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2019/09/06 14:15 - No.558


第1回「100年つづく工務店」になるための新しい仕組み


乗り遅れるな!「IT x 工務店」
A-PLUG 事務局

2019/09/06 14:15 - No.558

 

”少子高齢化”、”新築着工減”、”消費増税による景気後退”、”人材不足”、”働き方改革”・・・。今、地域の工務店はかつてない困難に直面しているといえます。

そのような中、何をすべきか。
ひとつ、IT(ICT・IOT)の活用がカギとなるのは疑いようがありません。とはいえ、一方でなかなかITは導入と継続活用にハードルがあるのも現実です。
今回、A-PLUGではITを積極的に活用している会社を取材し、答えを探っていくシリーズを始めました。

第1回は、山口県岩国市に位置するネストハウス。
長年地域に愛されている同工務店が抱える悩みと今後に向けた取り組み・想いについて、石川貴大常務に話を伺いました。


ネストハウスとは

ネストハウスは創業39年、自然素材をつかった注文住宅及びリフォームを手掛けています。
「気候・風土に合った、人に優しい”住まいづくり”と、より豊かに彩られた”暮らしづくり”をプロデュース」をモットーとしています。家づくりにとどまらず、「豊かな暮らし」を地域のお客様に具体的に提案するために、2016年からは複合施設”iroherb(イロハーブ)”を運営しています。


イロハーブでは「医・食・住・遊・創」をテーマに、
家具・インテリア販売、カフェ、ガーデンショップ、ヨガスタジオなどを展開、
多くの地域のお客様に利用いただいている
http://iroherb.com/


今の新入社員が50歳になった時、会社は?

もともと私は十数年ハウスメーカーでサラリーマンをしていましたが、父が経営する工務店を継ぐため、6年前に帰郷しネストハウスに入社しました。

入社して一番に感じたのは、圧倒的な新規顧客との接点の少なさと、その管理方法のハウスメーカーとのギャップでした。

「顧客管理に真剣に取り組まなければならない。」と感じはしましたが、何も手を打たず気持ちばかりが焦り、数年が経ちました。

そしてそれを真剣に取り組もうと持った出来事が、採用活動の時に起こりました。学生向けセミナーで主催者が「就職先の選択に大切なのは、安定感です。」と発信しているのを聞いたとき、正直ゾッとしたんです。

今の新入社員の子たちが50歳になったころ、つまり人生で一番稼ぎたい思う時に、私は70歳になっているわけです。その時に「私はもう年だから会社をたたみます」というような会社に入社したいと思いませんし、意識の高い社員ほど将来性のある会社でスキルアップして仕事をしたいと思うはずです。

私個人に関係なく、「100年つづく会社」でなければ、これから若い世代はネストハウスに入ってこなくなりますし、入社しても、将来に不安があれば辞めていってしまいますよね。

その当時、今のネストハウスは・・・と考えると正直・・・。そこからキチンと顧客管理に取り組み、将来のある会社にしようと行動に移したのです。


「100年つづく会社」になるためには

需要があり続ければ、会社は存続ができる。つまり、「100年つづく会社」とはシンプルに言うと、「100年受注が続く会社」ということだと思います。

言うまでもなく、これから住宅市場はますます厳しくなっていく中、地域の工務店はそれぞれ少ないパイを奪い合うことになります。そうした状況の中でも、私は経営者として「100年受注が続く会社」になるための、仕組みを作らなければならない、そう思いました。




「100年受注が続く」ためには、3つの課題に取り組む必要がありました。

まず、「顧客の見極め」にバラツキがあること。売れる営業マンは3回の商談で契約しますが、売れない営業マンは10回商談しても売れない。この差は、売れない営業マンは「このお客様は売れない」という正しい判断ができていないということ。こうした個人の能力にバラツキがあり、人によって受注が上下することが、経営としてはまずい。「営業マンの誰もが正しい顧客判断をできる」仕組みが必要です。


次に、「顧客管理」が適切にできていないこと。お金を投資して、せっかく集めたお客様に追客が適切に行えていないことからお客様に逃げられてしまう、「担当者にしかわからない」、「担当者が辞めたら情報がなくなる」、という顧客名簿のブラックボックス状態もよくあることです。これは本当にもったいないと思います。

