マーケティングは「お客様の好みや世の中の動向を調査し、お客様が求める商品・サービスを作り、その商品・サービスを求めているお客様に効率良く伝え、喜ばれながら買ってもらう」という企業にとっては欠かせない活動です。
しかし、人・物・金に余裕がない中小企業にとって効果的なマーケティング活動を行うのはかなりハードルが高いのではないでしょうか。
そこで「簡単マーケティング」という文字通り、高額なリサーチ代や多くの人員を割かなくても、たった1つの質問をするだけで効果を出せるマーケティング手法を紹介します。
まずは簡単マーケティングの1つ、「たった1つの質問」で業績アップした事例を紹介していきましょう。
■『たった1つの質問」で業績が2倍に!
家族経営の小さな印刷屋さんの話です。この印刷屋さんは会社やお店で使う名刺やチラシ、ポスターや封筒、年賀はがきなど少量の印刷物を主に取り扱っていました。
ところが近年、ネットで印刷物を受注するネット印刷会社の参入によって価格競争に巻き込まれ、金額を下げて抵抗していましたがなかなか勝てず売上はどんどん下がっていきました。
今後も更なる価格競争が予想される業界で、自分の所のような小さな印刷屋さんが生き残るにはどうすればいいかわからず切羽詰まった状況の中、私の所にコンサルティングを受けに来られました。
色々話を聴いてみると、価格しかアピールしておらず、この印刷屋さんの良さがアピールされていないことがわかりました。
そこで今も仕事をくれているお客様に、簡単マーケティングの「たった1つの質問」、
「他にも似たような印刷会社があったにもかかわらず、何が決め手となって当社を選んでくれたんですか?」
を聞くように伝えました。
すると、返ってきた答えは、
「訪問してくれるので納得がいくまで打ち合わせが出来る」
「わからないことがあれば、直接来てくれる」
「印刷物が完成したらすぐに持ってきてくれる」
など全く予想していないものばかりでした。
お客様から選ばれているのは、「価格が安いこと」と思っていたのに、実は「訪問してくれる」だったのです。
「名刺印刷」をインターネットで検索すると、低価格で印刷してくれるサイトがたくさん出てきます。しかし調べてみると低価格印刷してくれるところは、必要な素材データを全てお客様が自分で用意しなければならなかったり、既成のテンプレートから選ばないといけなかったりと様々なデメリットがあることがわかりました。
価格重視のお客様はそれで満足するかも知れませんが、名刺1枚といえど、紙質やフォント、デザインにこだわりたいというお客様もいます。
そのようなお客様には、直接会ってしっかりと打ち合わせできる「訪問してくれる」が強みになっていたのです。
そこで、お客様から教えてもらった強みを前面に打ち出すために、社名の前に「訪問専門の印刷屋」とキャッチコピーを付けました。
また強みを生かすために受注先も近隣エリアに限定して展開しました。
するとあれよあれよという間に仕事の依頼が増え、1年で業績は前年の2倍になったのです。
■『たった1つの質問」で契約が3倍に!
もう一つ事例を紹介しましょう。
あるファイナンシャルプランナーの話です。彼は保険の募集業務も行っており、「お客様に納得して加入してもらう」をモットーに、初回面談の時には保険内容を丁寧に説明しています。
ところが、近年保険のパンフレットに沿って、保険内容を一から十までていねいに説明すればするほど、お客様から敬遠されてしまい、なかなか成約が増えませんでした。
何がいけないのか分からず深く思い悩み、私の所にコンサルティングを受けに来られました。
そこで今まで契約してくれたお客様に、簡単マーケティングの「たった1つの質問」、
「他にも似たような保険の営業マンがいたにもかかわらず、何が決め手となって私と契約してくれたんですか?」
と聞くように伝えました。
すると返ってきた答えは
「自分の話をしっかり聴いてくれた」
と全く予想していないものでした。
その決め手に彼が衝撃を受けたのは言うまでもありません。なぜなら業界では、保険の知識の豊富さが獲得数に比例するという常識があり、彼もその常識にとらわれてしまいっていたのです。
「もっと保険の情報をお客様に提供しないと。いろいろな商品があることをアピールしないと」経験年数と共に説明量が増えていったのです。
しかしお客様が期待していたことは「話を聴いて欲しい」「悩みを聴いて欲しい」ということで、保険の知識を披露することは二の次でよかったのです。
それから彼は、徹底的に聴き役に回りました。
そうした姿勢が人気となり、「話やすい、相談しやすい」と次第に口コミで広がっていきました。
また自分の強みが「話しやすい、相談しやすい」とわかったのでホームページやブログでも「話しやすさ」「相談しやすさ」をわかってもらう事に集中。保険に関する内容は一切載せず、趣味や食べ物、家族旅行の話などプライベートな部分をどんどん出していきました。
その結果、相談件数は一気に増え、前年と比べると3倍もの契約を上げる事に成功したのです。
このように、強みをというのは自分で見つけだすのは極めて難しく、お客様に聴いて初めてわかるものなのです。
■「改善点探し」では価格競争に巻き込まれる
業績が悪化してくると、よく行われるのが「ご意見・ご要望をお聞かせ下さい」といったことを聴く「改善点探し」です。ところが、この改善点探しが業績の回復につながることはなかなかありません。
なぜなら改善点を聴いて修正するには、人数を増やさないといけない、設備投資をしなければならないなど多大なコストをかけなければいけないことが多く、結局出来ないからです。
その上、現状に対しての否定につながりかねず、従業員の士気が下がってしまいます。このように改善点探しは、業績悪化の際にはあまり効果的な方法ではないのです。
逆に、既に購入してくれたお客様に「決め手」を聴く事は、改善点を直す事とは違ってコストがかからない上に、本当の強みを知る事ができ、従業員の自信にもつながります。
つまり一石三鳥なのです。
【出典】※その他の成功事例をお知りになりたい方はこちらをご覧下さい。
『お客様に聞くだけで「売れない」が「売れる」たった1つの質問』
岡本達彦著(ダイヤモンド社)
簡単マーケティング