断熱改修は窓から考える
部分断熱を考える場合、どの範囲を、どのくらいの仕様で、どうやって施工するかが問題になる。
断熱改修に限った話ではないが、リフォームにおいては「どうやって施工するか」の部分が非常に重要になる。
前回、述べたように断熱改修はリフォーム案件における優先順位の第一位にくることは少ないので、そこにかけられる予算も限られてくる。そのため、なるべく既存の建物を壊さずに行える改修方法が望まれる。
ただし、現実はなかなか難しい。壁や屋根といった断熱部位は、仕上げ材やその下地材の内側が断熱層になっているため、断熱層を改修するには解体を伴うことになる。
天井や床下は、狭いながら空間があるため、非破壊ないし軽微な解体で、その空間に入り込み、施工することは可能だが、狭くて作業しづらい。特に床下に潜り込んで完璧な施工をすることは難しい。可能であれば、天井や床を解体して施工することが望まれる。
このように、床や壁、天井の断熱改修には何らかの解体が発生するケースが多く、工事範囲も広がるので、建て主が住みながら改修工事を行うことが難しくなってくる。もちろん、工事費も嵩んでくる。
唯一の例外が窓だ。窓は多くの部分が露出しているため、周りを壊さずに断熱改修をすることが可能だ。そして、少し前に建てられた住宅においては、窓は断熱の大きな弱点でもあり、冬場の熱損失の約半分は窓からになる。窓を強化するとそれだけで断熱性能は強化され、光熱費が下がり、快適性も増す。
内窓による断熱改修の事例。夜間の冷え込みが大幅に緩和されたと住まい手は喜んでいた。
YKK APの「かんたんマドリモ」。これまで手間と費用が掛かった窓の交換を簡略化した新しいカバー工法
部分断熱は窓から考えるというのがセオリーになる。いわゆる内窓や「かんたんマドリモ」などのカバー工法など、メニューも豊富だ。
気流止めの重要性
次に考えるのが、気流止めだ。木造の壁は間仕切りを含めて床下から小屋裏までつながっている。この間を冷たい空気が流れると、いくら断熱材を詰めても効果はない。そうした状態を防ぐために、床下や天井裏から壁の上下を塞ぐ。これを気流止めと言う。 気流止めを行わない断熱改修は絵に描いた餅と言える。気流止めを行うことで、既存の断熱材の効果も高まるので、一石二鳥だ。
天井裏から壁の隙間に気流止めを挿入したところ(資料:山善工務店)
現場に搬入した気流止め。かなりの数量が必要になる(資料:山善工務店)
気流止めは隙間が塞げればどんな方法でもよいが、圧縮グラスウールを用いるのが便利だ。圧縮グラスウールとは、高性能グラスウールを45リットルのゴミ袋に入れて掃除機で空気を吸いだしてぺちゃんこにして口を閉じたもの。隙間に突っ込んだ後、カッターで切れ目を入れると膨らんで復元し、隙間が塞がる。
断熱改修ゾーンにおけるすべての柱間の上下に入れていくので、圧縮グラスウールはかなりの数が必要になる。前日につくり置きしておき、当日は大工と手元の2人1組で作業できると効率がよい。
もう1つのポイントが階間の断熱と気密だ。階間とは天井裏に隠れている上階と下階の間の空間だ。部分断熱では断熱改修を行わないゾーンは外部と捉え、断熱を行うゾーンとは縁を切る必要があるが、それには階間の断熱・気密をしっかり行うことが不可欠だ。
この空間を塞がないと断熱改修の対象ゾーンと断熱改修を行わないゾーンがつながってしまい、部分断熱の効果は発揮されない。断熱材やポリエチレンフィルムなどでしっかり縁を切りたい。