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2019/10/25 08:37 - No.603


第1回 住宅設計者が住宅撮影を手がけることが大事。


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インスタ・テクニック!
石川 新治

2019/10/25 08:37 - No.603

 
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ビジュアルの時代?

「インスタ映え」と「ユーチューバー」という言葉を聞くにつけ、世の中はすっかりビジュアルの時代になりました。

そんなことは、わかりきっていることだと聞こえてきそうです。

工務店にしてみれば、どれだけ良い写真を使えるかという勝負であり、自分で撮れなければ、プロに頼めば良い。それだけのことかもしれません。

でも、本当はもっと深刻なビジュアル時代を迎えようとしているのです。
その危機感を、最初に考えてみましょう。


それはすでに「AI時代の工務店」でも書きましたが、最初の敵は消費者ではなくAIが敵になるのです。

人がウェブ上の情報を見るのは限りがありますが、AIは日常的に世界中のサイトを見て回っています。だからこそ、私たちが情報を欲しいと思った時に、「ここにありますよ」と答えてくれるのです。

その対象がテキストデータだけではないことは、画像検索が行われていることを見れば明白です。どこのサイトの管理者が、どのようなビジュアルを使っているのかをAIは把握しているのです。

それだけではなく、これらのビジュアルに対する訪問者の反応を、ビッグデータとして掌握しています。それはつまり、ビジュアルの良し悪しも判断しているということになります。

そんなビジュアルの時代に、工務店としてどのような対応をしておいたら良いのでしょうか?


自社のビジュアル?

もっとも単純なビジュアルの命題は、自社の写真であるか否かです。

単純な例は、フランチャイズとの関係で考えられます。

特に住宅の商品があって、その住宅を扱っているのであれば同じビジュアルを使うこともあるはずです。さすがに本部がコストをかけて撮ったビジュアルは、でき映えも良く、ウェブのデザインも良くなったと思ってしまいます。

またFC本部も、ブランドイメージを統一するために、同じビジュアルを使うように指導していることもあるかもしれません。

でも、AIの目から見たらどうでしょうか。「ああ、この工務店は、あそこの本部が使っている写真を流用して掲載している会社だな。他にも、いろいろな会社が使っているビジュアルを流用している会社だな。」と見えます。

それだけに、信頼のできる工務店だという判断もあるでしょう。反面、それが重なれば、他人の情報だけを使う工務店だという判断もあります。

その上、「共有のビジュアルは質が高いのに、そうでないビジュアルは一気に質が落ちるな。これが、この工務店の実力らしい。」

そんな評価を受けかねないのです。

それはテキストデータでも同じことがいえます。「自然素材で・・・」「高性能の・・・」「快適な・・・」という言葉を並べても、それはどこの工務店でも似たようなことを書いています。

自分の感性で語り、自分の感性でビジュアルを作ることが大事なのです。

 


技術の進歩?

ところで、私たちはどれだけ技術の進歩の恩恵を受けているでしょうか。

家をつくるのだって、昔なら手きざみで加工していた木材も、今やプレカットで組み立てるだけになっています。手きざみで建てられている家は、全体の1割以下です。それは技術の進歩でもありますが、反面、大工の技術や人材の退化でもあります。しかし、質の向上を鑑みれば、それは憂うことでもないはずです。

それは建物だけのことではなく、ビジュアルでも起きています。
つまり、カメラも世界も技術革新が連なり、カメラマンの技術は今やすっかり、カメラに組込まれています。それも、住宅とは違い、デジタル化という要素が入って、さらに劇的です。


たとえば、昔のフィルムの撮影ならば、手前と深部の露出を測り、レンズ特性とフィルターを駆使して、フィルムの性能を使い分けて一発勝負で撮影します。その出来はリアルタイムで確認できないので、多段階に露出を変えてバリエーションの撮影をしておきます。もちろんフィルムも高いので、無駄な撮影をするとコストもかかります。

このような複雑な作業をこなすのは、プロのカメラマンでなければできないことです。チョン切りの露出時間調整など、積み重ねた経験無くしてはできません。

しかし、カメラはデジタルになり、これらのことの多くはカメラが自動でやってくれます。その上、デジタル化されたビジュアルは、リアルタイムに確認ができ、保存にコストもかからず、後からの加工もできます。

この構図は、まさに住宅がプレカット化されたことと同じで、腕利きの技能が無くても、質の高いビジュアルが可能になったということです。

プロの機材を持っているのがプロのカメラマンとですが、その機材が一般的に購入できる、あるいはごく普通の機材でも達成できるようになったのです。


広角レンズ?

