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2021/02/16 07:44 - No.1005


第1回 京町家×IOTで生まれ変わる京ぐらし


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戸建性能向上リノベーション ~事例から学ぶ設計ノウハウ
A-PLUG 事務局

2021/02/16 07:44 - No.1005

 
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京町家の基本性能を新築同等以上に高め、開放的な間取りを実現。土壁に対する断熱改修など町家独自の改修手法を見ていく。

事業主・企画=平安建材株式会社
設計施工=平安建材株式会社



 

京都市伏見区にある世界文化遺産、醍醐寺の真向かいにある築100 年超の京町家のリノベーション事例。

この住宅は「京ぐらし」ネットワークとYKK APのリノベーションのモデルハウスとして計画された。

京町家をゲストハウスなど商業用途に改修する事例は非常に多いが、それらは採算性が重視されるため、本格的なリノベーションはほとんど行われない。住宅としての京町家を継承し、次代につなぐためには、耐震や断熱などの性能を向上させて暮らしやすさや快適性などを付与した取り組みが不可欠だ。

本事例はそうした事例の1つ。まずは間取りを一次取得者のニーズを踏まえ、既存の建物から大幅に刷新した。1階にはオープンLDKを設け、キッチン脇にパソコンデスクも備えた。2階にはフレキシブルに活用できる畳スペースも設けた。



既存の外観。左側が明治40 年に建った部分。右側が増築部分。いずれも瓦屋根


既存の屋根は瓦屋根。降棟が湾曲している(左)
前面道路から外観を見る。屋根は軽量瓦に葺き替える(右)

既存建物の半分は明治40年に竣工し、もう半分は昭和40年に増築。その後も細かい改修を繰り返している。

既存建物には水まわりをはじめ築年数に応じた軸組の傷みがあり、筋かいの厚みも薄く、途中で切れている箇所もあった。耐震性の面では不安が残る状態であった。

耐震改修に先立ち、なるべく土壁を残すように解体を進めた。そして建入れ直しをして建物の垂直を矯正する際に土壁が落ちた場合は土壁を撤去した。

スケルトン状態に解体したところで軸組の状態などを確認し、耐震や断熱などの性能向上リノベーションを施していった。


2階の天井を落とすと丸太の小屋組みが出てきた(左)
解体後の1階の様子。増築部分を含めて壁は土壁(右)

まずは劣化した部材を交換し、外周壁に構造用合板を張って壁量を確保した。そのうえで柱頭柱脚金物を用いて接合部を補強した。

リビングの上部が吹き抜けとなっているが、その部分はFRP グレーチングを梁に取り付けて水平構面を固めた。同様にリビングの開口部には耐震フレーム「フレームⅡ」を採用。開放感をもたせつつ耐震性能を高めることができた。。

このほか屋根荷重を減らすために、陶器瓦を「KMEW ルーガ雅」に葺き替えた。これはセメントと樹脂のハイブリッド瓦で割れにくく、重さは陶器瓦の約半分に抑えられる。また後述する景観条例にも対応している。

これらの工夫により、築100 年の京町家で耐震評定点1.5を確保することができた。


外周壁には構造用合板を施工。瓦屋根を落として鋼板屋根に葺き替え


フレームⅡを用いて大開口と耐震性を両立(左)
耐震改修として適宜柱頭柱脚金物で補強(右)


●3種類の断熱材を使い分ける 

断熱改修に際しては、窓には樹脂窓APW330を採用。床断熱は剛床化するため大引間にフェノールフォーム50㎜厚を充填した。

壁に関しては、3 種類の断熱材を使い分けた。土壁を残した部分はその上から内側にフェノールフォーム50㎜を張っている。土壁を落した部分には高性能グラスウールを柱間に充填した。遮音などの実験を兼ねて一部にセルローズファイバー吹込みを使用した。天井断熱は高性能グラスウール210㎜厚だ。

こうした仕様により、既存のUA 値3・49W/㎡・K から0・46W/㎡・K へと大幅に向上した。これはHEAT20のG2 基準に相当する。


土壁以外の壁の断熱は高性能グラスウールを基本とした(左)
土壁部分はフェノールフォーム(右)


床断熱は根太間にポリスチレンフォームを施工(左)
2階の壁の一部にセルロースファイバーを採用(右)


窓はすべて樹脂窓(APW330)に交換した(左)
天井断熱には高性能グラスウールを採用(右)


こうした躯体の改修のほかvーexというHOME OSによるIOTを盛り込んだ。エアコンや照明、浴槽の洗浄やお湯はり、テレビなどの家電を音声やスマートフォンから操作できる。さらに室温や湿度、照度、気圧などのセンサーを備えている。

さらにYKK APの戸締り安心システム「ミモット」も採用。窓やドアの鍵の締め忘れをスマートフォンに通知してくれる仕組みだ。

京都市内には景観条例があり、外壁や屋根の仕上げ材料、形や色が厳しく規制されている。

この住宅は世界遺産の醍醐寺の真向かいに建っており、京都市でも一番厳しい規制が掛かる。外壁は条例を踏まえて土壁のような彩度の低い色に塗装し、腰壁のスギ材はこげ茶色に仕上げた。また主要な道路から見える場所に設置したエアコン室外機などは格子で目隠しをしている。



リフォーム後のLDK。フレームⅡで補強した大開口から日射取得を確保(左)
腰壁にスギ板を張り、モダン和風の雰囲気にまとめている(右)


LDKの脇に設けられたパソコンスペース


耐震改修の概要


【2階】


【1階】




改修後の平面図


【2階】


【1階】


S=1:50


【建築概要】
建築地:京都府京都市 
構造:木造2 階建て 
敷地面積:101.29㎡ 
延べ床面積:118.74㎡


更に詳しく「戸建て性能向上リノベーション」について学びたい方は以下冊子をご用意しております。詳細はYKK AP営業担当までお問合せください。



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