▼はじめに
2021年11月2日、富山県黒部市で、各専門分野の有識者が参加して座談会が開催されました。テーマは「パッシブタウン -省エネ・創エネのその先へ カーボンニュートラルなまちづくりへの挑戦- 」です。当記事は、その座談会の内容を一部切り取ってご紹介する記事となっております。
連載1本目となる記事では座談会全体について紹介させていただきました。そして、連載2本目以降の記事では「パネリストVoice」と題して、座談会にパネリストとして登壇いただいた有識者の方々のコメントを記事化してお届けします。今回は、山梨大学 特任教授、水素・燃料電池ナノ材料研究センター長の飯山明裕さんのコメントです。
※座談会のポイントをまとめた冊子(PDF)はページ最下部にて閲覧いただくことが可能です
▼再生可能エネルギーの利活用をP2Gの社会実装で拡大
飯山明裕さん(山梨大学特任教授、水素・燃料電池ナノ材料研究センター長)
Q&A
P2Gは現状普及しているとは言えませんが、住宅に導入する利点や留意点を教えてください
夏に貯めた電気を冬に使うために
気象条件によって変動する再生可能エネルギーでつくられた電力には、常に不安定さがともなうものです。もともと私は水素で駆動する安全な自動車の開発に取り組んできたのですが、今は山梨大学の研究センターで、地域の企業の方々と協力して、P2Gの社会実装に貢献できればと考え研究開発を進めております。P2Gとは、太陽光など再生可能エネルギーの電力を水素に変換し貯蔵する技術のことです。
ご存知のようにリチウムイオン蓄電池の場合、まだまだ自然放電が大きいため、1カ月も経つと蓄電量がかなり減ってしまいます。ましてや「太陽光発電に適した夏に貯めた電力を、積雪で発電が難しい冬に使う」ことを目指すのであれば、従来の蓄電システムのみでは著しくエネルギーを損失することになります。
その点、長期間かつ大規模な電力の貯蔵が可能な技術を導入することができれば、自家消費だけでなく周辺での利活用にも広げることができ、再生可能エネルギーの可能性が一気に広がることになるでしょう。
グリーンエネルギーの地産地消に期待
パッシブタウンで今回提案されているのは、太陽光発電による余剰電力から水素を製造する「水電解」、水素を貯蔵する「吸蔵合金」、冬に再度電気を取り出す「燃料電池」などの技術を活用したシステムです。水素を合金に吸蔵させて貯蔵する方法は、エネルギー損失をかなり低減させつつタンクの中で一年以上保存できます。また、圧縮ガスや液化ガスの状態で貯蔵するよりも体積をコンパクトにできる利点があります。
応答性の高さも大きな利点の一つで、負荷の高い電力を求めた場合にも、比較的スムーズに供給することが可能です。
一般的に、水素を活用する……というと、「引火しやすい」「爆発するのでは」など、安全性について懸念を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。しかしながら、気体である水素は、すでに生活インフラとして組み込まれているLPGや天然ガスなどと同様で、正しく使いさえすれば極めて安全です。そのことは、私たちがガスを日常的に問題なく利用できていることからも明らかです。加えて水素は軽いので空中に放散すれば危険を避けることができます。
さらに「吸蔵合金」は、安全性においても、他の水素を使ったインフラシステムに比べて大変優れた特性を持っています。もちろん、暮らしの中に組み込むとなれば、安全性を担保するための手立てを十全に尽くす必要はありますが、パッシブタウンにP2Gを実装することができれば、グリーンエネルギーの地産地消が可能になるのではと期待しています。
※当記事に添付した冊子PDFより抜粋
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