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2022/09/13 13:00 - No.1221


第15回 デザインを向上させるテクニック⑦


住宅デザイン・テクニック!~地域工務店が売れるための住宅デザイン
石川 新治

2022/09/13 13:00 - No.1221

 


住宅デザインを語ろうとするのは、とても難しいものです。その難題の住宅デザインについて、書いてみたいと思いました。できれば住宅の担い手である地域工務店の経営を観点にして住宅デザインを考え、工務店にもできるテクニックとしてまとめてみたいと思います。

連載15回目となる今回は、「デザインを向上させるテクニック⑦」というテーマをお送りします。

※前回記事はこちら(前回テーマ:デザインを向上させるテクニック⑥)


◆庭のデザイン・テクニック

住宅のデザイン・テクニックについて重ねて記してきました。前回は、住宅のデザインが、住宅そのものをデザインするだけでは達成できないことを書きました。

そのヒントを「高級住宅のイメージ」調査で確認すると、多くの人が家の高級感は住宅よりも、「門・玄関・庭」に強い印象を持っていることが分かりました。

少なくとも「高級」に見えることは、テリトリー内に生活している人にとって、一目を置く存在として記憶に残ることは間違いないでしょう。工務店が売れるための住宅デザインを獲得するためには、自社のテリトリー内に生活している人の目に留まるものでなければなりません。

その意味で、住宅のデザイン・テクニックを活かして設計するときに、「門・玄関・庭」のデザインを高めておくことは、書を完成させるときの最後の一画に匹敵します。
改めて住宅デザイン・テクニックに「庭のデザイン・テクニック」を加える必要があります。

このポイントは、おそらく洋の東西を問わず、根源的に人が感じていることだと思われます。
建物に様式があるように、庭園のつくり方にも様式があります。日本はもちろん、欧米でもより理想となる庭の在り方が求められてきた証でもあります。

日本では特に顕著で、中世では勝手に「門」や「玄関」を作ることもできません。「門」や「玄関」を構えることに許可を要し、格式が定められていたことを前回も書いてきました。

あるいは「門」や「玄関」を構えなくても、「茶室」ではその境地が究極に高められています。


◆「茶室」と「テーマパーク」

奥深い「作庭」のことをここで書こうと思っても、こんなにわずかな文字数の中で語れるはずもありません。誰でもができそうなデザイン・テクニックとして記せば、ずっと下世話な手練手管となってしまいますが、とりあえずここでの目的は十分に果たせると思います。

「茶室」が生まれた当時、書院造の格式を高めた建築は、当時の都の先導的な建築であったはずです。それに比べて「茶室」の造りは、都の格式から脱却して、いわば野趣味の仮設建築物のようです。様式名にも残されているように、数寄者が好んで建てたものです。

400年も経つと、私たちの感性はすっかり逆転して、書院造りの正式な座敷は田舎風の家に見え、茶室はモダンデザインに通じる都会的なセンスに見えます。面白いことです。

「茶室」は茶の湯を体現するための場所であり、草庵ともなれば、小間が流行り瀟洒な小建築があれば足りると考えます。しかし、客人をもてなす作法の場としては、茶室を建てただけでは足りません。

待合で顔見世をしてから露地を歩き、雪隠の場所を確認して、躙り口から潜り込みます。
そうです、庭を含めたアプローチという長い玄関の機能があって初めて「茶室」は成り立ちます。『我が仏 隣の宝 婿舅 天下の軍 人の善し悪し』という世俗を捨てて、小宇宙ともいわれる深遠な世界に入るには、これだけの装置が必要なのです。

これとまったく同じ構図が、現代にもあります。人気のあるテーマパークがそうです。
数々のアトラクションも、ほんの数分の乗り物だと考えれば、多少のスリル感の違いだけで良し悪しを評価することになってしまいます。何度も何度も繰り返してテーマパークに通うのは、乗り物だけの魅力ではない高揚感を感じているからです。
そしてそのための演出が仕組まれています。

 
行列に並んで待っているその間にも、ストーリーの背景やキャラクターの個性を味わうための仕掛があり、中には“隠れキャラクター”もあります。そこで初めて会った前後の見知らぬ人と、時には会話をして楽しんでいる姿を見かけることも少なくありません。必然的に、通う度に違う経験を楽しむことになります。そうです、単なる乗り物よりも、このアプローチにこそ、何度も通う「テーマパーク」の価値があるのです。

奇しくも「茶室」と「テーマパーク」には、似たようなアプローチの妙が仕込まれていて

 
石川 新治
一社)住まい文化研究会

明治大学工学部建築学科卒業。1981年ミサワホーム株式会社に入社。技術部設計から販社営業を経て、宣伝部マネージャーとして企画広報活動全般を経験。2007年、MISAWAinternational株式会社にて200年住宅「HABITA」を展開する。住宅の工法、技術、営業、マーケティング、商品化、デザイン、広報、住まい文化など、全般に精通。現在、一般社団法人住まい文化研究会代表理事として、機関紙「おうちのはなし」を発行し、全国の地域工務店の活動を支援している。主な著作に、「おうちのはなし」(経済界)、「地震に強い家づくりの教科書」(ダイアプレス)がある。

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