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2021/07/15 08:14 - No.1055


第35回 フィンランドのランドスケープ設計「保育園の庭」


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北欧住宅事情(フィンランドから)
大村 裕子

2021/07/15 08:14 - No.1055

 

フィンランド、ヘルシンキ在住の大村裕子です。フィンランドの建築について住宅を中心に、建築士の視点でレポートしていきます。

(前回の記事はこちら





◆オープンハウスヘルシンキとは

フィンランドの首都・ヘルシンキでは、毎年5月に「オープンハウスヘルシンキ」というイベントが開催されます。これは普段はなかなか見ることのできない場所が一般に公開されるイベントで、無料で見学することができます。また、その場所の専門家(設計者など)が案内をしてくれるので、現場の生の話を聞くことができるのも魅力の1つです。


「オープンハウス」はヘルシンキだけではなく、世界各地で行われています。以前、オーストリアで建築家が設計したマンションを見学したのですが、行列ができるほどでの盛況ぶりで、とても面白かったです。

例年は、住宅や新しい建築、伝統的な建築などの中を見学できるのですが、今年は(実際に見学できるのは)屋外のプロジェクトのみでした。

室内はビデオプログラムで公開されていました。今回、私はある保育園の庭を見学してきました。


◎2021年のフィンランド語のプログラムはこちらから
https://www.openhousehelsinki.fi/

◎英語の情報はこちらから (一部)
https://www.openhousehelsinki.fi/english/


自然をできる限り残す 

私が見学した保育園は、ヘルシンキのラウッタサーリに建てられました。ラウッタサーリは、ヘルシンキ中心部から地下鉄で15分ほどで都心に近いのですが、海が近く、自然豊かな場所です。元々この土地は森でした。2020年に完成、約250人の0歳から6歳の子供たちが通っています。

ランドスケープ設計を担当したマルヤ・ミッコラ(Marja Mikkola)さん、アイノ・カリラス(Aino Karilas)さんのお二人が案内してくれました。



「多くの岩と木があり、高低差の多い土地です。実際工事が始まって地面を掘って初めてわかることも多かったです。そのため設計を変更した部分もあります。建築で言えば、リノベーションの場合は解体して初めてわかることがあるのと似ています。できるだけ自然をそのまま残すことを第一に考えました(マルヤ・ミッコラさん、アイノ・カリラスさん)」


落ち着いた配色

保育園の外観は、外壁のレンガと天井の木が使われていて他は白で統一されていています。とても落ち着いた印象です。



こちらは玄関。天井には幅の狭い木が使われています。あたたかみがありながら、スッキリとした印象です。レンガには風合いがあって、新築らしくない味わいがあります。


フェンスは、白、グレー、黒の3色が使われています。安全面で必要な手すりでは目立つように白のフェンス、反対に木の近くは景観を損ねないように黒が使われています。植物が育つように、立ち入らないようにするフェンスには低いグレーのフェンスが使われています。



アートにお金をかける

ヘルシンキでは、公共建築を新築する時には、建設費用の約1%を "アートに使う" という原則があります。

上の画像でいうと、この石こそがアートです。よく見ると石に波のような模様が彫られています。他にもいくつかアートが彫られた石があり、園児たちは宝探しのように探して楽しめます。にっこりマークは思わず園児が書いてしまったのでしょうか。これもアートの一部かもしれませんね。ちなみに、室内にもアートがあるそうです。

ステージ

ここはいわば野外劇場です。ウッドデッキの観客席は、保育園で何か催しものがあったりする時に背の小さい子も見れるように、また見る側と見せる側の一体感が得られるような場所があればという思いから作られました。



一人になれる場所

庭の高台の隅のほうに、ベンチが1つだけありました。
「庭ではたくさんのアクティビティがあります。ここでは1人になれる時間を持つことができます。」
これは森で過ごす静かな時間を好むフィンランド人らしい発想です。



小さな子供たちにとっての大きな庭

庭は1階だけではなく、2階ともブリッジでつながっています。

このイベントの参加者の一人から、小さな子供たちから見るとスケール感が違って見えるのでしょうね、というコメントがありました。大人から見ても楽しそうな空間でしたが、子供から見るとより冒険心をくすぐられるような空間なのではと思います。

プロジェクトに関わった日本人スタッフ

ガイドの方によると、この保育園のランドスケープデザインには日本人の方も参加したそうです。

そしてアシスタントを務めた日本人スタッフ、S.Tさんに後日お話を聞くことができました。下記にS.Tさんのコメントをご紹介します。


「ラウッタサーリの保育園は、私が育児休暇に入る前に関わっていたプロジェクトです。建物自体が初期の頃よりも拡張され、全体的な園庭の構成はなんとなく残っているものの、私が携わっていた当初のものよりもだいぶん変更されています。とは言え、もとある自然、つまり既存の樹木、高低差、大きな岩、森のひっそりとした雰囲気などを活かしつつ、求められる機能にも答えると言う根本的な考えは変わっていない様に思います。」


「初期の計画段階で、現地調査に勤しんだのを覚えています。まだ何もない森の中で数時間高低差を身をもって把握したり、何処に小道になるような所があるのか、活かせる大きな岩、木々は何処に位置するか、何処からどのような景色、眺めが得られるかなど、調査をしたのを覚えています。育児休暇後、またこのプロジェクトに加わった頃にはほぼ工事終盤で、わずかながら現場段階での設計変更などに携わりました。」


「あの現場は岩盤が地表から近い所があり、遊具の設置や植栽を守る木製の柵の設置する際など一筋縄では行かない所がありました。もちろん測量など基本的な分析はされてるので、それを見越して計画しているのですが、地図や図面だけでは予想できない事もあります。まさに蓋を開けてみないとわからないと言う状況です。現場の方たちもよくやってくれたなと思います。敷地に岩盤が剥き出しになった斜面があると思うのですが、当初の考えが残されていれば、冬にはそり滑りができるはずです。フィンランドならの使い方ですね。」



元々あった森の雰囲気をできる限り残すため、様々な工夫がされているのが印象的でした。

また、小さな子供たちの目線に立ち、その子供たちがそれぞれの個性に合わせて、楽しむ場所を選べるように設計されていると感じました。


 
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大村 裕子さん
Leppänen Architects

フィンランド、ヘルシンキ在住。一級建築士。 1996年北海道大学工学部建築工学科卒業。スウェーデンハウス株式会社で16年設計に携わる。主に北海道、千葉、東京にて202邸の注文住宅、別荘、店舗等を設計。 その後スウェーデン、フィンランドにて設計事務所にて住宅を設計。フィンランドの北欧建築視察専門の旅行会社を経て、現在はフィンランドの設計事務所Leppänen Architectsに在籍。

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