住宅デザインを語ろうとするのは、とても難しいものです。その難題の住宅デザインについて、書いてみたいと思いました。できれば住宅の担い手である地域工務店の経営を観点にして住宅デザインを考え、工務店にもできるテクニックとしてまとめてみたいと思います。
連載11回目となる今回は、「デザインを向上させるテクニック③ 」というテーマをお送りします。
※前回記事はこちら(前回テーマ:デザインを向上させるテクニック②)
◆窓のデザイン・テクニック
具体的なデザイン・テクニックとして、小窓や大きな窓の揃え方を書いてきました。
グラフィックデザインの基本である「ゲシュタルトの法則」を活用しながら、並んでいる窓のサイズが統一されるだけでデザインが変わることを見ていただきました。
また、窓のサイズが変わると揃え方も変わり、デザインの答えが決してひとつではないということも書いてきました。デザインの難しさの1つです。
今回も同じように、工務店さんからいただく事例を参考とした3Dデータの設計例を使って、同じように売れるためのデザイン・テクニックについて書いていきたいと思います。
第9回「デザインを向上させるテクニック①」の小窓のデザイン・テクニックでも描いていた事例に近い家です。あるいは、妻側ファサードの一部と考えていただいても結構です。
現状では、1階の大開口サッシの上に、2階の通常のサッシが配置されています。
平面図だけで打合せをしていれば、このような事例は、数えきれないほどありそうです。
「対称の法則」が守られているので悪くはありませんが、どこか物足りなく感じます。
早速、左のオリジナルに、これまで同様の「類同の法則」を使って、2階中央部のサッシの幅寸法を1階のサッシ幅と合わせます。先の小窓の時と同様に、連窓用の目板を使ってサッシと同色・同素材とすることで「連続の法則」も活かします。
このデザインにバルコニーを使って、上下階のサッシをさらに一体化してみます。
「閉合の法則」です。
もちろん、バルコニーは1階サッシの上端位置に下端を揃えることで、1階サッシ上端の下がり壁を見せないようにします。すでに書いてきたテクニックですが、下がり壁が見えてしまうと「閉合の法則」が有効に働かない恐れがあります。
バルコニーができることにより、フラットな外観に影も落ち、立体感が出ます。
住まい手にバルコニーのニーズが無ければ、ふかし壁でフラワーボックス状に造作することでも同様のデザイン効果を発揮します。
ここでは微妙な色の違いでしか表現していませんが、デザイン要素として解説してきた、色・柄・材料・質感の違いを明確にすれば、陰影以上の効果が発揮されます。
同じ材料で色を変えるのはもちろん、材料を変えれば当然、色・柄・質感が変わります。
そのデザインの組み合わせは無限といっても過言ではありません。
お客様の意向に合わせて好きに組み合わせるのも一興ですが、できれば自社のコンセプトを明確にして、たとえばカラーリングや木目調、タイル調、ガルバリウム鋼板などのパターンをつくることをお勧めします。テリトリー内での自社の個性を発揮して認識されると、まさにデザインで売れる工務店となりえます。
バルコニーの存在感が増すほど、上下階の窓の「連続の法則」は切られ、上下階のサッシ幅の違いがあまり目立たなくなります。
◆窓のデザイン・テクニックⅡ
前回「デザインを向上させるテクニック②」の大窓のデザイン・テクニックと同じように、上下階の窓のサイズを小さくそろえて「連続の法則」を活かすことも考えられます。大きな窓の例よりも、室内の部屋の個性が見られなくなることで、よりファサード感が増しているように見えます。
ここでも同じように、バルコニーをつけると「閉合の法則」が効きます。
窓を小さくするのであれば、同じ「閉合の法則」でも、高窓や腰FIXサッシを使うテクニックもあります。あるいは、上下階のサッシ間にある壁の色・柄・材・質を変えてみます。
これによって、「面積の法則」が感じられるようになってきました。
より大きな面積を持つ壁面に、1つの開口部が空いているように見えてきます。全体としての要素数が減ったデザインになります。それだけに、これまでとは違う個性を感じ始めます。
バルコニーなどの材質感と同様に、腰FIXサッシなどの特徴的な窓を使うことで
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