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2019/01/11 11:05 - No.357


アルティザン建築工房新谷孝秀氏「戸建住宅リノベで性能向上」(前編)


リノベ最前線~リノベーションフォーラム講演レポート~
ともこ @住宅ライター

2019/01/11 11:05 - No.357

 

ともこ@住宅ライターです。私はプレスとして、2018年8月6日の「リノベーションフォーラム2018」大阪会場へ行ってきました。今回は、講師の新谷孝秀さんによる講演を前編・後編に分けてレポートします!
(同日の講演、内山博文さんのレポート記事はこちら!)


新谷さんは、講演の中で、自社で取り組まれている中古住宅リノベーションについて、実例を交えながらお話しされていました。
今、なぜ戸建住宅リノベーションなのでしょうか。新谷さんは、「戸建リノベーション市場は、ブルーオーシャン」だと語ります。


リノベーションフォーラムって何?

YKK APは【住まいの価値は「窓・開口部」でかえられる。】をテーマに、2015年よりリノベーションフォーラムを開催しています。2018度は「性能向上リノベーションのミライ」と題して、木造住宅の断熱や耐震などの性能向上による、住まいの価値向上についてトップランナーより講演・トークセッションで語っていただきました。
それでは、新谷孝秀さんによる講演レポート前編のスタートです!








中古住宅リノベは社会から求められている

新谷さんは、札幌で、性能向上を伴うリノベーション専門会社を経営されています。従業員は10名。年商7億。年間で40棟のリノベーションをてがけていらっしゃいます。
会社を設立されて8年目。新谷さんは「お客さんに本当に受け入れられています。世の中から、求められていることなんだなと実感しています」と語ります。現在、国の政策が、新谷さんの後を追いかけているような構図になっているのだそうです。
それだけ、リノベーションというのは、社会から必要とされていることなんですね。


まずは社屋から

新谷さんは、築52年の中古住宅をリノベーションして事務所にしようと考えました。「築52年のリノベなんて、なかなか思いつかないですよね。でも屋根の三角の形が可愛いなと思いまして」と話します。この時、新谷さんらしい一面を垣間見た気がします。では、どんな物件だったのか紹介してもらいましょう。



外観はさほど変わっていないそうですが、屋根、壁、基礎の断熱は外側から施しているとのことです。
「冬の寒さを感じず、夏も涼しく過ごしています。もちろん、エアコンはつけていますけど」と新谷さん。事務所の中はスケルトンにして、本棚を壁のように創り付けるなど、打ち合わせスペースにふさわしいオシャレな空間に仕上がっていますね。


中古流通の伸び代を読み取る

新谷さんは「今日のフォーラムでも何度もお聞きになっていることですが、新築が減っているのは、みなさん意識されていますよね」と前置きした上で、中古流通の欧米諸国と日本を比較されていました。
とくに日本は「新築買うのが当たり前」の産業になっていますが、国土交通省の資料を見てみると、リフォーム市場の活性化を目指していることが分かります。
日本は、欧米諸国と比べてリフォーム市場が小さいこと、既存住宅の流通も少ない。「つまり、ここに伸び代があるというのは、みなさん感じておられると思います」と新谷さん。


向き合うべき空き家問題

現在の空き家率は、全国では13.3%。北海道は14.3%。「10軒に1軒は空き家ということなので、相当大変なことになっていると思う」と新谷さん。この空き家問題を解決しようとした時「空き家を活用してリノベーションという手法を混ぜると、中古住宅も流通するし、リフォーム市場の活性化につながる」と続けます。
前回レポートしたリノベーション協議会会長内山博文さんの時も感じましたが、新谷さんもまた、自社さえ良ければいいというのではなく、市場全体の底上げを図ろうとしていらっしゃるのが伝わってきて、胸が熱くなりました。


札幌の空き家はどうなっているのか

札幌市内は街の中心にも、空き家がたくさん存在するそうです。「札幌中心部は、インフラも整っているのに、そこに住んでいない」これが問題だと新谷さん。
札幌も他の都市と同じように、かつては郊外にどんどん新興住宅を作っていたそうです。同時にインフラも広げていかなければならないのに、追いついておらず、すでにインフラが整備されている中心部の空き家が手付かずになっている状況なのだとか。
だから「どの都市も、郊外へ広がることを止めて、中心部にある空き家に目を向け、リノベーションして住めるようにすれば、街がコンパクトになります。すると、行政も今よりずっとサービスしやすくなりますよね」と新谷さんは語ります。
郊外の庭付き一戸建ても魅力ありますが、空き家問題を天秤にかけた時、エンドユーザーである私たちも何ができるのか…今一度考える必要がありそうだと思いました。


