フィンランド、ヘルシンキ在住の大村裕子です。フィンランドの建築について住宅を中心に、建築士の視点でレポートしていきます。
ハウジングフェアとは、フィンランドの最新の住宅が見学できるイベントです。
最終回は会場案内図7に建つ、円形のエコに配慮した住宅です。
▼前回の記事はこちら▼
第39回 フィンランド住宅のトレンド ハウジングフェア2021(その3)~ 幼児とふれあう高齢者住宅、屋上に庭のある集合住宅
◆円形の平屋住宅 (No. 7)
これまで何度もハウジングフェアを見学してきましたが、円形の家は初めて見ました。ハウジングフェアの会場でも、この形がひときわ目立っていて、多くの人が並んでいました。
家の中心に庭があり、その周りを囲むように部屋が配置されています。 設計したのは建築家のマッティ・クイッテイネン(Matti Kuittinen)さんです。
家の中心にある木はリンゴの木です。このロフヤではよく植えられています。庭には屋根がかけられていません。雨樋はあえてつけず、すっきりとした仕上げになっています。雨水は自然に庭の方に落ちていきます。
平面図で見ていきましょう。平屋で床面積は160㎡です。家の中心にある中庭をぐるっと囲むようにして、部屋が配置されています。
リビングダイニングはオープンキッチンと一体となっています。リビングの隣には書斎があります。寝室からウォークインクローゼット、洗面所、サウナへ行けるようになっています。そしてサウナで温まったあと、テラスへすぐ出て涼むことができます。 車庫と物置も住宅に組み込まれています。
住宅の外壁は円形なのですが、内壁はカーブさせずに、すべて直線になっています。家具を置くときに実用的ですし、カーブした外壁とまっすぐな内壁の組み合わせによってダイナミックな空間を演出できるからです。この写真で、もし内壁が外壁と同じようにカーブしていたら、廊下の幅が均一になり、「廊下」というイメージが強くなるでしょう。
中庭のすぐ横にはテラスがあります。テラスの床は木製で、屋根はガラス張りになっています。
風よけのためのガラス引き戸があります。引き戸もカーブしていて、開閉できるようになっています。
◆アートギャラリーのようなインテリア
住人はアートを嗜むカップルの二人です。家の名前はピョーレ (pyörre) 、フィンランド語で渦という意味です。カップルはカフェを経営していて、そのカフェでネーミングコンテストを行い選ばれた名前です。
リビング・ダイニングルームです。壁に飾られた絵や個性的な照明が目を引きます。まるでアートギャラリーのようです。屋根は家の中心に向かって低くなっています。 天井は家の中心から外側に向かって高くなっていて
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