(前回記事はこちら)
北海道で300軒を超える性能向上リノベーションの実績があるアルティザン建築工房 新谷社長に「最初にこの製品のことを聞いた時は、スケルトンにして、プランを調整して耐力壁をつくればいいと思ってたから、いらないんじゃないかなぁ、なんて思っていたんです。でも実際に使ってみて、このくらいの金額で大きく開口部が取れるならと、目から鱗が落ちました」と言わしめた、このプロダクト。
今回は、耐震フレーム+窓「フレームⅡ」の活用方法と施工方法をご紹介します。
フレームⅡの活用方法:
YKK APが窓ではなく、「耐震性能」にフォーカスしている。
これには読者のみなさんも驚かれるかもしれません。わたしも最初は不思議に思いました。しかし、よく考えてみれば、地域差はありますが、断熱性能の向上によって、窓からの熱損失よりも日射による熱の取得量が向上しているケースが増えています。
パッシブデザインを採用し、南面の開口部を大きくすることで日射取得量を増やし、電気やガスなどのエネルギーの利用を最小限にできます。
その際に、課題となっていた「耐震性能」を解決するのが「フレームⅡ」であり、とてもYKK APと耐震性能は理に適っている組み合わせなのです。
新谷社長の言葉にもあるように、これまでは、断熱性能と耐震性能の両立は、耐力壁をつくるなど、プランに大きく制限をかけていました。
しかし、「フレームⅡ」は、プランの自由度を担保します。
フレームⅡの施工方法:
中断面集成材を用いた耐震フレームは2種類あります。
BOX型フレームを土台上に設置する「フレームⅡBOX型」と、門型フレームを柱脚金物とあと施工アンカーで基礎に固定する「フレームⅡ門型」です。
いずれもフレームの両端には柱を設けることが必須。鉛直力を負担せず、水平力のみを負担する耐力壁となります。
「フレームⅡ門型」は基礎が必要になるので、使用箇所が1階に限られます。
さて、ここからは施工過程を、順を追って写真とともに紹介します。
フレームⅡはこのようにL字の状態で納品される
この緑色のテープのようなものは、アラミド繊維シート。
フレームの強度の要となるコーナー部で、引張強度を高める。
米国デュポン社によって開発された特殊繊維で、鋼板の約5倍の引張強度がある。
アラミド繊維シートが初期剛性(地震による変形初期の強さ)を発揮し、
門型フレームはさらに引張ボルトが入っているので、「ねばり」を発揮し、繰り返しの地震に耐えることができる
まず、既存のサッシを取り、フレームを取付ける柱と梁、土台を完全に露出させる。
構造材の垂直・水平を確認し、精度に問題がある場合は建て入れ直しを行い、
各構造材の傷みは、適切な補修・補強する。
「フレームⅡBOX型」の場合、土台や柱にフレームを固定するため腐朽などがあれば確実に補修する。
「木質耐震フレーム門型」は基礎の状態を確認し、無筋基礎など基礎の強度が基準に満たない場合は補強する
◎フレームⅡ門型の場合
基礎にあと施工アンカーで固定するため、穴を開ける
あと施工アンカー設置
足元を横から見た様子。
「フレームⅡ門型」の柱脚金物をあと施工アンカーで固定する
◎門型、BOX型 共通
土台柱梁にコーチスクリューボルトで固定する
コーチスクリューボルト
フレームⅡBOX型は、L字型部材で4分割になって現場に搬入し、
中間接合金物と接合ピン(φ12)で繋ぐ。
門型の場合はL字型部材で2分割になって搬入される
門型、BOX型 共通。
樹脂窓と断熱材を施工する
以上、フレームⅡの詳細と施工方法をご紹介しました。
施工性の高さや、プランの自由度とコストパフォーマンス(10〜20数万円程度)の良さ、ぜひ、みなさんの現場でもお試しください。
次回は、Ua値0.18W/㎡・K、C値0.6c㎡/㎡と、驚異的な数値を実現するための断熱・気密の概要をご紹介します。
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