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2020/12/11 07:51 - No.950


第5回 耐力壁配置のバランス


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動画でわかる!木造住宅の耐震性能
中川 貴文

2020/12/11 07:51 - No.950

 

(前回記事はこちら



平面的バランス】

大地震に耐えるにはどの程度の壁量が必要か、については第2回で解説しました。

壁量を確保することと同時に壁配置のバランスも耐震性を確保する上で、極めて重要です。
同じ階での壁配置の「平面バランス」については、建築基準法では四分割法や偏心率によって最低基準が定められています(2000年改正)。

平面的に東西・南北の一方に偏らないようにバランス良く配置することが原則です。

例えば以下の動画は耐震シミュレーションソフト「wallstat(ウォールスタット)」で平面バランスの悪い木造住宅を揺らしたものです。

壁量は基準を満足していますが、壁が次の図面の通り西側に偏っていて、偏心率は1階のY方向で0.4と、平面バランスが非常に悪いプランとなっています。


耐力壁の平面的バランスの悪い木造住宅 


1階の壁配置(筋かいは30×90断面)


1995年阪神淡路大震災の際に観測された地震動を入力したところ、建物がねじれるように倒壊してしまいました。

地震力は東西南北に弱いところがあれば、そこに集中的に作用しますので、このケースでは壁の少ない東側が大きく振られて倒壊しました。

壁量が足りていてもバランスが悪いと耐震性能を十分に発揮できないことが分かります。


立面バランス

壁配置のバランスとして「立面バランス」も木造住宅の耐震性に影響を与える場合があります。「立面バランス」とは、例えば2階建てでは1階と2階の壁量のバランスのことです。具体事例を踏まえて解説していきます。

下の図は、耐震補強を検討している木造住宅の補強前の壁配置です。耐震診断の評点は1階:0.4、2階:0.4で、大地震で倒壊する可能性が高いと判断されました。


【左】1階(評点:0.4)
【右】2階(評点:0.4)

補強前の壁配置(耐力壁のみ表示)


「1階重視型」と「バランス重視型」

この住宅に対して、2つの耐震補強計画を検討します。一つは「1階重視型」の補強計画です。

これまでの地震被害調査などにより、2階建て木造住宅の1階が層崩壊する倒壊パターンが多く見られるため、「1階重視」補強では、下の図の通り1階に集中的に壁を配置して、とにかく1階が層崩壊しないように計画したプランです。

評点は1階が0.4→1.0に増加し、1階はとりあえず倒壊しない壁量になっていますが、2階の評点は0.4のままです。


【左側】1階(評点:0.4→1.0
【右側】2階(評点:0.4)    

1階重視型補強の壁配置(耐力壁のみ表示)


もう一つの補強計画は「バランス重視型」です。
1階と2階に補強する壁量のバランスを重視して、壁量の差が極端に大きくならないように配慮した計画です。

評点は1階:0.8、2階:0.6と、どちらも1.0には満たないですがバランスよく補強されています。


【左側】1階(評点:0.4→0.8
【右側】2階(評点:0.4→0.6)  

バランス型補強の壁配置(耐力壁のみ表示)


評点は1階、2階ともに1.0以上を補強の目標とすべきなのですが、やむを得ず「1階重視型」か「バランス重視型」のどちらかを選択せざるを得ない状況の場合、どちらの方が、高い耐震性能を発揮できるでしょうか?「wallstat」で検証してみます。


動画で分かる立面バランス】

次の動画は先ほどの補強前の木造住宅の解析モデルを震度6強の地震動で揺らしたものです。
壁量が足りず、1階が層崩壊して倒壊してしまいます。


補強前の木造住宅

次の動画は「1階重視型」で補強した木造住宅の解析モデルを同じ地震動で揺らしたものです。

1階は十分に補強されているため、損傷が小さくなっていますが、その分、2階に地震力が集中し、2階が層崩壊する結果となってしまいました。

平面的バランスと同じく、立面的バランスも極端に弱い階があると、その階が弱点となってしまいます。


1階重視型補強


次の動画は「バランス重視型」で補強した木造住宅の解析モデルを同じ地震動で揺らしたものです。

1、2階が同じ程度変形して、なんとか倒壊をまぬかれていることが分かります。


バランス重視型補強


1、2階の壁量の極端な差を作らず、バランスよく補強した方が耐震性は高くなることが分かります。

極端に弱い階があると、その階に地震力が集中しますので、他の階をいくら強く補強しても効果がありません。

木造住宅の耐震診断※1の精密診断法では各階の剛性のバランスが悪い場合に耐力を低減することとなっています。

1、2階が評点1.0を満たしていれば、立面的バランスが問題になるケースは少ないですが、例えば1階に高耐力の壁やダンパーを多く配置して、2階の壁量に配慮しなかった場合は、今回のシミュレーションのように2階が危険になるケースがあり注意が必要です。

※1  日本建築防災協会「2012年改訂版 木造住宅の耐震診断と補強方法」



▼wallstatダウンロードはこちらから▼
http://www.rish.kyoto-u.ac.jp/~nakagawa/




第1回 住宅の耐震性能をお客様にどうプレゼンするか?

第2回 壁量はどれくらい必要か?

第3回 接合部の重要性(その1)

第4回:接合部の重要性(その2)





 
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中川 貴文さん
京都大学生存圏研究所

2003年東京大学大学院修了後、民間企業を経て、2005年より国土交通省国土技術政策総合研究所及び建築研究所にて木造の耐震の研究に従事。2010年に「wallstat」の無償公開を開始。2018年より現職。2019年文部科学大臣表彰。博士(工学・農学)。

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