普遍的でも客観的でもありません。手法によっては、そもそも「北欧好き」のクラスタは出現しないかもしれません。このように、クラスタの解釈は複数存在し得るわけです。

それでは、正しいクラスタ数はどのように決めればいいのでしょうか。クラスタリング分析においては、クラスタ数の妥当性は、「分析者が分割結果を解釈できる」状態であれば正しいクラスタ数である、と考えます。

 

これらの前提を元に、今回の調査では、2021年にRoomClip上で検索を行った回数が上位のユーザー、29,810人を5つのクラスタに分けました。 ユーザーを3次元空間に投影して5つのクラスタを色分けしたのが、上の図です。1つの点が1人のユーザーを表しています。
5つのうち1つは隠れてしまって見えていませんが、それぞれの点が同じ色で集合を形成しており、基本的には正しく分割できていると言えそうです。
これを受け、それぞれのクラスタの「投稿行動」「検索行動」「画像の保存行動」を分析し、5グループの特徴別に分けました。 次の章では、それぞれのグループについて詳しく解説します。

※クラスタリングの具体的な手法については、本レポートの末尾に記載しています。



1. RoomClipマジョリティ層


 全体の61.4%と、過半数以上を占めるのが「RoomClipマジョリティ層」と定義したグループです。

このグループが投稿する際によく使用するキーワード(タグ)の特徴を見てみると、上位に「ニトリ」「IKEA」「無印良品」「ダイソー」「セリア」といったコストパフォーマンスの優れたブランドが名を連ねます。また、「クリスマス」という季節行事がランクインしているのが特徴的です。 このグループがよく検索するキーワードには「家族」や「3LDK」が上位に登場しており、ファミリー世帯が中心であることがわかります(これは実際のユーザー登録データからも判明しています)。

このグループが参考にしている写真(保存をしている投稿)の上位5枚を見てみましょう。1位は収納に関するノウハウですが、他は全て家のエリアごとに撮影された、そのエリアの全体像が伝わる写真です。

 

これらのことから、このグループに共通する主な関心事は大きく分けて以下の4つであると考えます。

1) 安価で入手しやすく、コストパフォーマンスに優れたブランドの活用
2) インテリアとしての観葉植物の活用
3) デコレーションで楽しむ季節行事
4) 収納術や・DIYを駆使してより住みやすく整えた暮らし

後述する、より具体的な特徴を持つユーザーグループや、トレンドを生み出すアーリーアダプター層によるさまざまなアイデアやノウハウを効率良く取り入れ、ライフスタイルやライフステージの変化に合わせて日々の暮らしをゆるやかにアップデートしているグループであると言えます。


2. 家づくりこだわり層


マジョリティ層に次いで人数の多いグループが全体の16.2%を占める「家づくりこだわり層」です。

投稿キーワードには「北欧」や「ナチュラル」といったインテリアスタイルが登場する他、「バルミューダ」という特定の家電ブランドがランクインしていることが特徴として挙げられます。 検索キーワードには、投稿キーワードと連動するように「北欧」「ナチュラル」「ホテルライク」といったインテリアスタイルが上がっている他、「ラグ」「アクセントクロス」「カーテン」などインテリアに特化したアイテムが複数ランクインしています。

参考にしている写真を見てみると、上位2枚が収納に関するノウハウで、以降はダイニング、リビングといった居室の写真が続きます。このグループの特徴を最も顕著に表している1枚は5位の写真です。完成して間もない新築住宅の居室を撮影したもので、アクセントクロスの活用や窓の設置場所、照明の配置、床材の色合いなど、家づくりの参考になる情報が多く含まれています。


これらのことから、このグループは「家づくりを検討している」または新築やリフォームなどで「家づくりを現在進行形で行っている」層であると考えます。

住宅取得層の情報収集は、かつては一部の専門雑誌に頼るしかありませんでした。ところが今は、上の世代が解決に取り組んでいる住まいと暮らしのトピックスや、DIY・リメイクがされている場所、収納・家事のノウハウを駆使してより住みやすくする方法などなど、住まいと暮らしにおける課題やその解決方法をリアルタイムでインプットできる時代です。
SNSを通じて多角的に収集・把握したあらゆる情報を、自分たちらしい家づくりに活かそうとしているグループが「家づくりこだわり層」だと言えます。 ちなみに、住宅取得時に満を辞して憧れの家具や家電を導入することが通例になっていますが、近年、その場面で指名買いされるブランドの一つとして「バルミューダ」は人気を集めています。


3. 暮らしの工夫層


 3つ目のグループが9.8%を占める「暮らしの工夫層」です。
投稿キーワードの1位は「収納」、その他には「RoomClipマジョリティ層」と共通する、コストパフォーマンスの高いブランドが並びます。また、投稿頻度の高いユーザーが挨拶のようなニュアンスで利用する「ありがとうございます」というキーワードが上位に上がっていることからも分かるように、5グループの中でも投稿をしている割合が高い層です。 検索キーワードのトップは投稿キーワードと同じく「収納」で、「ゴミ箱」「クローゼット」「冷蔵庫」「子供部屋」といった、ピンポイントなエリアやアイテムがランクインしています。

参考にしている写真を見てみると、全て収納に関するノウハウであることがわかります。収納はどのグループでも関心の高いトピックですが、5枚の写真とも収納にまつわるものなのは、このグループだけの特徴です。


 これらのことから、このグループは日々の暮らしを快適に過ごせるよう、家の中の様々な場所をより使いやすく整えることが最大の関心事であると言えます。

これまで、住まいには押入れや階段下、洗面やシンクの下、下駄箱の中や冷蔵庫の中といった、そのまま利用するには使いこなしづらい場所がたくさんありました。それぞれの場所において、どこに何をどう収納するのがベストか、役立つフックやボックスは何か、突っ張り棒はどう使えば収納量を増やせるか、などの様々な工夫が常に試行錯誤されています。
収納をはじめとする、暮らしにおけるちょっとした「うまくいっていないポイント」を解決することに

 
水上 淳史
ルームクリップ 株式会社

SIer、フリーランスのエンジニアを経て、2015年にルームクリップに参画。SEO、SNS、広告などユーザー向けマーケティングの立ち上げに携わったのち、2018年からメディア、イベント、ウェビナーなどの企業向けマーケティングの立ち上げに従事。2021年からRoomClip住文化研究所、ブランド室、マーケティングソリューション事業部マネージャーを兼任。生活者と企業をつなぐ取り組みを数多く手がける。

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