建物の断熱性能は、窓の高断熱化を中心に、近年急激に向上してきました。そして、さらなる健康・快適な住環境を実現するため、現在注目されているのが全館空調です。本連載では、全館空調の良さを上手に生かした、健康・快適で省エネな暖冷房計画を考えてみます。
連載でお届けしてきた全館空調の記事も、今回で最終回です。ますます暑さが厳しくなる夏、絶対に欠かせない冷房について一緒に考えてみましょう。
◆冷房設計の目標とポイント
冷房の設計においてポイントとなる項目を、図1に整理しました。
まずはじめに、「室内全体をムラなく」「気流感のない」快適で「省エネ」な冷房を実現することを目標にしましょう。このうち、はじめの2つ「室内全体をムラなく」と「気流感のない」は一見簡単に見えますが、両立させるのは容易ではありません。ムラをなくすためには建物全体に気流を回す必要がありますが、そうなると今度は気流感を感じやすくなるからです。
これまでの連載でも繰り返し述べてきた通り、建物の基本性能の確保がかかせません。3つ目の「省エネ」については、冷房が特に必要となる夏の昼間は太陽光発電がよく発電するので、それほど神経質になる必要はありません。ただし、目標とする室内環境、特に湿度は消費電力量への影響が大きいので、最後に触れることにします。
図1 冷房設計のポイント
◆Step1 断熱と日射遮蔽・熱交換換気で冷房熱負荷を減らす
最近になって、暑さが年々厳しくなっていることは多くの方が実感されていると思います。図2に、東京の8月の気温と、夏を通した真夏日(日最高30℃以上)猛暑日(日最高35℃以上)熱帯夜(日最低25℃以上)の日数の変化を、記録が残っている1880年から10年平均の推移で示しました。
8月の平均気温、最高気温ともに2℃以上も上昇していますが、特に猛暑日がかつては0日だったものが13日と急に増えてきていることがわかります。国連事務総長が現状を「地球沸騰」と表現して話題になりましたが、残念ながら今後も暑さは厳しくなっていくことが予想されます。さらなる暑さに備えた家づくりは必須といえます。
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