YKK AP株式会社が発行する建築業界情報紙「メディアレポート」では、毎月様々な情報をお届け。「住宅トレンド」記事では国・行政・業界の動きや建築に関わる法改正などの情報をお伝えしています。その中で今回は「販売・賃貸時の省エネ表示の 新ルールを公表」と題した記事をご紹介します。
今回ご紹介するのは「メディアレポート 2023.7」に掲載された記事です。冊子PDFは下記よりご覧ください。
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販売・賃貸時の省エネ表示の新ルールを公表
一次エネ、断熱性能を☆マークで表示
国土交通省が、建築物を販売・賃貸する際の省エネ性能の新たな表示ルールを公表した。消費者が建築物の省エネ性能を踏まえて物件を選択できるようにすることが目的だ。
2022年6月、「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)」が改正され、「建築物の販売・賃貸時の省エネ性能の表示制度」が見直された。同制度は2016年に施行、より高い省エネ性能への誘導を図るために、販売・賃貸事業者に対する建築物の省エネ性能の表示の努力義務を定めていた。今回の改正により大幅に強化され、販売・賃貸の広告などに省エネ性能を表示する方法を国土交通大臣が告示で定め、告示に従い表示を行わない事業者には勧告・公表・命令などの措置が可能となる。
この改正を受け、国土交通省は2022年11月に「建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度に関する検討会」を設置、表示ルールの検討を進めてきたが、先に新たな表示ルールにおける基本的事項をとりまとめた。
新表示ルールは「表示すべき事項」として①建築物の省エネ性能(一次エネルギー消費量の性能・断熱性能)を多段階に評価した結果、②省エネ性能を評価した時点(評価日)、という2点を表示する。国が様式を定める「ラベル」を用いて販売・賃貸時の広告や、消費者がアクセスできるホームページなどに掲載することをルールとして告示で定めるとした。
また、「ラベル」には「表示すべき事項」のほか、太陽光発電設備などの再エネ利用設備が設置されている場合はその旨、第三者評価(BELS)を受けている場合はその旨、また、住宅の目安光熱費(設計上のエネルギー消費量を年額の光熱費の目安額に換算したもの)、について付加できることとした。ただ、これら以外に「ラベル」では伝えきれない具体的な性能値もある。これらについては、国がひな型を示す省エネ性能の評価書を用いて追加情報として提供することを「ガイドライン」で推奨することとした。
一方、「ラベル」の使い方については、販売・賃貸時の広告に掲載するほか、広告に使用しない場合は、事業者のホームページや建築物に関する調査報告書に掲載することとした。
新たなルールの素案段階で行ったパブリックコメントでは、脱炭素の実現に向けて賛成、賛同の声がある一方で、「情報の受け手の目線に立ち、かつ事業者が進める建築物に対する積極的な省エネ化の取り組みが、過度な負担なく、適正に評価・表示される制度設計の検討」や「気運が高まりつつある『環境性能を重視した建物選択』に不要な混乱が生じぬようにする必要」といった要望も寄せられていた。
表示ルールはまとまった。次は、いかに運用していくかの段階を迎える。