そして、「いい家なのに、お客様の来店がない」こと。どの工務店も自分の家には自信があるはず。コスパ、性能、デザイン、これだけこだわっているのに、お客様が来てくれない。ここに一番の課題を抱えている会社は多いのではないでしょうか。



お客様の「見える化」をしよう

正しい顧客対応こそが、安定した受注活動につながります。それにはお客様の行動の「見える化」がポイント。
そのお客様は何をしに来店をしたのか、何をもとめているのか、受注の確度はどうなのか・・・。社員共通で「見える化」できる仕組みが必要です。


新規顧客づくりのカギ。プッシュ型からプル型の集客へ

そして、顧客獲得は大企業の真似をしてもうまくいきません。私たちも折込広告やSNSなどにお金をどんとかけて広告をしていましたが、資本勝負には限界があります。

どうしたら効率的に広告費をかけることが出来るか考えた結果、カギを握るのは、一番身近な応援者、自社のオーナー様でした。

自社で家を建てていただいたオーナー様が喜べば喜ぶほど自社のファンになり、やがてアンバサダーとなってくれます。
ではどうしたらファンになってくれるのか。

カギはオーナー様が自ら接点を持ちたいと思うコトにありました。その接点が多いほど、”熱い”ファンになっていただきやすく、やがて口コミをしてくれるアンバサダーとなります。
オーナー様が勝手に遊びに来てくれて、勝手に「いい会社だよ」と宣伝、営業活動をしてくれ、そしてそれを聞いた友達が勝手に来てくれる・・・。これが効率的な費用で集客するスタートだと考えています。

お客様にとっていいことをしていれば、必ずお客様はきてくださいます。そうやって積み重なっていくお客様との接点を長期的なスパンで管理することが重要です。

ネストハウスでは、接点づくりとしての複合施設”iroherb(イロハーブ)”の活用と、顧客管理システム「Scoope(スコープ)」での「お客様の見える化」による管理で、オーナー様とそのお友達が勝手に来てくれ、喜んでいただき、その名簿をもとに家づくりにつながっていく仕組みを確立することに挑戦しています。


お客様の喜ぶいいことをするのに、別にネストハウスのような、複合施設が必ずしも必要というわけではありません。「そこにワザワザ行かなければならないような何か」があればいいんです。

「お客様がワザワザ行きたい」何かをつくること。

それって結構皆さま自社でやられているのではないでしょうか。

「工具を貸し出して、会社の庭でDIY教室」、「婚活料理教室に会場を貸し出し」、「マルシェの会場に会社の敷地を貸し出し」などなど・・・。
全国の工務店さんに話を聞くと、皆様いろいろな集客努力をされているなと感じますし、私どもネストハウスでもいろいろなことに挑戦しづつけています。

その努力が実って継続していることや、1回で終わったイベントなど、そのトライアンドエラーにお客様にとっての「いいこと」のヒントがあると思うんです。そしてその集めたお客様をキチンと長期的に管理することが「100年つづく工務店」にとって大切なことだと思います。


 


新しい顧客管理システム「Scoope」

来ていただいたお客様の情報を「日報を入力することでストック」して、「いつでもどこでもタイムラインで確認」して、お客様ごとに正しく対応して無駄なく契約につなげていく。

これを実現可能にしたのが、自社で開発した新しい顧客管理システム「Scoope(スコープ)」です。

ひと言で表すと、「日報を書きながら顧客管理をするシステム」と言えます。
社員一人一人、日々業務に追われているわけですが、その中で「入力して情報を一元化」することで業務効率化を図るとともに、「お客様との歴史」を見える化します。


活用のステップは以下のようになります。

お客様に来ていただく
お客様の“正しい”評価をしてランク分けをする
お客様と会話しながら、会話の内容をその場で入力、記録していく
お客様の情報がストックされ、タイムラインで管理が出来、社内で共有される


お客様とのやりとりと歴史が一目でチェックできる

社員はお客様と会話しながら日報入力をすることもできます。そうすることで帰社後に業務報告を書く「めんどくさい」がなくなり、情報も「入力忘れ」がなくなります。また、入力した日報は顧客ごとのタイムラインにストックされているので、次の打ち合わせの前に前回の内容を確認して打ち合わせに入ることが出来ます。

