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2018/01/20 15:22 - No.190


第9回 フィンランドお宅訪問「サステナブルハウス」


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北欧住宅事情(フィンランドから)
大村 裕子

2018/01/20 15:22 - No.190

 
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フィンランドのヘルシンキ在住の大村裕子です。

フィンランドの建築について住宅を中心に、建築士の視点でレポートしていきます。


写真:Karin Krokfors Architects



3つの意味でサステナブルな住宅

フィンランド、ヘルシンキに建てられた個人住宅をご紹介します。長く住み続けられるサステナブル、持続可能な住宅です。

設計した建築家カリン・クロスフォースさんの自邸でもあります。4家族がそれぞれ1階から3階を所有し、2家族分が1棟となり合計2棟建てられています。

このコンセプトに賛同した家族が、設計段階から意見を出し合い2011年に完成しました。


歴史を次の時代に受け継ぐ、サステナブルな外観

建設地は現在のヘルシンキ中心地から車で20分ほどの場所にあり、500年前にヘルシンキが始まった歴史地区です。歴史地区の為、その当時建てられていた家と同様の屋根形状や高さにする等制限がありました。

道路側の外観は3階建ての都市型ですが、プライベートの庭側は屋根と3階が一体化して平屋のように見えます。

外観のレンガは、昔ながらのハンドメイドで工業化製品より味わいがあり長持ちするそうです。

新築ですが、歴史を受け継ぐという意味でサステナブルです。



庭側外観 :写真:Karin Krokfors Architects


道路側外観 :写真:Karin Krokfors Architects


環境にやさしい、サステナブルな構造と設備

夏にはソーラーコレクターを利用して給湯に利用、また地中熱ヒートポンプを利用して給湯と床暖房に利用しています。壁にはハニカム構造のレンガを使用しています。

空気が断熱材となり健康的な材料です。設計者のカリンさんが、ハニカム構造の壁のサンプルを見せてくれました。



家族構成の変化に対応できる、サステナブルなプラン

そしてこの住宅の最も核となるサステナビリティは、連続した2棟が様々なパターンに分割できることです。

これにより家族構成の変化に対応して、長く住み続けられることができます。下が概念図です。


図面:Karin Krokfors Architects

図:左 将来の為に準備してある箇所です。黄色が階段で、将来壁で仕切り階段室にすることができます。水色は水回り用の給水があります。斜線は排水と開口の準備があります。

図:中央 住宅の分割パターンが14通り示されています。各棟3階建てで、2棟が連続しているので、全部で6ユニットあります。グレーは独立した空間ユニット、赤と青は複数の空間ユニットから構成される住宅です。例えば上段の一番左はすべてグレー、6つの独立した住宅です。また上段の一番右は、赤が3階建ての住宅、青が2,3階の住宅、グレーが1階の住宅です。

図:右 住宅分割パターンの一例です。aは独立した住宅、bワークスペース、cワークスペースの延長としてガレージを利用しています。

インテリアをご紹介します。


写真:Karin Krokfors Architects


「建物が長持ちすることはもちろん必要なことなのですが、家族構成の変化に対応できることがとても大事。」とカリンさんは言います。

実際に設計当初から6年を経て、すでに家族構成が変わってきました。子供が成人し、現在では2家族が1階を賃貸にしています。日本の高齢化社会への一つのヒントになりそうです。


次回は、見直される木造、CLT (直交集成板)高層住宅を紹介します。お楽しみに。





 
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大村 裕子
Leppänen Architects

フィンランド、ヘルシンキ在住。一級建築士。 1996年北海道大学工学部建築工学科卒業。スウェーデンハウス株式会社で16年設計に携わる。主に北海道、千葉、東京にて202邸の注文住宅、別荘、店舗等を設計。 その後スウェーデン、フィンランドにて設計事務所にて住宅を設計。フィンランドの北欧建築視察専門の旅行会社を経て、現在はフィンランドの設計事務所Leppänen Architectsに在籍。

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