大型建築ではなく狭い住宅を撮影しようと思えば、誰でも思うのは「機材として広角レンズがあれば、、、」ということです。そして確かに、プロのカメラマンは間違いなく広角レンズを持っています。

でも、昨今発売された、iPhone11proやその他のスマホでも超広角が売り物になっています。それは数十万円もする高いレンズに比べたら、画質に違いがあるのも当然ですが、広角は誰でもが持てる時代です。

さらに最終的に使用する用途は、特大なポスターを作ろうとしているわけでもなく、たとえば自社のホームページに使うのであれば、結局、ビジュアルの解像度を下げて使うことになります。要は、プロの機材の画質は要らないのです。

その上で、撮影する建物は一緒です。

スマホに超広角レンズが搭載され、そんな広角レンズで撮ると、自分がこれまで撮ってきた写真と比べて違っているように見えます。でもそれは、あまり大したことではありません。

 

むしろ状況は逆で、広角レンズに頼るばかりのビジュアルが氾濫しているようにも思えます。本当にレンズを使いこなすプロのカメラマンであったなら、歪みが出やすい広角レンズは少しでも使いたくないと考えるはずです。

逆に、広角レンズ1本で勝負しているのは、プロのカメラマンではありません。

広角レンズ以上に、もっともっと大切な住宅撮影のポイントがあるのです。


何のプロ?

その住宅撮影ポイントがわかれば、たとえプロのカメラマンに頼んでも、どのビジュアルが手を抜いて撮っているのかどうかが分かるようになります。

結局、カメラの機材に差が無くなれば、残されているのはビジュアルとしての構図の巧さです。

経験としてたくさんの写真を撮ることは、それだけで良い構図を探し出す巧さを身につけているのは確かなことでしょう。その意味では、撮影を生業とするプロのカメラマンには敵わないかと思います。

しかし一方で、構図とは、いわば建築パースのようなものです。それぞれの設計には、本来デザインへの意図もあって、頭の中でパースを描いて検討してきたはずです。そして、インテリアコーディネートの知識も欠かせません。


なによりも、住宅のデザインが悪ければ、誰が撮っても良いビジュアルにはなりません。プロのカメラマンに任せれば良いものでもありません。

それどころか、より良い住宅のビジュアルを撮影するには、カメラマンにも建築やインテリアとしてのプロのセンスが必要です。プロのカメラ機材を持っているというカメラマンに、任せただけではダメなのです。

このような意味で、私は住宅設計者が、住宅撮影を手がけることが大事だと思っています。これから何回かに分けて、その基本を書いて行ければと思います。

プロのカメラマンではないので、デジカメにできることはデジカメに任せればすむことです。ですから、本当に基本的なカメラの技術だけを整理しておきます。

その上で、どのような建築的なテクニックがあるかを記そうと思います。

少しでも興味のある方は、次号からをお楽しみください。









 
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石川 新治
一社)住まい文化研究会

明治大学工学部建築学科卒業。1981年ミサワホーム株式会社に入社。技術部設計から販社営業を経て、宣伝部マネージャーとして企画広報活動全般を経験。2007年、MISAWAinternational株式会社にて200年住宅「HABITA」を展開する。住宅の工法、技術、営業、マーケティング、商品化、デザイン、広報、住まい文化など、全般に精通。現在、一般社団法人住まい文化研究会代表理事として、機関紙「おうちのはなし」を発行し、全国の地域工務店の活動を支援している。主な著作に、「おうちのはなし」(経済界)、「地震に強い家づくりの教科書」(ダイアプレス)がある。

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