リノベーションを取り巻く環境


現在、リノベーションといえば、マンションリノベーションというほどに認知度が高くなっていますよね。この図でいうと、赤い大きな円の部分です。
首都圏でマンションリノベーションが広まり、それが北海道の札幌まで浸透し、今は盛んに行われているそうです。
そして、戸建のリノベーションというと、2番目に大きな円の部分で、ここは買取再販のことなのだそう。新谷さんは「買取再販の市場の中で行われているのは、今日のテーマである性能向上まで到達せず、見た目だけをきれいにした”お化粧リノベ”になってしまっています」と解説。リノベーションというよりは、リフォームに近いということですね。
では、性能向上を伴うリノベーションができるのは、どんな層なのかというと、それは、終の住処について考えているシニアなのだとか。3つめの円の部分ですね。「持ち家のあるシニア層が、残りの人生20~30年となった時に、はじめて性能向上リノベーションができる」とのこと。
最後に、1番小さな円のところは、一時取得層。子育て中の30代ですね。本格的にリノベーションした住宅を、リーズナブルに提供していきたいと思える、注目すべきターゲットだそうです。
続けて、聞いていきましょう。


国が目指すところは

国の政策の目指すところは大きく4つ。

・断熱性を上げて、省エネ、CO2削減という道

・大地震で大勢の人が亡くならないようにする耐震性の向上

・少子化で縮小する住宅産業の低迷

・増え続ける空き家の歯止めをかける中古住宅の流通促進

新谷さんは、国が目指していることを上記のように説明されました。
ここで間違えてはいけないのが、さきほど出てきた2番目に大きな円の買取再販(”お化粧リノベ”)では、社会資本にはならないということ。

では、3番目の性能向上を伴う持ち家リノベならどうかというと、なかなか機会が少ない。
「そこで着目すべきは、1番小さな円の30代子育て一時取得者に、中古住宅+リノベーションで住宅を取得してもらうビジネス!国の政策を含めるすべてを叶えることになります」と新谷さん。
これだけ素晴らしい方法であるのにも関わらず、なぜ小さな市場になってしまっているのでしょうか。


プレーヤーがいないから?

新谷さんは、”プレーヤーがいないから”と感じているそうです。「だから、逆にビジネスチャンス。まだまだ隙間産業です」と新谷さん。それに「若者たち(30代子育て一時取得者)は、新築市場主義ではなく、古いものを大切にするという感覚を手に入れています。この市場はこれから大きくなっていく」と続けます。
繰り返しになりますが、中古住宅+リノベーションは、国が抱える問題を解決しつつ、若者たちの「家が必要」にも応えることができる方法だということが分かりました。


家を持つ4つの方法比較

新谷さんは、家を持つには4つ方法があると解説されています。

1.新築安心タイプ

2.新築そうでもないタイプ

3.中古住宅をフルリノベーションする

4.中古住宅をなんちゃってリノベする

図にあるように、1と3はメンテナンスを続けて、価値を維持していくのに適しています。しかし、2と4に至っては、途中で息切れしてしまうのが見て取れますね。
「ライフスタイルは変わってくるものなので、売却のことも考える必要があります。この時に資産価値が残っていると、新たな住み手も少額のリフォームで済みます」と新谷さん。
さらに、「ライフスタイルコストを考えると、フルリノベでいく方がお金がかからない」ことが見えてきます。住まい手主義の考え方ですね!
こうすることで「未来の人たちは、家にそんなにお金をかけずに豊かな暮らしができるようになります。すると、大型連休を取得するようになったり、美術館といった文化的なものに興味が湧くようになるのでは」と新谷さんは語ります。




後編へつづく


 
ともこ @住宅ライター
フリーランス住宅ライター

フリーランス住宅ライター編集者。広島県出身。愛媛県在住。タウン誌営業→スノーボードインストラクター→住宅誌営業(現 株式会社KG情報/家づくり学校)→フリーに。住宅誌づくりを通じて住宅の面白さにハマる。現在は主に一般向けの住宅誌や住宅サイトで執筆中。省エネ建築診断士。twitter/ともこ@住宅ライター。有料note/工務店向け!これは真似できる「一条工務店の集客術」(https://note.mu/tomoko_house/n/n253526d8a40f)を発売中。

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