◆空き地など低未利用土地の利活用進む
100万円控除制度が後押しし空き地が住宅へと活用
空き地など低未利用土地の活用が進み始めた。2020年7月に開始された「低未利用土地の利活用促進に向けた長期譲渡所得の100万円控除制度」が、その利活用を後押ししているようだ。
低額な不動産ほど取引が進みにくく、例えば、相続した土地がそのまま放っておかれるようなケースが後を絶たない。「想定したよりも売却収入が低い」、「相対的に譲渡費用(測量費、解体費など)の負担が重い」などの理由で、所有者が土地を手放さず、低未利用地として放置されるケースが増えているものだ。
こうした空き地は地域の荒廃などにつながりかねず、社会問題となっている。国土交通省は、こうした土地の有効活用を通じた投資の促進、地域活性化、さらなる所有者不明土地の発生を予防するといった目的で、2022年12月末までの特例措置として設けられたのが「低未利用土地の利活用促進に向けた長期譲渡所得の100万円控除制度」である。
同制度は、一定の要件を満たす譲渡価格が500万円以下の低未利用土地等を譲渡した場合、長期譲渡所得から最大100万円を控除するもの。特に地方部を中心に、全国的に空き家・空き地が増加するなかで、新たな利用意向を持つ人への土地の譲渡を促す。
国土交通省が先に取りまとめた利用状況および適用事例調査の結果によると、自治体による低未利用土地等確認書の交付実績は、2021年12月末までで5150件となった。
すべての都道府県で交付実績があり、一件当たりの譲渡の対価の額は平均247万円となった。譲渡前の状態は空き地が約6割で、譲渡後の利用は住宅が約6割となった。言い換えれば、多くの空き地が住宅へと活用されたということである。
同制度の活用で、空き家・空き地問題の解消につながるケースも増えている。例えば、岐阜県美濃市では地域の問題になっていた崩壊寸前の危険な空き家が、所有者が同制度を知ったことをきっかけに売却された。山形県鶴岡市では3人の地権者が所有する低額の狭小地が放置されていたが、同制度がインセンティブとなりまとまった事業用地として一括譲渡されたという。