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2023/11/09 08:00 - No.1345


省エネ基準の評価ルートを見直し|YKK APメディアレポート(住宅トレンド Vol.38)


住宅トレンド - YKK APメディアレポート -
A-PLUG 事務局

2023/11/09 08:00 - No.1345

 


YKK AP株式会社が発行する建築業界情報紙「メディアレポート」では、毎月様々な情報をお届け。「住宅トレンド」記事では国・行政・業界の動きや建築に関わる法改正などの情報をお伝えしています。その中で今回は「省エネ基準の評価ルートを見直し」と題した記事をご紹介します。

今回ご紹介するのは「メディアレポート 2023.9」に掲載された記事です。冊子PDFは下記よりご覧ください。

⇒ 冊子PDFを閲覧する


省エネ基準の評価ルートを見直し

適合義務化に向けてわかりやすく整理


2025年度の省エネ基準の適合義務化に向けて、省エネ基準の適合性評価ルート(評価方法)が大幅に見直される。

省エネ基準を満たしているかどうかを判断する適合性評価。これまで省エネ性能向上に対する取り組みが進むなか見直しや新規設定が行われてきた。例えば、2019年に300㎡未満の住宅・建築物の説明義務制度などを踏まえ、簡素な評価ルートが整備された。2022年には住宅の仕様基準について構造別・建て方別の基準の設定や開口部比率の廃止などの合理化が行われた。さらにZEHの省エネ性能への適合を簡素に確認できる誘導仕様基準も新設された。

こうした結果、現在、複数の適合性評価ルートが存在している。その評価は、大きく「外皮性能」と「一次エネルギー消費性能」の2つに分けられ、それぞれ「標準計算ルート(パソコンなどで行う精緻な評価方法)」、「簡易計算ルート(パソコンなどで行う簡易な評価方法)」、「仕様ルート(仕様で判断する評価方法)」の3つがある。また、「簡易計算ルート」にはさらに簡単に評価が行える「モデル住宅法」もある。

さまざまなルートが混在し複雑化するなか、分かりにくさなどの課題が指摘されていた。例えば、簡易計算ルートのなかにはより高い性能を評価するBELSや住宅性能評価に適用できないことから活用されていないものもある。また、仕様ルートは「外皮性能」と「一次エネ性能」のセットで使うことを前提としており、「外皮性能」を仕様ルートで、「一次エネ性能」を計算ルートで評価することを想定していない、といったことだ。

こうしたなか国土交通省と経済産業省が合同会議を開催、評価ルートの合理化について検討し、見直し案をまとめた。2025年度の省エネ基準の適合義務化に向けて、取り組みやすい制度とすることが大きな目的である。

見直し案は、精緻な評価ルートは「標準計算」、簡易な評価ルートは「仕様基準(または誘導仕様基準)」に再構成する。具体的には、①22年11月に措置された簡素化した仕様基準と、新設した誘導仕様基準、②新ルート<外皮:仕様基準+設備:エネルギー消費計算プログラム>を開設(住宅トップランナー制度の報告や、BELS、住宅性能評価で活用可)という2本柱となる。また、気候風土適応住宅対応版については、適合確認で用いる外皮性能は既定値(省エネ基準)とする。

この合理化により、簡易な評価ルート(モデル住宅法、フロア入力法、外皮面積を用いない外皮評価、エネルギー消費性能プログラムの特定建築主基準版、簡易入力画面)を廃止する。また、気候風土適応住宅のエネルギー消費性能計算プログラムの気候風土適応住宅版を廃止する。


増改築も考え方を見直し仕様ルートを基本に


増改築に関わる省エネ基準適合の考え方も見直される。

2025年度以降、小規模住宅の増改築にも省エネ基準への適合が義務化されるが、その範囲は「増改築を行う部分のみ」とされている。これにともなっての見直しだ。

見直し案では、外皮基準については、仕様ルートは増改築部分の外皮の各部位(屋根・天井、外壁、開口部、床)が仕様基準または誘導基準に適合することとした。計算ルートについては、増改築部分のみでの外皮性能計算は行わない。これは求められるUA値などが住宅全体として定められているものであり、一律の基準として住宅全体のUA値などをそのまま当てはめることが難しいとの判断からだ。

一方、一次エネルギー基準についても仕様ルートでの考え方を基本に置き、増改築部分の各設備が仕様基準または誘導仕様基準に適合、計算ルートについては、増改築後のBEIが1.0を超えないこととするとした。増改築部分のみで省エネ基準への適否を判断するとしているが、住宅のエネルギー消費性能計算プログラムは住宅の位置部分のみを対象とした評価に対応していないことから、既定値(基準設定仕様の設備を設置した場合の数値)として全体で計算するとした。また、外皮性能は既定値(外皮が適合する省エネ基準または誘導基準)として計算する。

これにともなって、建物全体で省エネ基準への適合を確認することを前提として設定された既存建築物の増改築時における基準値と既存部分のBEIのデフォルト値の取り扱いについては廃止する。

これら新築、増改築の見直し案は、合同会議の委員からの概ね賛同を得ており、今後、パブリックコメントを経て、今年秋頃に公布、2025年春頃に施行される予定だ。



[ご紹介]YKK AP 株式会社 発行「メディアレポート 2023.9


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