また経営者としても、お客様や会社の状態がリアルに、タイムリーに把握できるようになります。出張で不在にすることが多くても今営業がどのような動きをしているかがいつでもどこでも見られるようにしています。


顧客評価を誰もが簡単にできる

Scoope(スコープ)」ではお客様を評価する判断基準を定めていて、お客様と会話しながら埋めていけば、“社員誰もが適切に”顧客の状況や受注角度を判断できるようになります。

また、お客様が「Scoope(スコープ)」の画面を見ても、顧客ランクなどアイコン表示にしているので、違和感なく安心です。イメージとしては病院のカルテを先生が目の前のパソコンで入力している感じです。


とにかくかんたんわかりやすい

お客様の管理をきちんとしたいと思ったときに、世の中のいろいろな顧客管理システムを探しましたが、受注に特化したシステムは意外に少なく、現場で実務をしている自分たちにとって「使いやすいシステムを」と考えた結果、結局自社でゼロから開発することになりました。

Scoope(スコープ)」のビジュアルで大切にしたのはわかりやすさです。使い勝手のよいデザインにこだわって作りました。年齢層の広い社員全員が抵抗なくシステムを使いこなすには「簡単さ」がなにより重要だと思っています。

もちろん、新しいシステムを導入するとなると、どうしても社員の抵抗は最初ありました。でも1か月でスマホをやっていない社員の方も慣れて使ってくれていました。

また、今では社員が進んで細かく日報を書いてくれるようになりました。次回の打ち合わせに役立つのを実感してくれているのではと思います。

それに何よりIT苦手、スマホも持たない社長が「これは本当にいいね」と毎朝一番にチェックするのがルーティンになっているほどです。


「Scoope(スコープ)」と「100年つなぎの会」

繰り返しますが、100年続く会社になるためには、100年受注が続くようにしなければいけません。その顧客管理システム「Scoope(スコープ)」ですが、「Scoope」だけでは100年受注が続く会社にはなれません。実はもう一つ、欠かせない柱があります。

たとえば、イベント集客の工夫している話を先ほどしましたが、どの工務店もいろいろな取り組みをして、成功することもあったり、失敗することもあったり、トライアンドエラーで繰り返しをしていると思います。

そうしたトライアンドエラーを自社だけで繰り返し続けるのはとてももったいないと思うんです。

それを自社だけでなく、全国の工務店と一緒に経験とノウハウを共有していきたい。そうした思いの中から、全国の工務店が顧客づくりの経験・ノウハウを共有しあう、「100年つなぎの会」を今年発足しました。


「100年つなぎの会」では、各工務店がトライアンドエラーを共有し、新規顧客との接点づくりやリピーターや紹介客が繰り返し来店する仕組みを研究し、安定受注が継続するループ構造をつくることを目指しています。

言ってみれば、Scoope(スコープ)」はシステムでしかありません。そのシステムを有効に活用するためには、お客様に本質的に喜んでもらえることは何か、を研究することが欠かせません。それにお客様が喜ぶことも、もちろん時代によって変わっていきます。「100年つなぎの会」では、お客様づくりを会員が共にアウトプットしながら研究していく場です。現在、広島だけでなく、北海道や東北など、全国の工務店15社が会員になっています。

みなさんも一緒に「100年つなぎの会」で100年続く工務店をつくっていきませんか?

私は2年後に社長継承をする予定になっています。今後どのように切り盛りをして、100年続く会社になるため、受注をつなげていくか、常に不安や葛藤を抱えたながら日々奮闘しています。

2代目は創業者とは違いますし、また時代も大きく変わりつつあります。そうした中、一人の力で何とかしようとするのではなく、同じ悩みや目標を持った全国の仲間を増やして一緒に将来に向かって取り組んでいきたい、そう強く思っています。

Scoope(スコープ)」と「100年つなぎの会」について、ご興味のある方がいましたら、何でも結構です。お気軽に、連絡をいただければと思います。
(連絡先:
t-i@nest-h.com / info@nest-h.com

 






ネストハウスの「Scoope(スコープ)」と「100年つなぎの会」についてはこちらから詳細を確認いただけます。


 
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